イタリア現代音楽の大家ルチアーノ・ベリオ代表作のひとつに、“セクエンツァ”と題された様々な独奏楽器のための作品集がある。この“セクエンツァ”は1958年から彼が没する2004年までの約半世紀を通じて書き続けられたライフワークともいうべき作品集で、独奏楽器のあらゆる可能性を模索した実験的な性格が強く、演奏を通じてその楽器の機構、機能、装置に至るまで深く探究されている。特に、特殊奏法をふんだんに駆使した演奏はこの“セクエンツァ”の持つ大きな聴きどころのひとつであり、こうしたテクニカルな表現は、さながら奏者と楽器との間で繰り広げられる哲学的な対話のよう。