〈朝の顔〉として知られる人気キャスターが、こよなく愛する天才ギタリストを大いに語る! 神奈川・横浜赤レンガ野外特設ステージにて9月27日(日)に開催される〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉のプレ・イヴェント第1弾として、スペシャル・ゲストに小倉智昭さんを迎え、同フェスに出演するパット・メセニーを掘り下げるトーク&DJショウ、その名も〈パット・メセニー祭り〉が神田淡路町のCafe104.5で昨日7月22日の夜に開催された。

小倉さんといえば、4万枚ものCD/DVDを所有されている音楽ファンとしても有名なだけに、この日もMCの板井麻衣子さんによる呼び込みで登壇するなり舌好調。出会いは高校時代、当時ロックに熱心だった小倉さんにジャズの魅力を教えてくれた同級生が、「ウェス・モンゴメリーやジム・ホールよりすごい若手ギタリストがいる」とパットを紹介してくれたのがきっかけ。初のライヴ体験は79年に中野サンプラザで開催された〈ECMスーパー・ギター・フェスティバル〉で、アルバムの複雑なサウンドに多重録音を駆使しているのだろうと思っていた小倉さんは、目前で繰り広げられた鮮やかなギター・プレイに心底驚いたのだとか。その頃からの長い付き合いだと考えれば、パットへの情熱も筋金入りなのがわかるだろう。

小倉さんはパットの才能を「ギターのテクニックはもちろん、コンポーザー、音作りの天才だと思う」と表現。若くしてバークリー音楽大学で講師を務めた早熟ぶりから、圧倒的なグラミー受賞回数、彼が近年取り組む自動演奏装置〈オーケストリオン〉まで、その稀有なキャリアをわかりやすく紹介したあとは、私物のCDを手に独自の切り口でパットの魅力に迫る。DJを務めたパット・メセニーの情報サイト〈Patweek〉を運営する久保智之さんが最初にかけたビートルズのカヴァー“And I Love Her”(2011年作『What’s It All About』収録)を「アコースティックでこういう曲を弾いたら普通は開放弦を使うものだけど、パットは必ず弦を押さえている。親指を使ったベース音の使い方も見事で、人間業とは思えない速弾きもできる一方、こういうキチっとした演奏もできるのが魅力」、代表曲の“Last Train Home”は「音源ではエレクトリック・シタールを弾いてるけど、ライヴではアコースティック・ギターで曲の雰囲気を表現するんですよ」といったふうに、プレイ・スタイルからピックの持ち方に至るまで、音楽評論家も顔負けの分析と〈とくダネ!〉を披露しながら聴きどころを語ってくれた。

そんな具合でトークも盛り上がるなか、「〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉にジェフ・ベックが出演決定、パット・メセニーとの初共演も実現するかも!?」という大ニュースがステージに届く。「お互い音にこだわるギタリストなので、どう噛み合うのか想像するだけでも楽しみ」と小倉さんも興奮ぎみで、嬉しい知らせに会場は大いに沸いた。「変拍子をそう思わせないほど自然に聴かせるのがパットの凄さ」と語る小倉さんは、「本領発揮のソロ・プレイと、終わったあとの拍手も聴きどころ」と紹介も交えながら、最後に93年のライヴ盤『The Road To You (Recorded Live In Europe)』より“Letter From Home”と“Third Wind”を続けてプレイ。完璧なユニゾンを聴かせる熱演に会場中が聴き入り、曲が鳴りやむとリアルな拍手も巻き起こった。日本中のお茶の間を賑わすだけあり、ビギナーにも親切丁寧な小倉さんの解説ぶりは実にお見事。まるでパットが弾くギターのように流麗な語り口で、濃密な40分弱はあっという間に感じられた。

さらに、イヴェント終了後に楽屋で小倉さんとインタヴューする機会に恵まれたので、ジャズへの思いや〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉について話を伺った。