ODD FUTURE 2015
クルーの2大エースから新作が連続リリース

 ジェイ・Zビヨンセといったビッグ・ネームの作品に参加するほどの存在となったフランク・オーシャンを筆頭に、シド・ザ・キッドらによるインターネットメロウハイプメロウハイといったユニットも含め、メンバー個々が時流を無視して自由に活動しているLAのコレクティヴ、オッド・フューチャー。そこから中心人物であるタイラー・ザ・クリエイターアール・スウェットシャツがほぼ同時期にソロ作をリリースした。

TYLER,THE CREATOR Cherry Bomb Odd Future/ソニー(2015)

 まず、フェイヴァリットであるN.E.R.D.の“Lapdance”を下敷きにした“DEATHCAMP”で幕を開けるタイラーの『Cherry Bomb』は、同曲やタイトル・トラックなどのノイジーなロック・サウンドに振り切った路線から、そのN.E.R.D.のファレル・ウィリアムズを招いた“Keep Da O's”にカニエリル・ウェイン参加の“Smuckers”、スクールボーイQ参加の“Run”といったオーソドックスな(?)ヒップホップ・ファンの食指も動かすであろう楽曲群、心地良いチル・チューン“Find Your Wings”や先行公開されたビデオも最高だった“Fucking Young”あたりの歌心を感じさせるソウルフルなミディアム~メロウ系まで、これまでの作品と同じく雑多な嗜好がカオティックに混在していて最高だ。

 

 

EARL SWEATSHIRT I Don't Like Shit, I Don't Go Outside Tan Cressida/Columbia(2015)

 一方、ケンドリック・ラマーエイサップ・ロッキーらがいまもっとも注目する存在としてその名を上げるクルー最年少メンバー、アールの『I Don't Like Shit, I Don't Go Outside』はタイラーの新作、また自身の前作とも比べると参加ゲストを最小限に抑え、ダークで内省的なムード。ドラッグのネタが多いせいかアールの飄々としたキャラクターゆえか、サイケデリックな鍵盤の音色が印象的なオープニングの“Huey”から聴き進めるにつれてズブズブとディープな世界観に引き込まれていき、(元)エイサップ・モブダッシュ参加の“Grown Ups”やラットキングウィキをフィーチャーした“AM//Radio”あたりのドープなスロウを頂点にグッド・トリップしていく感覚に……こちらも最高。一時噂されたタイラーとアールのユニット、アールウルフとしての作品も気長に待つとしよう。