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現代の暗部をパンクとして鳴らすハイパーポップ

――音楽性についても伺いたいと思います。“せかいのしくみ”や“WHAT A WORLD!!!”はポスト・ハイパーポップ的なロックサウンドですよね。なぜこうしたサウンドを取り入れたのでしょうか?

「“せかいのしくみ”の制作時は、自分にとって新しいものを模索していました。ハイパーポップは作ってみたかったんですけど、今普通にやっても古い気がするし、自分がやる意味を見出せなくて。

ではどうハイパーポップっぽいものをやるかと考えた時に、パンクを現代的に解釈するとハイパーポップになるんじゃないかと思ったんですよね。当時はポストパンク、特にジョイ・ディヴィジョンをめっちゃ聴いていて。多分リフのシンプルな感じは凄く影響を受けてますね。〈てーてー、てーてー、ててー、てーててー〉みたいなのをやりたかったんですよ(“Disorder”のリフを口ずさむ)。なので、個人的にはこの曲はパンクでもあります」

――確かにパンクっぽさは感じますね。

「そうなんですよ。“せかいのしくみ”はエモーショナル・ポストパンク・ポップです(笑)」

――(笑)。ブレイクビーツやジャージークラブのビートも入ってますよね。

「ブレイクビーツは僕の手癖かもしれないですね。“藍空、ミラー”や“刹那Blue”にも入ってます。ジャージークラブは〈入れちゃえ!〉と思って入れました。そういう色々融合しためちゃくちゃな感じもハイパーポップっぽいのかもしれないです」

――“WHAT A WORLD!!!”はどうでしょうか?

「同じくパンクに影響を受けているんですが、こっちはグリーン・デイの“Basket Case”ですね。明るさと暗さの両面を孕んだ歌詞なども影響を受けてるんじゃないかと思います。“Basket Case”もめちゃくちゃポップかつパンクに歌ってるけど、言ってることは〈精神科に行ってセックス中毒だと言われた〉とかじゃないですか。その美しさをやってみたかったんですよね。

音楽的なところでは、ギターが核になった曲という時点で僕にとって新しい試みで。僕はギターがあまり上手くないので、簡単なリフやパワーコードを使っているんですよね。ハイパーポップには楽器が上手いアーティストも多いと思うんですが、そこにあえてステゴロで挑みました(笑)。前からやってみたかったハイパーポップ的なアプローチが、やっとそれらしい形になったのが“せかいのしくみ”や“WHAT A WORLD!!!”なんじゃないかなと思います」

――アンダースコアーズやPAS TASTAなどのハイパーポップ的な文脈にいるアーティストや、少し違いますがポーター・ロビンソンなども近年はポップパンク的な要素を取り入れてますよね。

「みんなつらいんじゃないですか(笑)。つらいから爆音を流したくてしょうがないけど、ポップな曲を作りたいとなるとああいう音楽になるんじゃないかなって。もしかしたらパンクに行くのは必然かもしれないですね」

 

〈生まれたことに宿命があってほしい〉という本音

――“WHAT A WORLD!!!”の歌詞は感嘆符や疑問符が多いですよね。歌詞とサウンドともに焦燥感があって、とてもマッチしているなと思いました。

「実はこの曲を作ってる時に、人生で初めてボロ泣きしたんですよね。そもそもこの曲は、自分の考えとは逆のことを書いて、それを否定することで逆説的に自分の考えを肯定する歌詞にしようと思っていたんですよ。

例えば〈生まれたことに宿命があると言って!〉などは僕と真逆の考えなんです。それで2番の〈なんてこと! だってもっと/愛を知って、愛し合って/生きたいと思ってた〉という歌詞を書き終えて〈さて、これからこの歌詞を否定していくか〉と思った時に、なぜかめちゃくちゃ涙が出てきて。おそらく、自分の考えと逆のことを書いたつもりが、本当に思っていることだったんですよ。本当は生まれたことに宿命があってほしいし、愛するだけじゃなくて愛されたいのに、その気持ちを封じ込めていたみたいで。悲しかったのか嬉しかったのかはよくわからないけど、気づいたらボロ泣きしてたんですよね。多分、この曲の歌詞が一番の本音なんだと思います」

――その気づきがアルバムに反映されたりはしましたか?

「この曲は最後の方に作ったので、特にそういうことはないですね。でも、自分は間違っていなかったんだなという確信にはなりました。僕は歌詞で〈自分で自分を救いたい〉とずっと言ってるんですけど、それをちょっと達成できたのかなと思います。正しくないからと封じ込めていた自分の考えも、完全になくすことはできないことに気づけたというか、〈生まれたことに意味があるとは思わないようにしよう〉という否定の方向ではなく、そういう考えがなくならないからこそ自分なんだと思えるようになりました。その気づきによって、僕の内面は大分変わりましたね。“WHAT A WORLD!!!”はこれまでの曲の解決として相応しいというか、3部作のコンセプトの完成形なのかなと思ってます」