1994年にホーンヴェット兄弟を中心に結成されたノルウェーの8人組マルチ音楽集団ジャガ・ジャジスト。ポスト・ロック~実験ジャズの旗手としてシーンに登場し、ジャズ、ロック、ブラス、フォーク、テクノ、現代音楽などの要素をプログレッシヴにないまぜにした音楽は、一見クールでスタイリッシュな印象を与えるが、そのじつ「ポスト・エヴリシング!」と叫びたくなるほど向こう見ずでラジカルな熱に満ちあふれている。
そんなジャガの20年に及ぶ歩みの集大成……とまとめるにはすこぶる野心的で、彼らがまだまだシーンの最前線にいることを証明する新作が完成した。前作が管弦楽団ブリテン・シンフォニアとの共演ライヴ盤であったので、スタジオ作品としてはジョン・マッケンタイアをミキシングに迎えた『ワン・アームド・バンディット』から6年ぶりである。まず、本作の特徴として挙げられるのが前面に押し出されたエレクトロニクスだ。昨今のシンセウェイヴ界隈に呼応するようなニューエイジ風のシンセに、手作りアナログ・シンセ「スワーマトロン」の開発者リオン・デュワンを迎えた発振音が過激に耳をくすぐる。なんとも宇宙的だ。そして、そんな電子の群れが漂い遊ぶなかを、精密なリズム・アンサンブルとエッジの効いた音をスリリングに交錯させ (1曲目《スターファイア》では情感的なキメがバシバシと連続する!)、総じてポップにくっきりとメロディを際立たせるアレンジの巧みさには、くりくりと目と耳を見開かされるばかりだ。
彼らを一躍時のバンドとした『ア・リヴィングルーム・ハッシュ』(2001年)から14年。北欧エレクトロニカ全盛の時代から現在に至るまで、彼らの個性はいつもシーンのムードに溶け込みながらも、そこに埋没することなくさらなる高みに向かう。そして、今作でもジャガ・ジャジストは光と色をさまざまに変えながらオーロラのごとくたなびき、じつにしなやかで美しい突起を見せてくれる。