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STING 『The Dream Of The Blue Turtles (Expanded Edition)』 A&M/ユニバーサル(1985)

 ポリスが活動休止するなかでリリースされた初のソロ・アルバム。もともと新進エレクトロニック・ユニットのトーチ・ソング(ウィリアム・オービットが在籍していた)と組んで制作を進めるも完成前に方針転換し、オマー・ハキム(ドラムス)、ケニー・カークランド(キーボード)、ダリル・ジョーンズ(ベース)、ブランフォード・マルサリス(サックス)ら気鋭のジャズ・ミュージシャンを起用したスタイリッシュな作品に仕上がった。妄執的な“Every Breath You Take”の内容を否定するような“If You Love Somebody Set Them Free”やメロディアスな“Fortress Around Your Heart”がヒット。トロピカルなレゲエ風味の“Love Is The Seventh Wave”やポリス“Shadows In The Rain”の再演といったバンド時代との接続も印象的だ。なお、冷戦時代に核への不安を歌って欧州でヒットした“Russians”は、2022年になってウクライナの人道/医療支援のために再録されている。

 今回の拡張版にはDisc-2〜3を跨いで16トラックがボーナス収録され、特に“If You Love Somebody Set Them Free”のリミックス10態は、85年当時のジェリービーンやウィリアム・オービット、94年のソウルショック&カーリン、95年のブラザーズ・イン・リズム、2019年のトム・ステファンという時代ごとの解釈がおもしろい。ヒュー・パジャムやコーネリアスによる別曲のリミックスも収録。

 

STING 『...Nothing Like The Sun (Expanded Edition)』 A&M/ユニバーサル(1987)

 ニール・ドーフスマンが共同プロデュースし、ポリス『Synchronicity』と同じモントセラトのAIRスタジオで録音された2作目で、ソロでは初の全英1位を記録。母親の死も影を落としつつ、爽快な冒頭曲“The Lazarus Heart”やレゲエとジャズを都会的に融合した代表曲“Englishman In New York”を筆頭に洗練味を深める一方、みずからギターを爪弾いた繊細な“Fragile”、チリの民族舞踊に影響を受けたプロテスト・ソング“They Dance Alone (Cueca Solo)”のように社会派な表情も目立つ。演奏陣にはケニー・カークランドとブランフォード・マルサリスに加えてマヌ・カッチェ(ドラムス)が加わり、クラプトンやマーク・ノップラー、ポリスのアンディ・サマーズ、ギル・エヴァンスもスポット参加。ブライアン・ローレン制作の全米ヒット“We’ll Be Together”が異色のブラコン仕立てなのは、もともと本人が出演する日本のCM用に書き下ろされたから……というのも時代を感じさせるか。

 こちらの拡張版はリリース35周年の2022年に配信されたもので、Disc-2にシングルB面曲や別ヴァージョン、後年のリミックスなど14曲がボーナス収録されている。

 

STING 『The Soul Cages (Expanded Edition)』 A&M/ユニバーサル(1991)

 ポリス後期を支えたヒュー・パジャムを共同プロデューサーに迎え、引き続き全英1位を記録したソロ3枚目の名盤。父親の死に伴う喪失感や苦悩に向き合った表現は全体的にパーソナルなもので、暗い歌詞に反して明るい曲調の“All This Time”が全米7位まで上昇するヒットになった。演奏にはケニー・カークランド、ブランフォード・マルサリス、マヌ・カッチェが続投しつつ元Eストリート・バンドのデヴィッド・サンシャス(キーボード)が参加し、さらには3.0に至るまでの盟友ドミニク・ミラー(ギター)がここで初登場するのも重要だろう。シンプルな作りながらもソロ・キャリアにおける最重要作と目されることが多く、ストレートなロックの表題曲がグラミーの〈最優秀ロック・ソング〉部門を受賞。また、本作のテーマは故郷を舞台にしたミュージカル「The Last Ship」(2014年)として実を結んでもいる。

 リリース30周年の2021年に配信されたこのエクスパンデッド・エディションでは、Disc-2にボーナス・トラック13曲が満載。アルバム未収のB面曲やリミックス、ライヴ音源に加えてスペイン語&イタリア語ヴァージョンも並ぶのはこの時期ならでは。

 

STING 『Ten Summoner’s Tales (Expanded Edition) 』 A&M/ユニバーサル(1993)

 両親の死を投影した過去2作のムードから揺り戻し、明るく前向きな雰囲気で普遍的なテーマを歌った側面が目立つ4作目。引き続きヒュー・パジャムが共同プロデュースにあたり、音楽的にもエリザベス朝時代に建てられた英ウィルトシャー州のレイクハウスで録音されている。演奏陣はドミニク・ミラーとデヴィッド・サンシャスに加えて、初参加のヴィニー・カリウタ(ドラムス)が活躍。翌年のグラミーを受賞する代表的なヒット“If I Ever Lose My Faith In You”をはじめ、穏やかで英国的なバラード“Fields Of Gold”、5拍子のリズムが快い“Seven Days”など、多様なスタイルの親しみやすい楽曲が並ぶ。なかでもドミニクと共作した“Shape Of My Heart”は映画「レオン」で使われ、以降もナズからクレイグ・デヴィッド、ジュース・ワールドまで後年のサンプリングを通じて何度となく脚光を浴びている大名曲だ。

 30周年を祝して2023年に配信されたこの拡張版ではDisc-2に15曲をボーナス収録。“If I Ever Lose My Faith In You”のハウス・リミックスも楽しいが、ビル・ウィザーズ“Ain’t No Sunshine”のジャジーなカヴァーを含む91〜93年のライヴ音源が聴きものだ。

 

STING 『Brand New Day (Expanded Edition)』 A&M/ユニバーサル(1999)

 アダルト・コンテンポラリー路線の『Mercury Falling』(96年)を間に挿んで登場した通算6作目にして20世紀最後のアルバム。初めて共同プロデューサーに起用したキッパーことマーク・エルドリッジのプログラミング主体でモダンな質感のサウンドを聴かせ、カントリーからエレクトロニカまでこれまで以上に多様なアレンジが野心的に展開されている。瞑想的なアンビエント調の“A Thousand Years”で幕を開け、スティーヴィー・ワンダーのハーモニカを配した明るいビートと開放的な歌い口で昂揚していくタイトル曲、アルジェリアのシェブ・マミを迎えた斬新なアラビック・ポップの“Desert Rose”などがヒット。批評的にも商業的にも復権して、アルバムと表題曲がグラミーのポップ部門に輝いている。

 リリース25周年の2024年に配信されたこの拡張エディションは、Disc-2〜3に23曲ものボートラが満載。ワールド・ビート的な作品の傾向的にも多彩なリミックスが映え、ヴィクター・カルデローンやティン・ティン・アウト、ニティン・ソーニー、ビル・ラズウェルらの手腕が楽しめる。m-floのLISAがラップする“Perfect Love...Gone Wrong”も収録!