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わたせせいぞう自ら厳選した曲を最新リマスタリングで! ファン待望の作品集

 80年代リヴァイヴァルの影響か、はたまたシティポップ・ブームの余波なのか、大滝詠一『ロング・バケイション』のジャケを書いた永井博や、山下達郎『FOR YOU』でお馴染み:鈴木英人のイラストが人気再燃している。ならば当然わたせせいぞうも、というコトで、昨年40周年を迎えた「ハートカクテル」。4冊のコミックから始まり、86~88年にはTVの連続ショートアニメになって人気沸騰。昨年はNHK総合で「ハートカクテル カラフル」全15話がオンエアされた。そんなタイミングを捉え、80年代に6枚作られたサウンドトラック盤から、わたせ自身が選曲するCD2枚組が出た。

VARIOUS ARTISTS 『ハートカクテル オリジナル・サウンドトラックス』 ワーナー(2024)

 ディスク1は、ラテン・フュージョンの大御所:松岡直也が担当したVol.1/2から12曲と、作編曲家でジャズ・ピアニスト:島健が担当したVol.4から10曲。共にポップなメロディのインスト小品が並ぶが、同じピアノ奏者ながら、松岡はデジタル器材と生演奏を併行使用。演奏陣は和田アキラ(ギター)や高橋ゲタ夫(ベース)、津垣博通(キーボード)など、気心の知れた松岡直也グループの面々で、自身のバンドにそぐわぬようなデジタル方面のトライアルをココで行なっている。対して島の楽曲は、すべて生演奏。松下誠(ギター)、高水健司(ベース)や斉藤ノブ(パーカッション)ら信頼の置ける鉄壁のセッション・ミュージシャン集団に、弦カルテットの起用もある。劇伴作品を数多く手掛け、近年はさまざまな舞台ミュージカルの音楽監督を務めている人だから、そこに自分のピアノと作品作りへの強いコダワリを感じるのだ。

 ディスク2の中心は、クラシック系の作編曲家:三枝成彰の作品12曲をVol.5/6から。自ずと穏やかな室内管弦楽調となり、わたせのイラストのイメージから優雅さを導き出す。これにVol.3からカルロス菅野(パーカッション/ヴォーカル)がいたトニーズ・ショウの楽曲、更にボーナス・トラックとして、前述「ハートカクテル カラフル」の主題曲および劇中曲などを追加してメリハリをつけた。全曲最新リマスタリングで音ヨシ。都市生活者がちょっとリラックスしたい時のBGMに最適です。