メチャクチャ過激で、メチャクチャ重い! 往時よりもパワーアップして帰ってきたぜ!!
90年代前半のオルタナ・ロック・シーンにおける新しい波を象徴したバンドのひとつが、フェイス・ノー・モア(以下:FNM)だ。ヘヴィーなギターと荘厳なシンセサイザー、そして時にエキセントリックで、時にメロディアスなマイク・パットンの歌をフィーチャーしたそのサウンドは、絶大な支持を獲得。なかでも3作目『The Real Thing』(89年)、4作目『Angel Dust』(92年)などのヒット・アルバムは今日に至るまで聴き継がれてきた。98年にバンドは解散するが、彼らの残した音楽は輝きを失うことなく、2009年に再結成が実現。このたび約18年ぶりのニュー・アルバム『Sol Invictus』がリリースされるに至った。
マイク・ボーディン(ドラムス)が「ダークでパワフル、エモーショナルでシアトリカル」と表現する本作では、ファンの待ち望んでいたFNMサウンドが満載。バンドの暗黒面をロディ・ボッタムのピアノが表現する表題曲で幕を開け、今年2月の来日公演でもハイライトのひとつとなった2曲目“Superhero”には、オルタナティヴ・メタル/エクスペリメンタル・ロック集団としてのありったけの狂気と混沌が込められている。そして、ビル・グールド(ベース)がスージー&ザ・バンシーズを引き合いに出す“Matador”などを経て、メランコリックな調べが余韻を残す“From The Dead”でフィナーレへ。そんな本作は、FNMが2015年のロック・シーンに叩き付ける完全復活宣言と言えよう。
マイク・パットンの変幻自在なヴォーカルも、このアルバムを新たな高みに押し上げている。バンド解散後、彼はビョークやエクセキューショナーズ、ケミスツらとの共演に加え、メルヴィンズやスレイヤーの面々と結成したファントマス、ジーザス・リザードのメンバーらと組んだトマホーク、さらに50~60年代のイタリアン・ポップをカヴァーしたソロ作『Mondo Cane』など、さまざまなプロジェクトに関与してきたのだが、その経験すべてをここから感じ取ることが可能。『Sol Invictus』は時代を超えた〈信念〉の賜物なのだ。