夕暮れにはDJの音楽に身を委ね、夜はホテルで余韻を楽しみ、翌朝はコーヒーとともにダウンテンポを聴く。2026年10月3~4日、葉山うみのホテルで開催された〈umi conexión Hayamatic! 2026〉。初の宿泊型となった今回は、海辺で寛ぐ時間と音楽が自然につながる2日間となった。小泉今日子『Fade Out Remixes』のリリースパーティも兼ねたイベントの模様を編集者/ライター佐野郷子にレポートしてもらった。 *Mikiki編集部

絶好のロケーションで心地よい音と空間を提供する宿泊型イベント
宿泊型音楽イベント〈umi conexión Hayamatic! 2026〉が2026年10月3〜4日にかけて神奈川・葉山うみのホテルで開催された。

10月3日、長雨が続いた天候から久しぶりに好天に恵まれた当日、東京から小一時間で海沿いの街特有の穏やかな空気が流れる葉山に到着。夏は多くの人が訪れる三浦半島屈指のスポットだが、10月は観光客も少なく、体感的にも心地よい季節。イベントが開催されるのは、海と富士山を望む絶好のロケーションの葉山うみのホテル。グッドデザイン賞受賞のホテルは、吹き抜けの開放的なロビーラウンジと海を望む大きな窓が特徴で、ソファやテラスでゆったり過ごせる空間は、音楽に身を委ねるのに最適。都心から約1時間という距離で日常から離れた海辺の時間を楽しめる。
この場所で、〈Hayamatic!〉が開催されるようになったのは2022年。国内外の音楽とアートを多彩に展開するU/M/A/Aが主宰し、これまでもアンビエントでグルーヴィーな音と空間を提供してきた。6回目となる今年は、初の宿泊とセットのイベントとして10月3日の午後3時からスタートした。


ステージが設置されているのはホテルのロビーにあたる1階のSAND BAR。バーではドリンクやフードも提供され、ラウンジでゆっくり寛ぐこともできる。フロアで踊ったり、座って音に耳を傾けたり、食事や会話を楽しんだり。その時々の気分で過ごし方を選べる自由さが、ホテルを舞台にした〈Hayamatic!〉の魅力だ。
ステージではHideo KobayashiとJay ZimmermannによるHayamatic! OrchestraがDJプレイで午後のまどろむ時間を温めていく。ホテルのチェックインを済ませた客、1 dayチケットで近郊から来た人、毎年このイベントを楽しみに遊びに来る常連などがじょじょに集まってくる。

カワムラユキの軽快なDJとChris Cocoによる極上のバレアリック&チル
バレアリックDJ/プロデューサーとして活躍するYuki Kawamura aka Venusも〈Hayamatic!〉には欠かせないDJだ。この日、リリースパーティが同時開催される小泉今日子『Fade Out Remixes』のA&Rも務めた彼女の軽快なプレイで心身を週末仕様にほぐしながら、杯を重ねていく人多数。


海の彼方に夕陽が沈む時間に差しかかる頃、ステージに登場したのが世界のバレアリック/チルアウトシーンを牽引してきたChris Coco。イビサ島の〈Café Del Mar〉の歴代レジデント DJとして知られる彼は、〈Hayamatic!〉初出演となる。イベントの主旨である〈バレアリックスタイル〉を、この環境で彼のプレイと共に体感してほしいというのが招聘の理由だ。ここでは気持ちよく音楽に浸るチルアウトという体験を本場のDJで満喫できる極上の時間を享受。オンとオフの切り替えが苦手な私たちも、居心地のよい場所とトップクラスのDJの生み出すマジックに耽溺。しかもまだ宵の口というのが嬉しい。

小泉今日子イン・ザ・ハウス! 近田春夫や高木完が日本のクラブ史を体現
近田春夫とOMBによるユニット、LUNASUNは昨年に続いての出演だが、
今回は近田春夫が作詞・作曲を手がけた小泉今日子“Fade Out”の『Fade Out Remixes』が9月30日にリリースされたばかり。20数年来のキャリアを誇るLUNASUNの息の合ったプレイがしばらく続いた後、LUNASUN Remixの“Fade Out”が大音量で流れる。グルーヴィーかつディープこの上ないリミックスをライブで聴ける至福もさることながら、ステージには突然、小泉今日子がサプライズ登場したのだから盛り上がらないはずはない。
歌唱こそなかったものの近田の横で観客を煽り、笑顔で踊る姿に「カッケー!」と歓声が起こり、近田も「コイズミ・イン・ザ・ハウス!」とさらに煽る。近田と長年親交の深い小泉が休業中にもかかわらず葉山まで駆け付け、まさにリリース記念にふさわしい特別な夜となった。


LUNASUNに続いて登場したK.U.D.O(工藤昌之)と高木完によるMAJOR FORCE PRODUCTIONSは、昨年から本格的に活動を再開し、最近は〈WORLD HAPPINESS 2026〉などライブも積極的に行っているせいか冒頭からキレキレのステージを展開。日本のクラブカルチャーの礎を築いたMAJOR FORCEレーベルの1988年の設立メンバーの2人が今も現場でクラバーを熱くするパフォーマンスを魅せてくれるのは何とも頼もしい。彼らと共にMAJOR FORCEを興した中西俊夫が在籍していたプラスチックスの“TOP SECRET MAN”のカヴァーでもフロアを賑わせたことも記しておきたい。

U/M/A/Aの若手たちが新感覚を鳴らし、ラストはB2Bへ
夜も更けた時間帯には、U/M/A/A Sound System(Wang One, heykazma, hiko fukuda from hobnob, DjuBumba)という若手アーティストたちが交代でステージを務めた。中国出身のWang One、2010年生まれのheykazma、オーディオビジュアルトリオhobnobのhiko fukudaらが意気揚々と繰り出すオルタナティブな新しい感覚のダンスミュージックを自由で開放的な空間で聴くのも刺激的な経験だった。

ラストのB2B(バック・トゥ・バック)が終わったのは21時すぎ。夜遊びに慣れた人にはまだ早い時間だが、宿泊客は富士山を望む温泉に入るもよし、部屋で音楽の余韻に浸るのもよし。帰りの電車を気にせずにゆっくりできるのが宿泊型の最大のメリットなのだから。

ここはイビサ? コーヒーや朝食とともにモーニングセッションを楽しむ
10月4日は、なんと朝の7時からDJによる〈Morning Listening Session〉がスタート! 宿泊客は昨晩ダンスフロアだった場所で、モーニングコーヒーや朝食を頂きながら、朝からダウンテンポな音楽が聴けるというこのイベントならではの贅沢を味わう。まさに「イビサ島か、ここは?」の境地である。
慌ただしい日常を忘れ、心ゆくまで音楽を堪能し、自然豊かな風土の中で心も体も解きほぐれてゆくようだった2026年の〈Hayamatic!〉は、午前10時に幕を閉じた。夕暮れに踊り、ホテルで寛ぎ、朝の音楽を楽しむ。過ごしやすい秋の葉山で、音楽と旅を一緒に味わう2日間。次回もまたこの場所で音楽に出会いたいと感じるイベントだった。