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アメリカン・フットボールを中心に発展を遂げた〈ミッドウェスト・エモ〉とは?

 現在の〈ミッドウェスト・エモ〉は本来の地域的な枠組みを超えた呼称となっているが、90年代における中心地は文字通り、アメリカ中西部のイリノイ州シカゴであり、兄ティムと弟マイクのキンセラ兄弟がまだ10代だった89年に結成されたキャップン・ジャズこそが、ハードコア・パンクの影響を消化したエモ/ポスト・ロックの始祖とされる一組だ。このバンドはすぐに解散するものの、ポップな泣きメロでその後のエモのオーヴァーグラウンド化を予言したプロミス・リングと、音響寄りのアヴァンなアプローチを見せたティムによるジョーン・オブ・アークへと分岐。その一方、よりジャズとの距離が近いトータスやシー・アンド・ケイクなどのスリル・ジョッキー勢が同時代の同地域に存在していて、それら3つの奇跡的な中間点が99年におけるアメリカン・フットボールだったと言えるのではないだろうか。なお、マイクはアメリカン・フットボール再結成時の筆者の取材でスリル・ジョッキーとの関係について、〈僕らは彼らから大きな影響を受けているけど、彼らの視界に僕らは入ってなかったと思う〉と語っていて、当時のムードを知る意味で興味深い。彼の周辺には〈キンセラ・ファミリー〉と呼ばれる無数のバンドが存在するが、なかでもインストのゴースツ・アンド・ヴォッカはtoeへの影響で知られ、日本のポスト・ロックのルーツとしても押さえておきたい。

 パンクの激しさが後退し、メロディアスな歌が前面に出て、繊細なギター・アルペジオをアンサンブルの軸にしつつ、変拍子を取り入れたマス・ロック的なスタイルを特徴とする当時の〈ミッドウェスト・エモ〉は、現在ではエモにおける〈セカンド・ウェイヴ〉に分類されていて、2010年前後のリヴァイヴァル期に活躍したアルジャーノン・カドワラダーやエンパイア!エンパイア!(アイ・ワズ・ア・ロンリー・エステート)ら〈フォース・ウェイヴ〉への影響は絶大。2020年代のエモはよりジャンルレスな広がりを見せているが、アメリカン・フットボールや〈ミッドウェスト・エモ〉の遺伝子はいまも下の世代へと受け継がれている。 *金子厚武

左から、キャップン・ジャズの98年作『Analphabetapolothology』、プロミス・リングの97年作『Nothing Feels Good』、ジョーン・オブ・アークの99年作『Live In Chicago, 1999』(すべてJade Tree)、アウルズの2014年作『Two』(Polyvinyl)、メイク・ビリーヴの2008年作『Going To The Bone Church』(Flameshovel)、オーウェンの2024年作『The Falls Of Sioux』、バースマークの2024年作『Birth Of Omni』(共にPolyvinyl)、toeの2024年作『NOW I SEE THE LIGHT』(Machu Picchu Industrias)、アルジャーノン・カドワラダーの2025年作『Trying Not To Have A Thought』(Saddle Creek)、エンパイア!エンパイア!(アイ・ワズ・ア・ロンリー・エステート)の2014年作『You Will Eventually Be Forgotten』(Count Your Lucky Stars)、2024年のコンピ『American Football (Covers)』(Polyvinyl)