ロックとポップを兼ね備えた存在
しかしそれだけではないところが『LOOSE』というアルバムの面白い点で、というのも、もちろん本作にはあの“LOVE PHANTOM”が入っているからだ。1分20秒ほどの長大で壮大なストリングスとオペラ風のボーカルによるイントロは伝説的だが、ビートは打ち込みであるし、松本が披露する個性的かつ技巧的な高速レガートなどを聴けば、上記の曲とはまったく異なるサウンドが展開されていることが一瞬でわかる。
アルバムの中では例外的な音楽性の“LOVE PHANTOM”だが、やはり〈これもB’z〉、そして〈これぞB’z〉な代表曲の一つである。初期を思わせるデジタルサウンドでもありつつそれが『LOOSE』の世界に不思議と馴染んでいるのは、本作がただ単に生々しいバンドサウンドをフィーチャーしただけのアルバムではないからだ。『LOOSE』は、B’zのそのような多面性を表してもいる。ブラスセクションやストリングスの分厚く派手な伴奏もアルバム全体を力強く彩っているし、ファン人気が高いドラマティックな“夢見が丘”、同じくファンから人気なバラード“消えない虹”(稲葉の歌が素晴らしい)などが収録されてもいる事実は大きい。
〈B’zは2人〉に立ち戻ることによって、〈LOOSE〉な自由さと解放を手に入れた彼らは、原点を見つめ直した。その一方で“LOVE PHANTOM”のような曲も収めた本作は、ロックバンド然とした活き活きしたアンサンブルを中心に据えながらも、ポップさ、非ロック的なエレクトロニックなサウンドを手放してはいない。〈これまでのB’z〉を引き受けながら、自分たちがやりたいことも彼ららしい塩梅で両立させている。
B’zとはどんなグループなのか? 彼らをロックアクトと呼ぶ者がいれば、いやポップアーティストだと評する人もいる。そんな終わらない問答の答えは、両方を兼ね備えた存在だとするのが正しい。ロックでありポップ、ポップでありかつロック。制作の基盤とサウンドの変化を経た『LOOSE』は、そんなB’zならではの在り方を2人で高度な形で確立したアルバムだと言いたい。
なおここでは『LOOSE』の音楽性に絞って掘り下げたので、“ザ・ルーズ”や“敵がいなけりゃ”に顕著な、稲葉のユニークな歌詞世界に触れられなかった。その点はまた別の機会に論じてみたいところだ。