常に日本のロック・シーンを挑発してきた4人が、自身のカウンター精神を黒いグルーヴに託したロックンロール・アルバム!!
WHITE ASHというバンドに対して、その曲調や発言から、挑発的で不遜なイメージを持っている人も多いかと思うが、僕は基本的に彼らはとても生真面目なバンドだと思っている。海外のロックを愛し、同時に日本のバンドであることに非常に自覚的だからこそ、いち早く(特に若手のロック・バンドに顕著だった)4つ打ちブームに対して懐疑的な視点を持ち、前作『Ciao, Fake Kings』ではわざわざジャケットで『Nevermind』を模してオルタナティヴなロックを追及しつつ、同時にさまざまなアレンジにもトライしてみせた。そう考えれば、海外においてR&Bがより多様な音楽シーンに溶け込み、例えば近年の代表ならファレルが(関与したダフト・パンクらの諸作や自身のオリジナル作『G I R L』を通じて)ファンクやディスコといった長期的なトレンドを改めて印象付けたいま、彼らが縦ノリではなく横揺れを重視したような先行シングル“Hopes Bright”を経て、より〈ブラック・ミュージック〉に接近したグルーヴィーなニュー・アルバム『THE DARK BLACK GROOVE』を完成させたのは、必然の流れだったようにも思う。
実際に本作はヒップホップやR&Bに大きくインスパイアされたであろう楽曲が並んでいて、オープニングの“Orpheus”はクイーン“We Will Rock You”をヒップホップ的に解釈したようなスケールの大きな曲だし、“King With The Bass”は曲名通りにファットなベースが先導し、クール&ムーディーなコーラスも含めてかなりR&B寄り。ここにはいまの日本のロック・シーンに対するアンチテーゼが含まれていると言っていいと思うが、初期の彼らの大きな影響源であったアークティック・モンキーズは、そもそもソウルやヒップホップ的な要素も内包するバンドだったので、そこに対する憧れは以前から持っていたはず。また、同時代のバンドで言えば、スケール感や扇動的な雰囲気も含め、カサビアンあたりが直接的な参照点になっているかもしれない。この2バンドのように、海外では作品ごとに大きく作風を変えるバンドも多いが、いまの日本にそういうバンドは少ないので、その意味でも、WHITE ASHの特異性は今作でさらに際立つように思う。
もちろん、アルバムにはさらに多彩な曲調が収められていて、中盤ではシンプルなアレンジでグッド・メロディーに対する信頼を覗かせ、後半ではシャッフルやブレイクビーツなど、より多彩なリズム・パターンを披露しつつ、ラストはストリングスを用いたバラードでのび太(ヴォーカル/ギター)が艶の増した歌を聴かせてくれる。そのうえで、本作が11曲30分超というコンパクトな尺で仕上げられているのは、本作があくまでロックンロールのアルバムだということを意識してのものだろう。そう、“Just Give Me The Rock‘N’Roll Music”という曲もあるように、結局は今作もこれまで同様、あくまでWHITE ASHがいま鳴らすべきロックンロールを追及したアルバムであることに変わりはないのだ。やはり、どこまでも実直なバンドである。
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ここではWHITE ASHの作品を一部紹介します。2010年にアマチュア・バンド・コンテストで優勝し、同年夏に〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉に出演。その後、初のミニ作『On The Other Hand, The Russia is…』を発表すると、続く翌年は2枚目のミニ作『WALTZ WITH VALKYRIE』を送り出した直後にオーディションを勝ち抜き、〈サマソニ〉に出演。そして、2012年にはグルーヴィーなロック・サウンドで挑発する初フル作『Quit or Quiet』を上梓します。その快進撃は止まらず、2013年にはシングル“Velocity”でメジャー進出すると、同年末にバンドのカウンター精神が如実に表れた2枚目のフル作『Ciao, Fake Kings』をリリース。その姿勢はもちろん新作にも引き継がれています。 *bounce編集部