1975年にデビューしてから50周年を迎えた中島みゆき。今年も映像作品「中島みゆきコンサート「歌会VOL.1」」をリリースし、12月にはMV集「THE FILM of Nakajima Miyuki II」とシングルコレクション『Singles 2000【リマスター・Blu-spec CD2】』のリリースを控えているなど話題に事欠かない。そこで今回はアニバーサリー企画として、世代を超えて愛されるその歌世界について、同じシンガーソングライターとして彼女をリスペクトする町あかりに綴ってもらった。 *Mikiki編集部
聴き手一人ひとりの人生に語りかける中島みゆきさんの歌
2025/10/22 町あかり
中島みゆきさんは、私にとってシンガーソングライターとしての憧れそのものです。好きな曲はたくさんあり、その中でも、高校時代の文化祭で“時代”をギターで弾き語りしたときのことは今でも鮮明に覚えています。校長先生がとても喜んでくださり、友人が涙まで流したのには驚きました。他にも何曲か歌いましたが、“時代”を歌った瞬間だけ教室の空気がガラッと変わったような、ものすごい輝きを感じたのです。世代を超えて人の心を動かす、みゆきさんの楽曲の力をそのとき初めて実感しました。
みゆきさんの歌には、人間への深い愛が込められていると感じます。特に、寂しさや悲しみを抱える人の隣にそっと座ってくれるようなあたたかさ。悲しみを消そうとせず、そのまま抱えながらも生きていける強さをくれる。〈自分だけじゃないんだな〉と思わせてくれて、背中を押してくれる。そうした眼差しが、一つひとつの作品に通っているように思います。ジャンルや提供曲の多様さにも驚かされますが、どの時代の人々の心にも寄り添う曲を生み出している点が、シンガーソングライターの私にとって憧れです。
恋愛の情念を描いたものや、応援歌のような楽曲も魅力的ですが、私が特に惹かれているのは〈ふるさとから都会へ出た人の心情〉を描いた作品たちです。北海道出身のみゆきさんから見た視点と心情が、多くの人の心を掴んでいると思います。
由紀さおりさん・安田祥子さんのアルバムのために書き下ろされた曲“帰省”(2000年)は、都会で孤独に生きる人が、故郷に帰ることで束の間の安らぎを得て、再び力を取り戻す姿を描いています。その中でも最後の一節――〈束の間 人を信じたら もう半年がんばれる〉。この一行の強さには、何度聴いても息をのみます。決して都会を悪く言っているわけではなく、そのまぶしさの裏側にある孤独を、冷静に、そして優しく見つめているように感じるのです。自分で選んだ街だからこそ、辛くても前向きに頑張ろうとする主人公の姿が、美しく胸に響きます。
その視線は、“わかれうた”のB面として収録された“ホームにて”(1977年)にも通じています。この曲では、故郷行きの列車を見送る葛藤が描かれています。帰りたくても帰れない、それは都会で生きていくと決めたからなのでしょうか。でも心の奥では、〈空色のキップ〉のような帰郷への想いをずっと握りしめている。駅のホームという場所を人生の分岐点として描く詩の構成が、本当に巧みです。
そして、ちあきなおみさんに提供された楽曲“ルージュ”(1977年)には、そんな都会の孤独を抱えながらも、凛として生きる女性の姿が描かれています。達観と寂しさ、そして誇りを併せ持つ女性。みゆきさんの描く女性像には、〈人間の温もり〉や〈哀しみの中のユーモア〉があります。どんなに孤独でも、前を向いて生きていく女性の姿に、強い共感を覚えます。
みゆきさんの歌には、命へのリスペクトが感じられます。大勢の観客を前にしても、決して〈群衆〉に向かって歌っているようには感じません。あくまで一人ひとりの人生に語りかけるように歌い、目の前にいる人にまっすぐ届くようにしています。ひとりの心を信じて歌い続ける姿に、みゆきさんというアーティストの真髄があるように思います。リスナー一人ひとりと向き合った結果、失恋ソングだけでなく、人を救う力強い曲や励ます曲も生まれています。みゆきさんとリスナーは呼応しあう関係であり、これからも影響を与え合いながら、名曲は生まれ続けるのでしょう。
RELEASE INFORMATION

リリース日:2025年12月17日(水)
■Blu-ray
品番:YCXW-10038
価格:5,500円(税込)
全7映像+特典映像3
■DVD
品番:YCBW-10112
価格:4,950円(税込)
全7映像+ 特典映像3
TRACKLIST
1. 心音(しんおん) 監修:岡田麿里/ディレクター:横山裕一朗(スタートレーラー) *2023年発表(2023年9月13日発売SG/映画「アリスとテレスのまぼろし工場」主題歌)
2. 倶(とも)に 監督:翁長裕 *2023年発表(2022年12月14日発売SG/フジテレビ系ドラマ「PICU小児集中治療室」主題歌)
3. 麦の唄 監督:関和亮 *2024発表(2014年10月29日発売SG/NHK連続テレビ小説「マッサン」主題歌)
4. 恩知らず 監督:翁長裕 *2012年発表(2012年10月10日発売SG/日本テレビ系ドラマ「東京全力少女」主題歌)
5. 荒野より 監督:翁長裕 *2011年発表(2011年10月26日発売SG/TBS系ドラマ「南極大陸」テーマ曲)
6. 愛だけを残せ 監督:翁長裕 *2010年発表(2009年11月4日発売SG/全国東宝系「ゼロの焦点」主題歌)
7. 一期一会 監督:翁長裕 *2007年発表(2007年7月11日発売SG/MBS、TBS系「世界ウルルン滞在記“ルネサンス”」主題歌)
【特典映像】
・銀の龍の背に乗って/映画「Dr.コトー診療所」予告編
・一期一会/映画「シサㇺ」予告編
・慕情/テレビ朝日系列〈帯ドラマ劇場〉脚本 倉本聰「やすらぎの郷」主題歌タイトルバック “慕情”ノンクレジット・バージョン
リリース日:2025年12月17日(水)
品番:YCCW-10432
仕様:Blu-spec CD2
価格:3,500円(税込)
全14曲
TRACKLIST
1. 地上の星(NHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」主題歌)
2. ヘッドライト・テールライト(NHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」エンディング・テーマ)
3. 瞬きもせず(映画「学校III」主題歌シングルバージョン)
4. 私たちは春の中で(映画「大いなる完」主題歌)
5. 命の別名(TBS系ドラマ「聖者の行進」主題歌)
6. 糸(TBS系ドラマ「聖者の行進」主題歌)
7. 愛情物語(テレビ朝日系ドラマ「はみだし刑事情熱系Part II」主題歌)
8. 幸せ(小林幸子への提供曲のセルフカバー)
9. たかが愛(テレビ朝日系ドラマ「はみだし刑事情熱系」主題歌)
10. 目を開けて最初に君を見たい
11. 旅人のうた(日本テレビ系ドラマ「家なき子2」主題歌)
12. SE・TSU・NA・KU・TE
13. 空と君のあいだに(日本テレビ系ドラマ「家なき子」主題歌・映画「家なき子」主題歌)
14. ファイト!(住友生命〈ウイニング・ライフ〉CMイメージソング)
■先着特典
『THE FILM of Nakajima Miyuki II』(Blu-ray & DVD)、『Singles 2000【リマスター・Blu-spec CD2】』をご購入のお客様に先着特典をそれぞれプレゼント。
・『THE FILM of Nakajima Miyuki II』(Blu-ray・DVD共通)〈クリアファイル(B5サイズ)〉
・『Singles 2000 【リマスター・Blu-spec CD2』〈ペーパーコースター〉
詳細はこちら:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/news/detail/1589
PROFILE: 中島みゆき
1975年、“アザミ嬢のララバイ”でデビュー。同年、日本武道館で開催された〈第6回世界歌謡祭〉にて“時代”を歌唱し、グランプリを受賞。1976年にファーストアルバム『私の声が聞こえますか』をリリース。現在までにシングルを48枚、オリジナルアルバム44作品をリリース。アルバム、ビデオ、コンサート、夜会、ラジオパーソナリティ、テレビ・映画のテーマソング、楽曲提供、小説・詩集・エッセイなどの執筆と幅広く活動。日本において70年代、80年代、90年代、2000年代と4つの世代(decade)でシングルチャート1位に輝いた女性アーティストは中島みゆき、ただ一人である。2002年に“地上の星”、2014年に“麦の唄”で「NHK紅白歌合戦」に出演。2023年に通算44枚目となる最新オリジナルアルバム『世界が違って見える日』、初のアニメ映画の主題歌となった“心音(しんおん)”をリリース。2025年3月12日に2020年以来、4年ぶりとなったコンサート〈中島みゆき コンサート「歌会VOL.1」〉の映像作品とライブCDアルバムをリリース。2025年12月17日に最新ミュージックビデオ集「THE FILM of Nakajima Miyuki II」と、2002年リリースのミリオンロングヒットアルバム『Singles 2000【リマスター・Blu-spec CD2】』をリリース予定。
オフィシャルサイト:https://www.miyuki.jp/
スタッフX:https://x.com/miyuki_staff
PROFILE: 町あかり
東京都出身のシンガーソングライター。作詞・作曲・編曲はもちろん、漫画連載や執筆、衣装制作までこなすマルチなアーティスト。ユーモラスな歌詞と個性的な世界観が魅力で、2015年にビクターエンタテインメントよりメジャーデビュー。これまでにアルバム8枚、シングルや配信楽曲も多数リリースし、アーティストへの楽曲提供など幅広く活動中。メジャーデビュー10周年記念シングル『僕の生まれは郡山/Yokohama Dilemma(ヨコハマ・ジレンマ)』も好評発売中。
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