Ray Of Light
鮮やかな初作で世界的に脚光を浴びたニア・アーカイヴスが、待望のセカンド・アルバム『Emotional Junglist』を完成! よりパーソナルな面を掘り下げて生まれた感情豊かな音世界は進化したビートと共に次代へのステップを切り拓く!

NIA ARCHIVES 『Emotional Junglist』 Hijinxx/Island(2026)

ダンス・ミュージックの向こう側にある心地良さ

 ジャングル一色で貫いたファースト・アルバム『Silence Is Loud』でみずからのマニフェストを表明し、このジャンルを新たなステージへと押し上げたポップ・アイコン、ニア・アーカイヴスによる2年ぶり2作目もやはりジャングル尽くし。今作ではズバリ〈愛〉をテーマに各トラックにその感情の断片を刻み込みながら、音楽的には90年代から続くオーソドックスなものを下敷きにし、瑞々しいインディー・ポップ調のメロディーや昂揚感溢れるエレクトロのビート、あるいはシンガー・ソングライターの内省的なリリックにインスパイアされたオルタナティヴ・ジャングルを展開している。鋭利なビートが突き刺さる“Danger”、ドリーミーなシンセが浮遊感を演出する“Vertical”、ジョルジャ・スミスのゆったりとした歌唱がかつてのトリップ・ホップを彷彿させる“Get Me Down”、サンファによるピアノの音色と透き通ったヴォーカルが穏やかなエッセンスを加えた“Tender”、そして最高の盛り上がりで駆け抜けるエンディング曲“Boys In Blue”など、百花繚乱。安定したシンコペーション・ビートと重厚なベースラインに身を委ねていると、ダンス・ミュージックであることを通り越して、やがて何とも言えない心地良さが押し寄せてくる。 *藤堂輝家

 

自身の世界を拡張する姿勢

 2020年代におけるドラムンベース・リヴァイヴァルの流れをピンクパンサレスらと共に作ってきたニア・アーカイヴス。前作『Silence Is Loud』ではジャングル/ドラムンベースとブリットポップ的なフレイヴァーの融合に取り組んでみせたが、2年ぶりに届いたニュー・アルバム『Emotional Junglist』においても引き続きイーサンP・フリンと組み、さらには多くの曲でジェイムズ・フォードも共同プロデューサーに迎えて、自身が生まれる前の英国ポップ感覚を己のヴィジョンに引き寄せながら独自の音楽性を拡張している。本人いわくアルバムに影響を与えたものは、マドンナの『Ray Of Light』をはじめ、ブラー、パルプ、セント・エティエンヌ、マッシヴ・アタックといった先人たちだそうだが、UKで特にヒットした『Ray Of Light』のポップさの塩梅を照らし合わせて見ればどことなくわかる気もする(ウィリアム・オービットに哀悼の意を)。楽曲のスタイルはある世代の多くのアーティストがスタイルを問わずインディー・ポップ感覚とR&Bテイストを折衷した歌モノをやっているため、そのあたりの悪くなさを積極的におもしろいとは感じないものの、自身のパーソナルなストーリーを多彩なスタイルで表現する姿勢は全体的に好ましく映る。ジャクウォブとサシで手掛けたオープニングの“Feelingz Go Numb”や、もともとリアーナのために書かれていたというソリッドな“Danger”などワクワクするような楽曲が揃った佳作だ。 *轟ひろみ