地元メルボルンのミュージシャンたちを交えてナチュラルかつ骨太な音を鳴らした3年ぶりの新作
最初期に出した“Nakamarra”がQ・ティップ客演のリミックスで話題になったこともあり、ネオ・ソウル的なイメージを持たれ続けてきたハイエイタス・カイヨーテ。だが彼らは、そうした枠に収まる器ではないことをこれまでのアルバムやメンバーたちのプロジェクトなどで明らかにしてきた。無秩序なようで秩序が保たれていて、バンド演奏の美点を失うことなくテクノロジーも取り入れ、古典的でありつつも近未来的。ブレインフィーダーから3年ぶりに出す新作も、ソウル、ロック、ヒップホップ、ジャズ、ラテン、クラシックなどさまざまな音楽要素が複雑に絡み合い、リリックではアニメや童話、脳神経学者の著書などをリファレンスにして独創的な世界を作り上げている。ネイ・パームの歌ぢからは今回も圧倒的だ。
地元メルボルンのミュージシャンたちとも相見え、交響曲風の序曲“Dreamboat”ではメリーナ・ヴァン・レーウェンがハープの麗しい音色を添え、バラードの“How to Meet Yourself”ではテイラー・クロフォードがチェロ風の自作楽器であるフレロを披露。サイモン・メイヴィンのピアノも美しいこれらの曲では前作にも増して音の表情が豊かでナチュラルだ。“Everything’s Beautiful”はクラヴィネットのイントロからしてスライ・ストーンを思わせるミニマルなファンクで、ジャムセッション的な気楽さがある。ひとつのヴァースを3つのジェンダーの視点から表現したという“Make Friends”も、「友達は作るものではなく、気づいたらなっているもの」というメッセージに通じる偶発性が音にも表れているかのよう。“Thelescope”ではドラムマシンを用いてタイトに滑走する中でテンプテーションズ“My Girl”のフレーズを歌うなど、多彩なアイディアが整然と成立しているのが面白い。
ミックスに関わった名匠マリオ・カルダートJr.のもとビースティ・ボーイズ御用達のマイクを使って録音したという“Cinnamon Temple”は、ポール・ベンダーのギターも含めてディストーションが効いたノイジーなパンク風。それに続くのがジェファーソン・エアプレイン“White Rabbit”の荒々しく攻撃的なカヴァー。世の惨状を67年のサイケデリックとは異なる2020年代の感覚で骨太に表現するラストの気迫が凄まじい。ネイの憧れの存在であるチャカ・カーンが彼らのことを「ルーファスを思わせる」と言ったと聞いて深く納得した。
LIVE INFORMATION
Hiatus Kaiyote 来日公演決定!
2024年10月30日(水)東京・豊洲PIT(スタンディング)
2024年11月1日(金)大阪・大阪城音楽堂(全席指定)
一般発売日:2024年6月28日(金)10:00~
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