そもそもの名を再度襲名して心機一転! どこを取っても実体験、彼そのものである〈あい〉の〈ことば〉に忍ばせたメッセージとは?
昨年8月に自身のソロ・プロジェクトであったLGMonkeesの〈解散〉を発表し、本来のアーティスト名に戻して再始動した山猿。今年1月にデジタル・リリースされた“カジカ”が配信チャートで1位を獲得し、2月には〈あらためまして山猿です!! 「襲名披露」ツアー2015〉を開催するなど、彼はLGM時代以上の快調なアクションを見せている。
「僕はもともと〈山猿〉として活動していて、デビューのタイミングで〈君、今日からLGMonkeesだから〉って言われただけなんで(笑)、今回の改名で元に戻った感覚ですね。ファンも〈お帰り!〉みたいな感じだし、違和感は全然ないです。むしろ山猿に戻したことで、生き生きと音楽をやれてるんですよ。音楽を初めてちょうど10年なんですけど、いいタイミングでリスタートできたんじゃないかな、と」。
今回届けられたセカンド・アルバム『あいことば 2』にも、現在の彼の状態の良さが反映されている。まず印象に残るのは、生楽器を中心にしたオーガニックな手触りのサウンドメイクだ。
「いままでは打ち込みの制作スタイルが多かったんですけど、今回は生楽器が増えてますね。最近、ミュージシャンの知り合いが増えたんですよね。ライヴでもAqua Timezのmayukoさんにキーボードを弾いてもらったり、ダイスケと一緒にやったり。いろんなミュージシャンと関わることで、音楽の視野も広がってきましたね」。
だが、本作の軸になっているのはもちろん、「180%実体験(笑)。曲を聴けば、僕という人間がわかると思います」というリリックだ。卒業シーズンの情景、そのなかで感じた切ない思いを綴る“桜色の記憶...”、〈正しいと思うことをやれる男であれ〉というメッセージが伝わる“正直者はバカをみる!”、お酒の楽しさをテーマにした盛り上げソング“アルコール”、そして、〈AIR JAM〉をきっかけに、夢を持てなかった少年=山猿が音楽と出会い、ミュージシャンをめざして歩みはじめるストーリーを描いた“4Life”。普段の生活や考え方、人生観と歌詞がここまで密接に関わっているアーティストは、本当に稀だと思う。
「地元(福島県会津若松市)で友達と遊んだり、大切な人と過ごす時間だったり。そこで感じることをそのまま言葉にしてるんですよね。悩みがあったり、相談を受けたことも歌詞に繋がる。人に感情というものがある限り、一生、題材に困ることはないと思います」。
山猿の代表曲として知られる“3090~愛のうた~”も〈Orchestra Version〉として再録。父への思いを真っ直ぐに歌ったこの曲は、彼自身のなかでも少しずつ変化しているという。
「もともとは育ててくれた親父に向けた〈ありがとう〉の歌なんですけど、最近はライヴで歌ってるときも〈親父みたいな男になりたい〉と思うようになって。お客さんからも〈歌い方が優しくなった〉と言われるし、このタイミングで録り直してみたいと思ったんですよね。そういう自然な変化もいいなって思います」。
7月下旬からは全国ツアー〈あいことばは生猿です!! Tour2015~夏の陣~〉がスタート。他者との関わりを重視する山猿にとって、ライヴは欠かすことのできない場所だという。
「目と目を合わせて曲を伝えることがいちばん大事だと思ってるので。支えてくれる人たちと一体になれるようなライヴをやっていきたいですね」。
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ここでは山猿の作品を紹介します。LGYankeesやNoaをはじめ、NO DOUBT TRACKSの所属アクトの作品に客演を重ねた彼は、Dragon Ash“Grateful Days”のカヴァーを含むミニ・アルバム『LGMonkees』で2010年にライヴ以外では素顔を見せないという謎のアーティス ト=LGMonkeesとしてメジャー・デビュー。翌2011年3月には正体を明かしたうえで2枚目のミニ作『前回のLGMonkeesこと山猿です。』を上梓すると、10月には同年の東日本大震災で被災した体験を元に〈愛〉〈絆〉〈勇気〉をテーマにしたシングル“3090~愛のうた~” を発表します。そして、2012年にはそれまでの代表曲も網羅した初フル・アルバム『あいことば』をリリース。その後は2014年に LGYankeesの〈解散〉を表明/山猿としての再始動を表明すると、そこから12週連続の配信企画を敢行。それらの楽曲も収録された新作には、一貫し た〈愛〉の〈言葉〉が詰め込まれています。 *bounce編集部