全国のタワーレコードのスタッフが、己の〈耳〉と〈直感〉だけを基準に世間で話題になる前のアーティストの作品をピックアップし、全店的なプッシュへと繋げる企画〈タワレコメン〉。これまで、相対性理論神聖かまってちゃんクリープハイプceroKANA-BOON、洋楽ではストライプスチャーチズといった現行シーンの最前線で活躍するアクトをいち早く発掘しており、現在は月1回のペースでオススメ・アイテムを紹介しています。Mikikiでは、そんなタワレコメンの選定会議に潜入し、作品の魅力を視聴コンテンツと共にお伝えする特集を連載中! 今回は6月度の洋楽編です!!

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タワーレコードの本社にて行われるタワレコメンの会議。今回も音楽通のスタッフたちが〈これぞ!〉というオススメ作品を持ち寄り、タワレコメンの狭き門を通過するための熱いプレゼンを繰り広げました。何百タイトルという新譜のなかから候補作に挙がったのは……!?

近年ではFKAツイッグスを筆頭に、新人発掘の〈アタリ〉率は他の追随を許さないXLが新たにサインしたラスヴェガス出身のシンガー・ソングライター、シャミールの初アルバム『Ratchet』がカッコよすぎて会議は滑り出しから絶好調! ハウスもヒップホップもR&Bもジャズも楽々と乗りこなす野性味溢れるヴォーカルと、ヒップなヴィシュアルのコンビネーションは、一聴&一見して〈ヤバい〉とわかる強烈な個性を持っています。Pitchforkはじめ音楽メディアからの視線もアツい大注目の一枚!

 

昂るスタッフたちの気持ちを鎮める天使のような歌声を響かせたのは、アイルランドはデリー育ちのシンガー・ソングライター、ブライディ・マーンズ・ワトソンによるプロジェクト=ソークのファースト・アルバム『Before We Forgot How To Dream』。UKではロードに続く存在として期待されているという彼女ですが、柔らかなアンビエンスが簡素なアコーステック・ギターを優しく包み込むなか、讃美歌のようなイノセンスを感じさせる声の魅力が圧倒的。キーは違えど、キャット・パワーあたりに通じるしなやかさも持っているし……名門ラフ・トレードが惚れ込んだのにも納得です。

 

ONE OK ROCKTakaが参加している“Dreaming Alone”がすごくいい曲!」という殺し文句(?)で紹介されたのは、NYを拠点に活動する新鋭バンド、アゲインスト・ザ・カレントフェルド・バイ・ラーメンから放つプレ・デビュー盤『Gravity』。クリッシー・コスタンザという紅一点&激カワなヴォーカリストを擁するトリオということで〈ネクスト・パラモア〉と称されることもある彼ら。エモパワー・ポップをベースに、バラードもしっかりこなす抜群の安定感は新人離れしていると評判です。国内盤にはLINDBERG“今すぐKiss Me”などの邦楽カヴァーも収録されているので、日本でも人気が出そう!

 

続いて、Apple WatchのCMに使用されたキラー・チューン“Running Behind”で一躍脚光を集めたLAの男女デュオ=ホーリーチャイルドのデビュー・アルバム『The Shape Of Brat Pop To Come』が登場。フェニックスマムフォード&サンズのレーベル・メイトでもある彼らですが、メンバーのルイス・ディラーはキューバでドラミング学んだ本格派で、アルバム・タイトルに自分たちが提唱するジャンル〈ブラット・ポップ〉をオーネット・コールマンの名盤にひっかけて使った(?)センスからもわかる通り、“Running Behind”だけでは俯瞰できないウェルメイドなモダン・シンセ・ポップの品質は間違いなく本物です。

 

「お店では5月のタワレコメンになったヤング・カトーと一緒にプッシュしたい」という具体的なアイディアも飛び出したのは、フォスター・ザ・ピープルを擁するスタータイム・インターナショナルが、そのフォスターに次いでプッシュするナッシュヴィル発の新人バンド、コインの初アルバム『Coin』。シンセ・ポップ・バンドのシーンは、(特にUSでは)群雄割拠どころか頭打ち感さえありますが、キラキラ感のあるアレンジ、エモくてポップなメロディーという正攻法でその壁を越えようするコインのスタンス、断固支持!

 

「イヤらしい推し方ですが、これは間違いなく売れます!」と身も蓋もない(笑)レコメンで登場したのは、スウェーデンのインディー・ポップ・バンド、マイク・スノウクリスチャン・カールソンと、スウェディッシュ・テクノ界の注目プロデューサー、リナス・エクレイのユニット、ギャランティスのファースト・アルバム『Pharmacy』。今年の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉にも出演するEDMエレクトロ・デュオが鳴らすのは、エグく攻めがちな昨今のEDMシーンの潮流にあって、北欧らしい透明感とオシャレ感を醸す〈いい塩梅〉のダンス・ミュージック。野外でこれを聴きながら踊るのはさぞ気持ちよいことでしょう!

 

次に紹介されたのは、シンセが多めだったここまでの流れをぶった切る……ようでいて、実はアイスエイジを生んだコペンハーゲン・シーン(強引ですが、ギャランティスとは北欧繋がり)の若き注目バンドでもあるコミュニオンズの日本デビューEP『Communions』。ハードコア・パンクやノイズを素直に愛するキッズ感も持ちながら、彼らが奏でるのはスミスラーズストーン・ローゼズばりの甘く儚いギター・ポップネオアコ。少し背伸びして尖って見せるようなバンドの佇まいもパーフェクトで、フロントマンであるマーティンのヨレ気味な歌声も愛したくなるブレイク必至の逸材です!

 

会議の終盤にガラッと空気を変えたのは、ウエスト・ロンドン発のシンガー・ソングライターでありラッパー、オンリー・リアルの待ちに待たれたメジャー初アルバム『Jerk At The End Of The Line』。というのも、2012年ころから発表し始めた“Backseat Kissers”などの楽曲が話題となりヴァージン/EMIとの契約を結ぶも、周囲の期待をよそにマイペースな活動を維持してきたから。90sのベックマック・デマルコを繋ぐ存在とでも言いますか、ストリート・カルチャーとインディー・ポップを並列で愛する感性がいまっぽくてフレッシュ。ちょっぴり悪ガキ風なルックスもイイネ!

 

「紅一点のアリシア・ボニャーノ嬢がスティーヴ・アルビニのスタジオで働いていた」という情報にアラサ―~アラフォーの男性スタッフが即座に反応していた(笑)のが、ナッシュヴィルのロック・バンド、ブリーの初アルバム『Feels Like』。若いころのコートニー・ラヴを彷彿とさせるアリシアのカリスマ性が突出していて、バンド・サウンドもグランジや90sガレージ・ロックの影響をモロに感じさせる、好きな人にはたまらないであろう逸品。同じようにオルタナ回帰ムードを盛り上げるコートニー・バーネットあたりと一緒に聴きたいですね。

 

ラストを甘~く締めくくったのは、〈サム・クックの再来〉と評されるスモーキーな喉とルックスで音楽ファンと批評家をメロメロにしているテキサス出身のシンガー・ソングライター、レオン・ブリッジスの初アルバム『Coming Home』。昨秋まで皿洗いの仕事をしていたものの、今年の〈SXSW〉でパフォーマンス賞を受賞し、一気にスターへの階段を登り始めたという現在進行形のアメリカン・ドリームからも目が離せません。オールディーズの名曲かと聴き間違うこと必至な“Coming Home”はぜひチェックしてほしい!

 

ということで、シンセが効いたダンサブルなアルバムが中盤に続いたものの、全体としてはさまざまなタイプの作品が登場した今回のタワレコメン会議。悩んだスタッフたちが多数決で選んだのは……!?