
セクシーなボーカルで初見の観客も〈一目惚れ〉させた舟津真翔
日の傾きがまたちょっと進んだ16時。トリから2番目、舟津真翔(ふなつまなと)のライブがスタートした。デニムジャケットにジーンズ姿の舟津。抱えているサンバースト系のアコースティックギターが、そのスタイリングにぴったり似合っている。
「〈SCRAMBLE FES〉、ゆったりした雰囲気のなかで歌えることが嬉しいです!」と言ってから、“君は運命の人”を披露。切なげな歌声で恋愛の風景を描く様が見事だ。サビの高音部分では、少々掠れた個性的な声の質感が実に魅力的だった。「こんにちは! 座ってもいいですよ! 空気がおいしいですね~。嫌なことは忘れて、一緒に手を上げたり、自由に楽しみましょう!」と、〈SCRAMBLE FES〉ならではのリラクシンな楽しみ方を提案する。
ギターを置いた舟津が次に歌いはじめたのは、打って変わってR&Bの“プレイリスト”。ステージを左右に行き来する舟津を見ていたら、推しを応援するうちわを振っている熱いファンがそばにいることに気づく。グルーヴのなかで映えるセクシーな歌声を聴きながら、〈これはメロメロになるわ……〉なんて心の中で呟いた。「次の曲は“つないだ手”といって、大人も子どもも関係なく、性別も関係なく、人と人の繋がりを大事にしたいと思って作った曲です」との紹介から、優しいバラードを温かく、しかし力強く歌い上げた。

再びギターを手にした舟津は、「弾き語りで、やる予定じゃなかった曲を歌いたいと思います。会場や長野の雰囲気から、やりたいなって思ったカバー曲を持ってきました。あまりライブで歌わない曲ですけど、ここにいる人のことだけを思って……」と、高音弦を爪弾きはじめる。斉藤和義の名曲“歌うたいのバラッド”だ。サビ以降は演奏がアルペジオからコードストロークへと切り替わって盛り上がり、舟津ならではの切なげな歌声がじんわりと聴き手の胸に沁み渡る。
「最後は僕の代表曲! たくさんのひとに出会わせてくれて、いろんな場所に連れて行ってくれた曲です。この曲がなければ、ここ長野にも来られていなかったと思います。一緒に歌ってください!」と舟津。オーディエンスがハンドクラップを曲に添えるなか、ヒットしたラブソング“一目惚れ”を丁寧に歌い上げた。真摯でひたむきな歌いっぷりに、まさに〈一目惚れ〉した初見の観客も多かったはずだ。

タフなシンガー曽我部恵一の突き抜けるような魂の歌
ヘッドライナー、すなわちトリは、サニーデイ・サービスの曽我部恵一によるソロセット。まずは曽我部恵一BAND時代の名曲“キラキラ!”。アッパーでパンキッシュな曲を、アコースティックギターを掻き鳴らして伸びやかなシャウトとともに歌い上げる。オーディエンスは大きな歓声と拍手で、このタフなシンガーを熱く迎え入れた。
「素敵なお店がいっぱい出店しているね。おいしいカレー屋さんも。僕、地方に行くと、おいしいコーヒー豆を探すのが趣味なんですよ」というMCから、「世界中の誰も作っていない〈コンビニのコーヒー〉についての曲です」という導入を経て、サニーデイ・サービスの傑作『いいね!』から“コンビニのコーヒー”を披露。個人的に大好きな曲なので、心が躍った。歌の展開とともに、ギタープレイも次第にコードストロークやミュートなどを駆使しつつ激しさを増し、テンポが上がっていく。最終的に曽我部は〈魂の叫び〉と呼びたい咆哮を放ち、浅間山に届かんばかりの声が森のなかを突き抜けていった。本当にすごいシンガーである。
「桜並木を犬と散歩しているときに思いついた曲」という“桜 super love”は、サニーデイ・サービスの2010年代における活動を代表するクラシックだ。優しいギターのコードストロークから穏やかに歌いはじめる曽我部。バンドでの演奏とはまた異なる、落ち着いたセンチメントが滲むように広がっていく。そして、「昨日、宿で夜の空を見ていたら綺麗で、子どもと来たかったなって。今日はお子さんたちもたくさん来ていますね」と、長女が生まれたときに作った曲“おとなになんかならないで”をゆったりと語るように歌い出す。
続けて、激しくギターを掻き鳴らすサニーデイ・サービス“春の風”で空気は一変した。だんだんと走っていくテンポに追いつかんとばかりに、オーディエンスも手拍子で応答。隣で見ていた、英語を話す外国人のグループらしい若者たちが、「ベイベ~」と曽我部に合わせて歌い、「He’s good!」とノっていたのが印象に残っている。

「僕、サニーデイ・サービスというバンドをやっているんです。自己紹介が遅れました(笑)。……あっ、アフロ、お疲れ!」と、ライブを見ているアフロに声をかける。次に演奏したのは、再び曽我部恵一BAND時代の“魔法のバスに乗って”。ヒップホップのビートやラップのフロウを取り入れた名曲を、歌とギターだけでリズミカルに披露する曽我部。そこで生まれたアコースティックなグルーヴは、夕方を迎えつつある〈SCRAMBLE FES〉のチルなムードにバッチリ合っていた。
そして、いよいよ最後の曲へ。「来年もやるんだったら、一晩中やらして! 6時間くらいだったらできるよ!」と曽我部。「ラ~ラララララ~ラ~ラ~ラ~」と、お馴染みのあのメロディが曽我部の口から飛び出した。「“青春狂走曲”!」と曽我部が叫ぶやいなや、観客の盛り上がりは最高潮を迎える。「そんなこと考えると楽しくなるんです」の「なるんです」の部分を引き伸ばして繰り返す、曽我部恵一BANDのライブでよくやっていたあのパフォーマンスを挟んで、「1、2、3、4!」でサビに雪崩れ込んでいく。「聴かしてくれ、みんな!」と観客を煽り、シンガロングはこの日最大音量に達した。