サザンオールスターズの新曲“盆ギリ恋歌”がついにリリースされた。2023年6月25日のデビュー記念日を皮切りに、45周年イヤーがスタート。“盆ギリ恋歌”はそんなバンドのアニバーサリーイヤーの幕開けを飾る特別な楽曲……ではあるが、そこはサザン、やはり一筋縄ではいかない、ギミック満載の新曲に仕上がっている。
4年という歳月を経て届けられた“盆ギリ恋歌”を耳にした音楽ジャーナリストの原田和典が、その素直な想いを綴ってくれた。 *Mikiki編集部
タイトル“盆ギリ恋歌”の意味とは?
タイトルを一見しても、どんな曲なのかまったく予想がつかない――そんなことはサザンオールスターズを聴くうえでの通過儀礼であり、ある程度の経験をつめば、その予測できなさ、裏の裏の裏を行くようなネーミングが快感になってくる。
そしてサザンの曲名は、時に洋楽オヤジを、60~70年代のロックを愛する者を熱くたぎらせる。“彩~Aja~”、“GIMME SOME LOVIN‘~生命果てるまで~”、“胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ”、“Soul Bomber(21世紀の精神爆破魔)”などなど、その一部をあげさせてもらったが、なんというかもう、ニヤニヤしながら題を決めている図が、こちらの頭に勝手に浮かぶ。
そこで、4年ぶりの新曲である。デビュー45周年記念3か月連続リリースの第1弾で、タイトルは“盆ギリ恋歌”。音源が解禁される前から、この語感だけでグサッと来ていた。手ごたえを得た。なんともわけのわからない感じでありつつ、同時に妙なキャッチー性も我が心に飛び込んできたからだ。
まずタイトルの前半、〈盆ギリ〉だが、これはおそらく熊本県民謡“五木の子守唄”の歌いだしのフレーズから着想しているのであろう。私は民謡マニアではないけれど、大の親日家であるアメリカ人のジャズ歌手、ヘレン・メリルがライブで歌っていたのを聴いて以来、なんとも“五木の子守唄”が心に刻まれて今に至っている。タイトルの後半、〈恋歌〉は文字通りラブソングという意味だろうが、サザンのそれといえばロマンティックなもの、ディープなもの、おもしろうてやがてかなしきもの、エロ、さまざまなのはご承知の通り。〈盆ギリ〉の〈ギリ〉、このカタカナのところはなんかエロ風味かなあとも正直思った。