DILLANTHOLOGY
【緊急ワイド】最後のディラ特集
その最期から10年。J・ディラの残した音楽とその影響力はいまもなお大きくなるばかりだ。そして、長年存在を知られてきた未発表の一作もいよいよ世に出される時が来た。神話や幻想を越えたずっと先にある快感の正体とは……
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Dillatency
ディラのエッセンスが潜在する人と作品
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ディラの導きでビートメイクも始め、スラム・ヴィレッジやエリカ・バドゥらを手掛けてきたジャズ・ドラマーの初ソロ作。長短のインストが34曲並べられたビート・アルバムで、ストーンズ・スロウ産ということも踏まえればこれはまさに『Donuts』へのオマージュと言えるだろう。
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ミックステープ『1999』の頃からディラをビートジャックしていた悪童。この正規アルバムでは、ついにオリジナルのディラ・ビーツを授かり、ルーツも手を加えた“Like Me”として披露している。ノレッジやサムアイアムといったディラっ子が並んでいる様子も興味深い。
気鋭ジャズ・ドラマーのジャマイア・ウィリアムズが率いるユニット。今作ではディラ“Nothing Like This”を取り上げて世代感をスマートに提示。ただ、ヴィセンテ・アーチャーやコーリー・キング、クリス・ターナーら顔役が振り撒くカッコ良さはそこに止まらない。
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ディラの愛弟子(?)としてジェイリブ作品などに抜擢され、デトロイトとLAをゴリゴリ跨いできた豪腕ラッパー。今作は表題通りマッドリブの全面制作で、この後にはアポロ・ブラウンやクエイカーズとも合体。完璧なビートを求める姿は師を超える音を探すようでもあり……。
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日本のJ・ディラ・チルドレン筆頭? ソロ初作をドーナツ状の構成に仕上げていた彼だが、ポリリズミックなビート捌きの美と乱調にモロな影響の大きさを窺わせる部分も当然ありながら、本作では特殊ジャケのこだわりからしてオマージュを捧げている。
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日本のジェイ・ディー・チルドレン筆頭? 本作はジェイの仕事に刺激を受けてクリエイションに励んできた男なりの、そのスピリットを表現したインスト集になっている。具体的なオマージュやカヴァーじゃなくても、甘いドーナツの栄養は一音一音に宿っているはず。
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デビュー作~スラム・ヴィレッジ~ヤンシー・ボーイズ……と兄の七光り的な見られ方も厭わずに奮闘してきた彼だが、この近作ではポテトヘッド・ピープルやケイトラナダなどの次世代クリエイターと肩を組み、独自路線のメロウネス探求へ。グラスパーとのコラボも楽しみだ。
必然的にディラゆかりの顔ぶれと組むことも多いエクスペリメントでの諸作があったのも、ディラの留守電メッセージで始まり、コモン&スラム・ヴィレッジの“Thelonius”を奏でる“J Dillalude”の存在が、以降の彼を自由にしたから。そのうち本当に共演も実現しそうだ。
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もうその言葉で括るのもおかしな感じではあるが……本作を出す前後、プラグ・リサーチ軍団やLAビート・シーンからアタマ一つ抜けた頃の彼は〈ポスト・ディラ〉の最右翼と目される存在でもあった。実験的なビートを包むファンタスティックな空間処理はいまも鮮烈。
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BR・ガンナ時代にスタジオで学んだディラ直系の後継者で、ヤングRJと袂を分かってからも先輩の遺志を受けてカルトロイト道を進んできた敏腕プロデューサー/ラッパー。ブルーやピート・ロックを迎えた本作も先達の……とか思ってたら5月には新作が届く模様!
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同郷デトロイトでまた別の宇宙へ潜ってきた不機嫌なヴェテラン。主宰するマホガニー・ミュージックからはDJディズことアンドレスをデビューさせたり、ディラの謎なアナログ『Lost Tapes Reels + More』を出したり、ボーダレスな感覚で交信しているような様子もある。
安定した人気を誇るUSジャズ・ファンク界のスーパー・バンド。本作はこの頁でも推薦したいもので、ドゥウェレが歌っているほか、トリビュート曲の“Mr. Yancey”がボーナス収録。プロデュース隊としてディラとトラックを共作したこともある彼らならではの出来だ。
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オーストラリアのタークーと日本在住のREPEAT PATTERNが推進するビート・コレクティヴのコンピ。日本のYagiなど世界各国の才能がJ・ディラ以降の個性を持ち寄り、かつて〈Beat Dimension〉が多くの顔役を輩出したように、ここにも新たな未来が詰まっているはず。