これまでの経験をフル活用したうえで、より高い次元へ――アニメの世界観を体現するというQuestの果てに見い出した、4人のブレない個性と新たな魅力とは?

 

良さの精査と凝縮

WHITE ASH Quest バップ(2016)

 今年3月に4枚目のフル・アルバムとなる『SPADE 3』を発表したWHITE ASHが、わずか5か月というハイペースでサード・ミニ・アルバム『Quest』を完成させた。スマホ用のアクションRPGアプリ「モンスターストライク」とそのウェブアニメ版、そしてフィジカルな大会〈モンストグランプリ 2016 チャンピオンシップ〉ともコラボした本作は、バンドにとっての未知のチャレンジを通じて、彼らの〈ブレない個性〉と〈新たな魅力〉を示した一枚となっている。

「『SPADE 3』のレコーディング中にアニメのエンディング・テーマのお話をいただいたので、アルバムと同時進行で曲作りをしてたんですよ。最初は1曲だと思っていたら、その後も嬉しいことに追加で5、6曲もエンディング・テーマと〈モンストグランプリ〉の大会テーマ・ソングまで担当させてもらえることになって、それなら〈モンスターストライク〉縛りでミニ・アルバムを出しちゃおうと」(のび太、ヴォーカル/ギター)。

 アニメとのタイアップということで、今回は曲作りも従来とは違う方法で行われた。それもバンドに刺激をもたらし、プラスに働いたようだ。

「〈モンスト〉の音楽担当の方とコンセプトからじっくりと話し合い、曲を作ったんですよ。しかもその担当の方は僕らのことを好きで、音源も聴き込んでくれていて、僕らが(アニメに)寄りすぎると、もう少し〈らしさ〉を出してくださいって言われることもあったり(笑)。ただ、今回は1曲1曲の目的が明確だったので、ある意味やりやすかったですね」(のび太)。

「最初は担当の方からどんなリクエストをされるんだろうと思いましたけど、肩の力を抜いて、良い関係性で制作できました。曲作りは主観的になりがちだけど、第三者の目線で良いアドヴァイスをもらえて。なので、今回はWHITE ASHの良いところを精査して、凝縮できたと思います」(彩、ベース)。

〈WHITE ASHらしさ〉という意味では、今作は過去の経験値もフル活用したうえで、さらに高い次元のハードル超えを求められることもあったという。

「制作の時期が『SPADE 3』のツアーの合間だったので、パツパツの作業だったんですよね。ただ“Drop”の打ち込みっぽいニュアンスは以前の『THE DARK BLACK GROOVE』(2015年)でやってたし、“Monster”と“Strike”は“Blaze”(『SPADE 3』の収録曲)の感じかなっていうのがあったので、技術面は大丈夫だったんですけど、ただ、レコーディングの現場で二転三転することもあったので、それに対応するのが大変でした。ソロっぽいことをやってほしいと言われて、その場で1時間ぐらい考えて、急遽変えたパートもありましたからね」(剛、ドラムス)。

 ここで〈今回でもっとも大変だった曲は?〉と尋ねると、のび太は冒頭を飾る“Monster”を真っ先に挙げた。ヘヴィーなリフを用いた衝動剥き出しのロック・チューンで、この曲は〈モンストグランプリ〉のイメージ・ソングになっている。

「2、3曲ぐらい曲を作ったけど、担当の方から良い反応を得られなくて、〈違うアプローチでいきましょうか?〉と言われたんですよ。それが凄く悔しくて。で、〈もう1回チャンスが欲しい〉と。〈当初の方向性で渾身のものを作るので、それがダメだったら、違うアプローチで作ります〉と。それでバッチリな曲が出来ました」(のび太)。

「大会のテーマ・ソングだから、〈仲間〉〈闘い〉〈青春感〉みたいなものを踏まえてほしいと言われて。それで、僕はその〈青春感〉から、甲子園の映像をずっと観ながらフレーズを考えましたからね」(山さん、ギター)。

 

新たな扉を開いた

 さらに、それとはまた違う課題と向き合った楽曲もある。“Strike”と“Knock On Doors In You”は、〈モンスト〉のBGMとして流れる代表的なメロディーを組み込んだサウンド作りにトライ。特に前者はスケール感のある爽快な曲調に仕上がった。

「〈モンスト〉のBGMは〈パターンA〉と〈パターンB〉があって、それの繰り返しなんですよ。〈パターンA〉をサビに、〈パターンB〉をAメロに使って、〈パターンB〉ではCメロまで作るという。“Strike”のCメロは景色が広がるような感じに出来ました。アニメに寄せながら、バンドらしさも出す。そのバランスは上手くいったと思います」(のび太)。

 そして、新たな書き下ろしとして収録された“Mad T.Party(1865-2016)”は、山さんの個性が際立つサイケ調のギター・ソロを入れ、楽曲の持つ雰囲気を一段と高めることに成功している。

「あのギター・ソロは初めて即興で弾いたんですよ。〈カオス感、妖しさとか、そういう雰囲気のソロを弾いて〉と言われて。結果的にエンジニアさんからも、〈こんなギター・ソロ、一生に一度弾けるかどうかだよ〉って言われましたね」(山さん)。

 ほかにも、聴きながらニヤッとしてしまう遊び心溢れるフレーズも挿入されている。“Drop”に登場する〈頭に響くイカしたKeith Moon〉という歌詞では、まさにザ・フーのキース・ムーン風のフレーズが突如耳に飛び込んでくる。

「TVサイズだと1番だけ使うので、2番は好きにやろうと。で、剛に〈キース・ムーンみたいなドラムをやってよ〉って(笑)。一瞬だけ激しいフィルインがあったら、〈おおっ!〉となるだろうなと。あと、今回は時間がなかったので、曲作りと歌詞を書くのが同時進行だったんですよ。それで歌詞とサウンドを上手くリンクさせることができました」(のび太)。

 今作のラストを締めるバラード“Rove”はメンバーお気に入りの楽曲。ド頭から轟音で攻めながら、じっくり聴かせるテンポ感が新鮮に響く。

「ああいう曲だと、ベースも落ち着いた音色にするのが普通だと思うけど、あえてバリバリの音色にしたんですよ。それを担当の方から良いと言ってもらえたのが嬉しかったですね」(彩)。

「この曲は新たな扉を開いた感じですね。ここまでがっつりテンポを落としたラヴソングも、そのうえで日本語というのも初めてで。ギターの壁みたいな曲だけど、イントロの山さんのフレーズもエモいし、今回のなかではいちばん好きな曲ですね」(のび太)。

 アニメの世界観に寄り添うことで、さらにタフになったWHITE ASH。『Quest』は、その新たなオリジナリティーを堪能できる好盤と言えるだろう。

 

WHITE ASHのこれまでのQuest

 2006年に結成し、2008年より本格始動したWHITE ASHの初のリリースは、2010年のミニ・アルバム『On The Other Hand, The Russia Is...』。初期アークティック・モンキーズを想起させる挑発的なギター・サウンドと特徴的な発語のヴォーカリゼーションで、のっけから日本人離れした個性を発揮している。2011年には2枚目のミニ作『WALTZ WITH VALKYRIE』を発表。危うい性急さで転がる前作の延長線上にあるナンバーから、アコギ1本の弾き語り曲までと音楽性の幅を拡張すると、2012年には初のフル・アルバム『Quit or Quiet』を上梓する。ここで不敵な色気を持つダンス・ロックのひとつの集大成を築き、2013年にはシングル“Velocity”でメジャー・デビュー。同年のうちに届いたアルバム『Ciao, Fake Kings』ではラテン・ムードの楽曲や聖歌のようなコーラスを挿入したラヴソングといった新たな方向性も提示してみせた。

2013年のシングル“Velocity”
 

 2014年に入ると、まずは2月のthe pillowsのトリビュート盤『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』にバンド名の由来である“White Ash”のカヴァーで駆け付け、翌月にはヒップホップ以降のビート感覚やある種の黒い意匠を採り込んだ3作目『THE DARK BLACK GROOVE』をリリース。2016年は、1月にブルーハーツのリミックス&カヴァー集『THE BLUE HEARTS re-mix re-spect』で甲本ヒロトのバックをWHITE ASHが務めたような“スクラップ”を披露すると、3月には4枚目のアルバム『SPADE 3』が登場。〈ロック・バンドの衝動〉に立ち返って重く太いアンサンブルを繰り出すなか、チェロをフィーチャーしたソフト・サイケなミディアムなどの新味も。また、今回のニュー・ミニ・アルバム『Quest』の前にはディズニー楽曲のロック・カヴァー集『ROCK IN DISNEY ~Season Of The Beat』も控えており、ここでは“If You Can Dream”へのアプローチを耳にすることができる。 *土田真弓

『SPADE 3』収録曲“Blaze”