ニンジャ・チューン総帥のコールドカットと、On-Uを率いるエイドリアン・シャーウッドが伝統と革新を繋いで衝撃合体!

 復活!といっても、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」のフリートークの話ではない。同番組で使用されている“Theme From Reportage”でもお馴染みの……(強引な展開で恐縮ながら)……コールドカットが久々のアルバム『Outside The Echo Chamber』を携えて帰ってきたのだ。正確に言えば名義はコールドカット×On-Uサウンドで、エイドリアン・シャーウッドとの大物コラボによるもの。ピンチとのコンビ作を年頭に出したばかりの精力的なシャーウッドに対し、ともかくコールドカットにとっては『Sound Mirrors』(2006年)以来11年ぶりのオリジナル・アルバムだ。今作、というよりはその前ぶれでもあった昨年末のカムバック音源“Only Heaven”の時点で話題だったように、彼らはニンジャ・チューン設立前に立ち上げていたレーベル=アヘッド・オブ・アワ・タイムを再興している。そんなところにもデビュー30周年を迎えての原点回帰に挑むマインドの強さを感じられるかもしれない。

 もともと先んじて活動していたのは、81年にOn-Uサウンドを立ち上げたシャーウッドだ。ジャマイカ移民がUKに持ち込んだサウンドシステムの文化がロンドン・パンクスたちのフィルターを通じて広まったのが70年代後半、その波動を吸収した彼は、ニュー・エイジ・ステッパーズを送り出すなど、レゲエ/ダブ・オリエンテッドなポスト・パンク時代の先端を走り、後のブリストル勢にまで及ぶ影響力を発揮していくことになる(そこからダブステップ・カルチャーへ至る余波も言うまでもない)。

 一方のコールドカットは、87年に“Say Kids(What Time Is It)”でシーンに登場。グランドマスター・フラッシュよろしくターンテーブルのみで奏でた同曲はクラブ・シーンに多大な衝撃を与え、いわゆるラップ主導のUSヒップホップとは違う形でUK独自のブレイクビーツ・カルチャーを定着させるに至った。そんな先駆者たるコールドカットは当時から先達のシャーウッドに刺激を受けていたそうで、「コールドカットのマッシュアップはOn-Uからヒントを得たんだ。On-Uがなければニンジャ・チューンも存在していなかったよ」(マット・ブラック)とも語っている。90年代に入ってニンジャ・チューンを設立してからの歩みは衆知の通りだろう。アブストラクトやエレクトロニカ、ビート・ミュージックといった後の形容に先鞭を付けた彼らの動きこそが、現在もレーベルの増えていく引き出しや多様性を確実に担保しているのだ。

COLDCUT,ON-U SOUND Outside The Echo Chamber Ahead Of Our Time/BEAT(2017)

 で、今回の『Outside The Echo Chamber』は、レジェンド2組が育んできた文化と伝統を下地に、それぞれが推進するレーベルの活動の多彩さを裏付けるようなアルバムになっている。冒頭の“Vitals”に招かれたビッグ・ダダ生え抜きのルーツ・マヌーヴァを筆頭に、ジュニア・リードとリー・ペリー、エラン、セシル、チェジデックらが作品に人間味とメッセージを注ぎ込む。ウィズ・ユー(スウィッチを中心とするチーム)や忍者のトドラTがプロダクションに助力し、On-Uでお馴染みのスキップ・マクドナルドやダグ・ ウィンビッシュも演奏面でサポート。主役の2組によってUKで独自の進化を遂げたレゲエとヒップホップが先達と後進を繋ぐキーになって今作で深化を見せていることに喜びを禁じ得ないという人も多いだろう。これぞ唯一無二である。