
最後まで没入してしまう、すごい力がこの映像にはある
――その密度の濃い3年間を振り返って、いま思うことは?
「とにかく楽曲が素晴らしかったな、と。独特な詞の世界観があれば、それとまったく逆の世界観を提示することだってある。ホント天才が出てきちゃった、という感じでした。
だから、ライブは普通のアーティストのように起承転結のあるステージを作っていくのが正しいのかどうか、つねにクエスチョンだったんです。あまりに一曲ごとのインパクトが強すぎたがゆえに。曲それぞれでひとつひとつ個性が成り立っているから、曲ごとにMCを入れてもいいし、逆にまったく喋らないという手段だって取れるんです。通常のライブのパターンに当てはめることができないんですね。
照明にしても、赤、青、生の3色だけで成立してしまいますし。〈あとはあなたが好きに歌って〉と送り出すだけ。そうすることで歌の世界観がより伝わったはずなんです」
――つねに引き算することを心がけたと。
「まったくもって引き算ですね。極端な話、何もいらないんじゃないか?と思います。つまり、(演出が)いらないように見せるために何かを仕込もう、という逆の発想になるといいますか。いちばん難しいやり方ですよね。〈そういえば照明って点いてたっけ? まぁちゃんとステージが見えていたからたぶん点いてたんじゃない?〉と観客に思わせることができたらそれでいいんです」
――彼女がそこにいるだけで成立する世界をめざしたわけですね。
「存在感だけで空間すべてを満たすことができてしまう唯一の人だと思います。あと不可欠なのがコーラですよ(笑)。あの普段とのギャップが、もうね……」
――20数年ぶりに改めてライブ映像に触れて、客観的に感じたことなどがあれば教えてください。
「もう最後まで入り込んでしまいましたよ。中途半端な気持ちで接していたら、観てられないかもしれません。当事者であるはずの自分が客観的になれてすんなり没入できた、そんなすごい力がこの映像にはあります。
そしてその力は今回この映像に初めて触れる人も同様に得られるものだと思んですね。〈これ誰?〉って感じでライブを観始めたとしても、曲が進むにつれてどんどんのめり込んでいってしまうはずです。そんなアーティストってもはやいないですもん」
――今回のBlu-rayには初々しいTSUTAYAのインストアライブから、神々しいまでの武道館ライブまで初期の鬼束さんの変遷が克明に記録されていて、とにかく観ごたえがハンパないです。
「最初の頃、〈すっごい曲だよコレ〉なんて言ってたら、あれよあれよという間に売れて、〈じゃあどこまでどうやる?〉という意識がこちらにもどんどん芽生え始めてきました。
23年前に25年前でしょ? いまのような最新鋭の機材なんて当然ないし、LEDが世の中にちょこっと出てきたぐらいの時代だから。それも非常に高額だったわけじゃないですか。
また、現在のようにデビューしたてのアーティストがドーム公演をやっちゃうとか、そういうこととも違う。そんなふうに聴かせたいタイプの音楽でもないじゃないですか? となると、ツアーの規模とかのラインが見えるわけです。……そうか、“月光”が収録されているデビューアルバムの『インソムニア』って150万枚以上も売れたのか。いまだったらアリーナツアーができちゃいますよ。でも300人クラスのライブハウスとかにも行きました。どうしてそうしたかというと、何もかもが初めてだったから。彼女には〈ゼロからちゃんと教えなきゃ〉というところがあった気がします。〈ファーストツアーだからどうする? いきなりデカいところに行くんじゃなくて、ちっちゃいところでやったら?〉と訊いたら、〈うん〉って言うんで、そういう組み方をしたんです」
誰もやらないことをやろう。鬼束だったらできる
――しかしいまの目で観ても、かなり攻めた内容のライブだと思います。
「あんなこと誰もやらないですよ。〈誰もやらないことをやろう〉というところから始まっていますから。〈こんなことやれないでしょ? でも鬼束だったらできるんじゃない?〉という。土屋さんも羽毛田さんもみんながそういう方向を見ていたんです。
ただ『インソムニア』ツアーのときはまだ何もわからなかったから、〈とりあえずオーソドックスにバンドスタイルでどういう風にやれるか考えよう〉と言った気がします」
――2本を観比べて思うことは?
「〈インソムニア〉の鬼束はすごくライブをハッピーに楽しんでいますね。そこから武道館に向けての道中で彼女はいったいどれだけの闇を潜ってきたんだ?と思えてなりません。そういうのがものすごく浮かび上がっていて、歌に途轍もない説得力を与えています。
と言いつつも、鬼束の気持ち的には実を言うと何も変わっていないまんまどちらのステージにも立っていたんじゃないか?とも思うんです。ただサイズの異なる舞台でただ歌っているだけ、という感じがしちゃうといいますか。そこが鬼束の底知れぬ部分というか、彼女の奥の部分は誰一人として覗きにいくことが許されないんだなと思います」
――そんな違いと変わらない部分を、本作を受け取った皆さんにもぜひ見つけてほしいですね。本日はありがとうございました。
RELEASE INFORMATION

リリース日:2025年8月27日(水)
■完全生産限定盤(3 Blu-ray+2 SHM-CD)

品番:UPXY-9042
価格:22,000円(税抜)
【CRADLE ON MY NOISE L*I*V*E ~LIVE INSOMNIA VIDEO EDITION~ + 5 TRACKS】
2001年11月7日にVHS & DVDで発売された商品を初のBlu-ray化。本作は、2001年8月16日に横浜アリーナにて行われた〈PIA Music Foundation SPECIAL〉での“月光”のライブ映像と、4月28日にSHIBUYA-AXにて行われた〈CHIHIRO ONITSUKA LIVE TOUR 2001〉ファイナル公演の模様の一部を収録している。各所には本人のインタビュー映像も挿入されている映像商品。ツアーファイナル公演より当時は未収録だった“Ash on this road”、“BACK DOOR”、“Tiger in myLove”、“We can go”、“眩暈”を新たに収録した全15曲。
TRACKLIST
Disc 1
1. 月光
2. Ash on this road(未発表)
3.イノセンス
4. BACK DOOR(未発表)
5. edge
6. call
7. シャイン(album ver.)
8. Tiger in my Love(未発表)
9. 螺旋
10. Arrow of Pain
11. Try to cry
12. We can go(未発表)
13. Cage
14. 眩暈(未発表)
15. 月光(album ver.)
【ULTIMATE CRASH ’02 LIVE AT BUDOKAN】-Complete Edition-
2003年5月21日にDVD規格のみで発売された商品に、ライブで演奏されたが、当時は未収録だったジョーン・オズボーンのカバー“One of Us”を追加収録し、伝説の武道館ライブが完全盤として初のBlu-ray化。本作は、2002年11月2日に日本武道館にて行われた〈CHIHIRO ONITSUKA ULTIMATECRASH ’02〉の模様を収録している。
TRACKLIST
Disc 2
1. Introduction
2. NOT YOUR GOD
3. Cage
4. infection
5. 漂流の羽根
6. One of Us(未発表)
7. 眩暈
8. Interlude
9. Tiger in my Love
10. イノセンス
11. edge
12. シャイン
13. BORDERLINE
14. 守ってあげたい
15. 声
16. King of Solitude
17. 月光
18. Castle・imitation
19. BORDERLINE(スタジオライブVer.)
【ME AND MY DEVIL & PRINCESS BELIEVER +】-Music Video Collection-
2001年4月11日にVHS & DVDで発売されたミュージックビデオクリップ集「ME AND MY DEVIL」と2002年12月11日にVHS & DVDで発売されたミュージックビデオクリップ集「PRINCESS BELIEVER」に加えて、東芝EMI在籍時代に映像作品化されなかった4曲のシングルのビデオクリップを収録して初のBlu-ray化。完全生産限定盤であるDeluxe Editionのみ、スペシャルコンテンツとして2001年9月8日に開催された〈infection / LITTLE BEAT RIFLE リリース記念 SPECIAL LIVE〉を収録。200名しか入場できなかったプレミアムライブは、当時CSで4曲が生中継された。中継されなかった“眩暈”も収録した全5曲を完全収録。さらに、〈SHIBUYA TSUTAYA インストア 2000/02/14〉を緊急収録。
TRACKLIST
Disc 3
1. シャイン(unplugged)
2. 月光
3. Cage
4. 眩暈
5. edge
6. We can go
7. 月光(album version)
8. LITTLE BEAT RIFLE
9. ROLLIN’
10. 流星群
11. 茨の海
12. infection
13. King of Solitude
14. Sign
15. Beautiful Fighter
16. 私とワルツを
17. いい日旅立ち・西へ
<スペシャル・トラック1>
1. 月光
2. BACK DOOR
3. One of Us
4. Infection
5. 眩暈
<スペシャル・トラック2>
SHIBUYA TSUTAYA インストア 2000/02/14
【ULTIMATE CRASH ’02 LIVE AT BUDOKAN 2002/11/05】SHM-CD
さらに完全生産限定盤であるDeluxe Editionには、2002年11月2日に日本武道館にて行われた1夜限りの伝説のライブ〈CHIHIRO ONITSUKA ULTIMATE CRASH ’02〉の音源を最新マスタリングした2枚組高音質SHM-CD収録。
Disc 1
1. Introduction
2. NOT YOUR GOD
3. Cage
4. infection
5. 漂流の羽根
6. One of Us
7. 眩暈
8. Interlude
9. Tiger in my Love
Disc 2
1. イノセンス
2. edge
3. シャイン
4. BORDERLINE
5. 守ってあげたい
6. 声
7. King of Solitude
8. 月光
9. Castle・imitation
■通常盤(3 Blu-ray)
品番:UPXY-6125/7
価格:16,500円(税込)
【CRADLE ON MY NOISE L*I*V*E ~LIVE INSOMNIA VIDEO EDITION~ + 5 TRACKS】
2001年11月7日にVHS & DVDで発売された商品を初のBlu-ray化。本作は、2001年8月16日に横浜アリーナにて行われた〈PIA Music Foundation SPECIAL〉での“月光”のライブ映像と、4月28日にSHIBUYA-AXにて行われた〈CHIHIRO ONITSUKA LIVE TOUR 2001〉ファイナル公演の模様の一部を収録している。各所には本人のインタビュー映像も挿入されている映像商品。ツアーファイナル公演より当時は未収録だった“Ash on this road”、“BACK DOOR”、“Tiger in myLove”、“We can go”、“眩暈”を新たに収録した全15曲。
TRACKLIST
Disc 1
1. 月光
2. Ash on this road(未発表)
3.イノセンス
4. BACK DOOR(未発表)
5. edge
6. call
7. シャイン(album ver.)
8. Tiger in my Love(未発表)
9. 螺旋
10. Arrow of Pain
11. Try to cry
12. We can go(未発表)
13. Cage
14. 眩暈(未発表)
15. 月光(album ver.)
【ULTIMATE CRASH ’02 LIVE AT BUDOKAN】-Complete Edition-
2003年5月21日にDVD規格のみで発売された商品に、ライブで演奏されたが、当時は未収録だったジョーン・オズボーンのカバー“One of Us”を追加収録し、伝説の武道館ライブが完全盤として初のBlu-ray化。本作は、2002年11月2日に日本武道館にて行われた〈CHIHIRO ONITSUKA ULTIMATE CRASH ’02〉の模様を収録している。
TRACKLIST
Disc 2
1. Introduction
2. NOT YOUR GOD
3. Cage
4. infection
5. 漂流の羽根
6. One of Us(未発表)
7. 眩暈
8. Interlude
9. Tiger in my Love
10. イノセンス
11. edge
12. シャイン
13. BORDERLINE
14. 守ってあげたい
15. 声
16. King of Solitude
17. 月光
18. Castle・imitation
19. BORDERLINE(スタジオライブVer.)
【ME AND MY DEVIL & PRINCESS BELIEVER +】-Music Video Collection-
2001年4月11日にVHS & DVDで発売されたミュージックビデオクリップ集「ME AND MY DEVIL」と2002年12月11日にVHS & DVDで発売されたミュージックビデオクリップ集「PRINCESS BELIEVER」に加えて、東芝EMI在籍時代に映像作品化されなかった4曲のシングルのビデオクリップを収録して初のBlu-ray化。
TRACKLIST
Disc 3
1. シャイン(unplugged)
2. 月光
3. Cage
4. 眩暈
5. edge
6. We can go
7. 月光(album version)
8. LITTLE BEAT RIFLE
9. ROLLIN’
10. 流星群
11. 茨の海
12. infection
13. King of Solitude
14. Sign
15. Beautiful Fighter
16. 私とワルツを
17. いい日旅立ち・西へ
PROFILE: 鬼束ちひろ
2000年2月発売のCDシングル“シャイン”でデビュー。同年リリースの“月光”がロングヒットを記録。1stアルバム『インソムニア』がオリコンチャート初登場第1位、ミリオンセールスを記録、その後〈日本ゴールドディスク大賞/ロックアルバムオブザイヤー〉を受賞。2001年発売のCDシングル“眩暈”で〈第43回日本レコード大賞作詞賞〉を受賞。2016年に至るまで、22枚のシングル(配信のみ1曲)、6枚のオリジナルアルバムを制作し(ベスト盤/カバー盤を除く)、TVドラマ・劇場版「TRICK」の主題歌をはじめ、映画・ゲーム・ドラマ・CMなど多方面に楽曲が起用されている。バンド名義の活動を挟み、2015年には初の楽曲提供を行い、花岡なつみへ“夏の罪”(ドラマ「エイジハラスメント」主題歌)を提供した。2016年11月、メジャーリリースとしては約5年ぶりとなるシングル“good bye my love”を、さらに2017年2月には6年ぶりとなるニューアルバム『シンドローム』をリリース。同年6月には初のライブアルバム『Tiny Screams』、10月にはライブDVD/Blu-ray「ENDLESS LESSON」をリリース。2018年、約15年ぶりとなるドラマ主題歌としてカップリング曲“Twilight Dreams”がFODオリジナルドラマ「ポルノグラファー」の主題歌に決定した。2019年2月には、シリーズ続編となるFODオリジナルドラマ「ポルノグラファー~インディゴの気分~」へ“End of the world”を書き下ろし、2作連続のドラマ主題歌へ抜擢された。2020年2月9日にデビュー20周年を迎え、オールタイムベスト『REQUIEM AND SILENCE』を2月20日にリリース。11月25日には3年ぶり8枚目となるオリジナルアルバム『HYSTERIA』をリリース。2021年2月24日に映画「劇場版 ポルノグラファー~プレイバック~」の主題歌“スロウダンス”を収録したニューシングル“スロウダンス”をリリース。2021年5月には2020年11月に開催された20周年コンサートツアーの模様を完全収録したライブ映像作品「LIVING WITH A GHOST」をリリース。
オフィシャルサイト:https://www.onitsuka-chihiro.jp/
ユニバーサル ミュージックジャパン オフィシャルサイト:https://www.universal-music.co.jp/chihiro-onitsuka/