桑田佳祐の新曲“人誑し / ひとたらし”が配信リリースされた(CDは2026年6月24日に発売)。同曲は現在放送中のTVアニメ「あかね噺」のオープニング主題歌として書き下ろされた楽曲で、今年2月に70歳を迎えた桑田にとって新たなスタートを告げる1曲でもある。サザンオールスターズの一員として巻き起こした熱狂がまだ冷めやらぬなか届けられたソロの新曲を、ライターの森朋之が軽快にレビューする。 *Mikiki編集部
“人誑し / ひとたらし”と「あかね噺」に共通するハイブリッド感
落語とかけて、ポピュラー音楽ととく。その心は?
「どちらも〈サゲ〉が大事でしょう」
ん? 落語のサゲ(噺のオチ)はわかるけど、音楽の〈サゲ〉って?
「曲の盛り上がりの後の下がり方、着地が大事ということです」
あ、オチサビみたいなこと? ちょっと弱いなー、ChatGPT。
と、AIにそんな〈なぞかけ〉をしてみたのは、桑田佳祐の新曲“人誑し / ひとたらし”を聴きながら、落語とポップミュージックの共通点って何だろう?と考えていたからなのだった。
日本を代表するポピュラー音楽家・桑田佳祐から新曲“人誑し / ひとたらし”が届けられた。古希を迎えて最初のリリースとなるこの楽曲は、TVアニメ「あかね噺」のオープニング主題歌として書き下ろされた楽曲。大の落語好きである桑田は、2016年12月にNHK「SONGS」出演時に波乗亭米祐(なみのりていべいすけ)として高座に上がったこともある(シングル“君への手紙”にひっかけ、手紙にまつわる小噺を披露した)だけに、落語をテーマにしたアニメ作品の主題歌を手がけるのはまさに必然だ。
2022年から「週刊少年ジャンプ」で連載されている「あかね噺」(原作:末永裕樹、作画:馬上鷹将)は、落語に挫折した父の無念を晴らすため、娘の桜咲朱音が落語の世界に挑む物語だ。題材が落語で、女性が主人公の少年漫画はかなり異色だが、芸(技)を磨いてライバルたちと切磋琢磨するというストーリーは、〈友情・努力・勝利〉に根ざした「週刊少年ジャンプ」の王道と言っていい。すなわち伝統と革新のバランスこそがこの漫画の魅力であり、そのハイブリッド感は“人誑し / ひとたらし”にもしっかりと反映されている。
高揚感溢れる打ち込みのビート、透明度の高いシンセの音色、そして、グループサウンズを想起させるギターリフからはじまる“人誑し / ひとたらし”。有機的に絡み合うブルージーなギターのアンサンブル、南米のフォークロアを感じさせる笛の音、欧州の匂いを振り撒くバイオリンなどを含め、時代と場所を超えた色彩豊かなサウンドが自然に融合している。懐かしさと新しさが混じり合うメタバース感が、独創的な日本的エキゾチズムへと結びついていく。艶やかさ、妖しさを共存させるセンスも健在だ。
アレンジ(桑田と共同)、弦の編曲を手がけているのは片山敦夫。参加メンバーは斎藤誠(ギター)、山内薫(ベース)、金原千恵子(ヴァイオリン)、曽我淳一(リズム/シンセプログラミング)という鉄壁の布陣。特にビートメイカーとしての曽我の手腕が光る。さらにバッキングボーカルにはTIGERと原 由子が名を連ねている。
