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すべてを聴きたかった人に心の光を――補完盤は伊達じゃない!

 20世紀に発表されたガンダム作品のなかでも、近年あらためてスポットがあたる機会が多かった「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年劇場公開)。TVシリーズの初作「機動戦士ガンダム」(1979年)から始まったシャアとアムロの戦い(というか意思のぶつかり合い)が ひとつの完結をみた作品、同時に宇宙世紀シリーズにひとつのピリオドを打った作品であったという意味をもっていることもあるが、なんといっても、「逆シャア」の物語に関連性のある劇場作品「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」が2021年に公開されたことと、その続編となる「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女」が先ごろ公開され、本編のなかに「逆シャア」でアムロが搭乗していたνガンダムが登場したことでさらに盛り上がりを見せている(そしてそれらが三部作で、完結までにまだしばらくの熱気が続くことも)。「閃光のハサウェイ」の主人公、ハサウェイ・ノアは、「機動戦士ガンダム」の舞台となった一年戦争において地球連邦軍のV作戦を担った強襲揚陸艦、ホワイトベースのクルーだったブライト・ノアとミライ・ヤシマのあいだに生まれた子。「逆シャア」では物語のキーとなるヒロイン、クェス・パラヤと邂逅し、運命に翻弄される――というストーリーが展開されることもあって、「閃光のハサウェイ」公開後からガンプラ展開なども含めて再注目されてきたわけだ。

三枝成彰 『オリジナル・サウンドトラック『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』増補盤』 SUNRISE Music Label(2026)

 1988年の公開時にリリースされていた「逆シャア」のオリジナル・サウンドトラックは、2014年に〈完全版〉として刷新され、88年盤に未収録だった楽曲やテイク違い、映画本編へのシンクロナイズのためにエディットされた音源などを含むCD 3枚組でリリースされたが、初回生産限定盤だったこともあって、そのフォーマットで入手することは、発売からほどなくして不可能となっていた。88年盤については、品番を改めて〈通常盤〉としてカタログに残っているわけだが、〈完全版〉に収められた音源を聴きたいという声は、作品への再注目とともに高まっていた。そんななかリリースされるのが、〈完全版〉のみに収められていた音源で構成されたCD 2枚組の〈増補盤〉である。これと通常盤とを合わせれば〈完全版〉と同じ内容がお手元に揃うというわけだ。こんなうれしいことはない……。

 〈増補盤〉の内容を改めて記しておくと、〈EXPANTION 01〉と名付けた1枚目のディスクには、オリジナル・サウンドトラック収録曲、さらには実際に本編で使用された楽曲の別テイク集。各々の楽曲は、ピッチやテンポ、使用楽器の変更などで多彩なヴァリエーションがつけられており、本編のシーンを思い浮かべながらというより、楽曲そのもののおもしろさ、アレンジの妙などを楽しむという趣き。“M45”(リリース前提の音源ではないゆえ、マスターテープに振られた番号でトラックが表記されている)は、本編エンディングのクライマックスで流れる“DESTINY(宿命)”(通常盤収録)をベースにエディットされた、いわゆるアナザーエンディング楽曲だ。2枚目のディスク〈EXPANTION 02〉には、映画本編へのシンクロナイズのためにエディットされたすべての音楽を収録。劇中の各々のシーンに適合した音楽集という例の少ない試みで、劇中では映像、台詞、効果音が存在するなかで流れる楽曲を、それらと切り離した状態で楽しめるものにするために曲間のバランスやヴォリュームなどは調整するなどの作業も施されている。あのシーンこのシーンを思い浮かばせながら映画本編そのままに音楽体験が楽しめるというものだ。

 2023年にリリースされたアナログ盤も再プレスされるということで、ますます盛り上がって行きそうな「逆シャア」。通常盤も収納できる三方背スリーブケース、88年盤と2014年盤へのオマージュを含んだアートワークなど、装丁にも大きな価値ありのオリジナル・サウンドトラック。νガンダムはやっぱり伊達じゃない!