幅広い世代の音楽家と作り上げた新しい音
――“恋しくて”は、プレイヤーそれぞれが演奏している空気感までもが伝わってくるところが魅力的です。
「吉丸洸平(ギター)、ゆう大(キーボード)、松ヶ谷一樹(ウッドベース)という20代の3人と一緒に録りました。吉丸は、ゆう大からの紹介で、〈草野球をやりたがっているギタリストがいるんですけど〉ということで、1年くらい一緒に野球だけやっていたんですよ。今回、ゆう大が〈“恋しくて”のギター、吉丸でどうですか?〉と提案してきたので、お願いしました(笑)」
――そうした人間関係も音に反映されているんでしょうね。
「さまざまな年代の方に参加していただいたことが大きかったと思います。自分よりも年上の百戦錬磨の方々、同世代、若い世代というバランスは意識しました。
“恋しくて”は元々ブルージーな悲しみのある曲ですが、ゆう大と相談して、あえてジャズスタンダードのような軽快なアレンジにして、英語の歌の感覚で歌いました。明るい太陽のような歌い方を心がけたことで、オリジナルとは違う響きになったと思います。
ゆう大は90年代後半生まれなので、今回カバーした曲をほとんど知らなかったんですよ。さまざまな世代を通過したことが、このアルバムの大きなポイントですね。いろんな人からも〈音像が新しい〉と言ってもらっています」
――アルバムの最後を飾る“リンゴの森の子猫たち”は、エンドロールが流れそうな楽曲ですよね。1曲目から7曲目までは恋愛の要素があって、失恋や別れなど、人間関係の緊張感がありますが、この曲でそうした緊張感が一気にほどけるところもいいですね。
「この曲は1984年頃にNHKのアニメ『スプーンおばさん』で流れていた曲で、作曲が筒美京平さんで作詞が松本隆さん。京平さんとは仲良くさせていただいたこともあり、京平さんの曲を入れたいと思っていました。〈これしかない〉と思うほどの名曲ですが、めちゃくちゃ難しい曲でもあります。
アレンジを手伝ってくれたゆう大くんはスーパー天才で、NewJeans、米津玄師さん、宇多田ヒカルさんとも演奏しています。今の若い世代の音楽観って、〈イッツ・ア・スモールワールド〉的なところがあって。和風、洋風、オリエンタル、アフリカン、タンゴ的なものなどがミックスした音楽を自然な感覚として持っているので、ゆう大も大喜びでやってくれました。アミューズメントパーク的な音楽って、僕らの世代にとっては冒険ですが、今の若い世代には自然に響くんだと確信しました」
AIと付き合いつつ、AIに出せない人間味を求めて
――『Human』というタイトルを決めたのはいつ頃ですか?
「去年の8月末か9月頃です。友達から〈人間味があるね〉と言われたことがきっかけで、『人間味』にしようかとも考えたんですが、いきなりすぎるかなと(笑)。それで、『Human』というタイトルを思いつきました。
今、世の中の話題の多くがAIじゃないですか。僕もいろいろな場面でChatGPTを活用していますし。そういう時代に、このタイトル、面白いかなと」
――生成AIが作る音楽も注目を集めていますが、そうした時期に、『Human』というタイトルの作品を発表するというところはタイムリーですよね。
「エレキギター、ドラムマシン、シンセサイザーが登場した時にも、導入に反対する人は常にいました。でも、結局は時代の流れに身を任せるしかない。
僕が尊敬する小西康陽さんが数年前に〈郷太くんも弾き語りをやった方がいいよ。上手すぎない方がいいんだよ。落語のように、その場の思いつきでやるのは人間にしかできないことだから〉と3年くらい前に言ってくれたんです。それで僕も弾き語りツアーを始めました。結局、そういうところに帰結していくのかなと思っています」
――弾き語りはまさに人間味あふれる音楽表現方法ですよね。
「僕は忘れ物ばかりする欠点だらけの人間でして。先日も静岡のホテルの予約の日時を取り間違えて、1日前の予約を取ってしまった。そうしたら、初めて会った静岡のDJの仲間が、〈郷太さん、うちで良かったら泊まりませんか〉と言ってくれて、仲良くなりました。さらに彼が、〈温泉に行きませんか〉と秘湯に誘ってくれました。その温泉に漫画があって、2人でそれぞれに漫画を読んでいて、まるで昔からの友だちみたいで、最高だなって(笑)」
――確かにそんなつきあい、なかなかないですよね。ホテルの予約ミスが新たな友だちづきあいにつながっていると考えると、ミスをしない生成AIではあり得ないエピソードですね。
「そうなんですよ。弾き語りの魅力も、予定調和とは違うところにある気がしています。もちろん人間とAIの共存は必要ですが、人間がかけがえのないものであることは変わらないと思っています。バンドが解散するとか、再結成するとか、誰かが亡くなるとか、生きている以上、あるわけで。NONA REEVESだって、いつまで続くかわからないし。
そう考えると、〈今しか聴けないもの〉〈今しか見られないもの〉の価値は絶対にあると思うんですよ。オアシスの再結成をみんなが喜んだのも、そういうことだろうし。小西さんが言ってくれたことがすべてですよね。AIと付き合いつつも、AIにはできない自分なりの良さを突き詰めていくことが大切だと思っています。その自分なりの結論が、『Human』というアルバムです」
RELEASE INFORMATION
■CD
リリース日:2026年2月18日(水)
品番:IMWCD-1849
価格:3,000円(税込)
■LP
リリース日:2026年5月29日(金)
品番:IMWVR-1100
価格:4,400円(税込)
TRACKLIST
1. YOU (オリジナル:サザンオールスターズ)
作詞・作曲:桑田佳祐 ※1990 日本生命保険「ロングラン」CMソング
2. Yes-No(オリジナル:オフコース)
作詞・作曲:小田和正
3. 恋におちて(オリジナル:小林明子)
作詞:湯川れい子 作曲:小林明子
※1985 TBS系ドラマ「金曜日の妻たちへIII 恋におちて」の主題歌
4. いっそセレナーデ(オリジナル:井上陽水)
作詞・作曲:井上陽水 ※1984 サントリー『角瓶』イメージソング
5. Woman “Wの悲劇”より feat. 真城めぐみ(オリジナル:薬師丸ひろ子)
作詞:松本 隆 作曲:呉田軽穂 ※1984 映画「Wの悲劇」主題歌
6. 恋しくて(オリジナル:BEGIN)
作詞・作曲:BEGIN ※1989 日産自動車CMイメージ・ソング
7. 熱き心に(オリジナル:小林旭)
作詞:阿久悠 作曲:大瀧詠一
※1985 AGFコーヒー「マキシム」CMソング
8. リンゴの森の子猫たち(オリジナル:飯島真理)
作詞:松本隆 作曲:筒美京平
※1983 NHKアニメ「スプーンおばさん」エンディングテーマ
9~16. 各収録曲のインストゥルメンタルを収録
リリース日:2026年3月25日(水)
品番:IMWVR-1099
価格:2,420円(税込)
TRACKLIST
Side A:熱き心に
Side B:リンゴの森の子猫たち
LIVE INFORMATION
NONA REEVES
Revisit the “POP STATION” at Billboard Live TOKYO
2026年4月3日(金)東京・六本木 Billboard Live TOKYO
1st Stage 開場/開演:17:00/18:00
2nd Stage 開場/開演:20:00/21:00
出演:NONA REEVES
StoriAA
2026年5月7日(木)東京・新代田 FEVER
開場/開演:19:00/19:30
出演:NONA REEVES/GOOD BYE APRIL
詳細ページ:http://www.nonareeves.com/
PROFILE: 西寺郷太
1997年にNONA REEVESのシンガー、メインソングライターとしてデビュー。以後、音楽プロデューサー、作詞・作曲家としても少年隊、SMAP、V6、YUKI、岡村靖幸、A.B.C-Z、鈴木愛理などの多くの作品、アーティストに携わる。バンド以外でも文筆家、MCや自身のYouTubeチャンネル〈Nishidera Gota Channel(NGC)〉などで活躍中。
Instagram:https://www.instagram.com/gota_nonareeves/
X:https://x.com/Gota_NonaReeves
YouTube:https://www.youtube.com/@NishideraGotaChannel

