自由に羽ばたいて
曲の冒頭から変拍子のドラムが鳴らされる“Man Overboard”、もともと2曲だったものを1曲にまとめ、アメリカン・フットボール史上最長の8分を超える楽曲になった“Bad Moons”、コーラスに頼らずにヴァースとブリッジだけで展開させるニューウェイヴ風のロック“Wake Her Up”、フラメンコを思わせるハンドクラップを印象的に重ねていく“Patron Saint Of Pale”と、これまでとは一味違うと思わせる曲も少なくない。ポスト・ロック的な複数のギター・アンサンブルを軸にしつつ、ハーモニー・ワークも含めいろいろな楽器の音色が重層的に絡み合うなか、ダークウェイヴ風の“Blood On My Blood”や、ピアノとトランペットが掛け合うインスト“The One With The Piano”が、マイクの言う〈楽曲の振り幅〉をぐっと広げている。そのなかでもサンプリングによるものと思しき〈パパパパ〉というコーラスが耳に残る“Desdemona”、そして“Blood On My Blood”の2曲を特にマイクは気に入っているという。
「“Desdemona”は凄く良い曲で、物語のような感じなんだ。始まりと終わりがはっきりしていて、流れがある。曲の展開もクールだよね。“Blood On My Blood”は、トーキング・ヘッズがリック・スプリングフィールドみたいな80年代のポップソングを書いたようなイメージかな」。
アメリカン・フットボールの王道といえる“No Feeling”に高音のハーモニーを重ねたターンスタイルのブレンダン・イェーツ、“Wake Her Up”に「この世のものとは思えない歌声」を加えたウィスプことナタリー・ルーといった、若手ヴォーカリストによる客演も聴き逃せない。
新たなサウンドを求めることが彼らにとって、バンドを続ける唯一のモチヴェーションであると改めて感じられることが、『LP4』のいちばんの聴きどころかもしれない。告解や懺悔にも聴こえる歌詞もこれまで以上に強烈な印象だ。
「単なる再結成やノスタルジーだけでなく、先に進んだと思う。俺たちはいま、ちょっと羽を広げて、自由に羽ばたけるような心地良さを感じているよ。それによって、音楽がもっと楽しくておもしろいものになっているとも思う。みんなにも気に入ってもらえると嬉しいね」。
7月には2019年以来となる〈フジロック〉への出演も決まっている。
「〈フジロック〉でまた演奏できるのが楽しみで待ち切れないよ。前回はすごい嵐に見舞われたから、それでショーが台無しになったわけではなかったけど、間違いなく影響はあったと思う。今回はもっと上手くやれるはずだ。ある意味、前回のリヴェンジだと思ってるんだ」。
再現が難しいであろう『LP4』の曲が中心になるという意味でも、今回の来日は観逃せないものになりそうだ。 *山口智男
アメリカン・フットボールの作品。
左から、2019年作『American Football』、2016年作『American Football』、99年作『American Football』(すべてPolyvinyl)
左から、ターンスタイルの2025年作『Never Enough』(Roadrunner)、ウィスプの2025年作『If Not Winter』(Music Soup/Interscope)