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――曲作りは順調ですか? 前回インタヴューした時はとても大変そうでしたが(笑)。

Matsumoto「前よりも焦ったりとか、作らな作らなってせんでいいかなと。俺はそう思ってるけど」

Kanabishi「アナンがバイトを辞めた頃……去年の12月かな、俺も仕事辞めて。それでアナンと家でセッションしよう、曲作りしようってやったりとか、どういう曲を作ろうかと考えるよりも、いま自分の好きな音楽の要素を自分なりに詰め込んでいる。それがいまやってる感じかな」

――実は今年の春くらいに4曲入りのEPをリリースする予定だったんですよね。

Kanabishi「仕事辞めた後、2か月くらいニートだったんですけど、その頃に作りました」

――それが思った以上にエレクトロニクス感の強い曲たちで。でもそれをリリースするのは一旦保留にしたと。

Matsumoto「あの音源は結構打ち込みが多くて、シンセがビャーって鳴ってる感じなんですけど、たぶん録り直す時はドラムも生で録るし、もっとギターも入るんで、次にレコーディングするヴァージョンは全然違うと思います」

――曲はそのままに生演奏を前に出して再録音する方向なんですね。イイと思います! 個人的には、やはり最近のライヴの良さを音源でも活かしてほしいですし。

Matsumoto「(PAELLASの)良さが出てないから絶対録り直したほうがいいって言ってくれる人がいたので、結局ポンと出さずに時間を置いて良かったなと思います。それに、そのタイミングでボツにした曲も、最近演ってみたら結構イケるなと思ったりするから」

――ほ~、それは楽しみですね。

Matsumoto「いまは70sと80sのテイストを混ぜたような感じのサウンドにしたくて。ガチガチの80sじゃなくて、生っぽさは残しながらもシンセサイザーが入ったり、ハウスっぽいリズムが入ってたり……というのがコンセプトとしてある。例えば俺が聴いているものだと、ダリル・ホールフリートウッド・マックカーズあたりが80年代に演ってた音楽は自分たちがめっちゃ売れてた70年代の音をやや引きずりながらも80sの音を採り入れたりしていて、そういうのがいいなと」

――一方でビッシーさんがさっき言っていた〈自分が好きな音楽の要素〉というのは、どういう感じのものなんですか?

Kanabishi「アゲアゲな感じのやつ。いまシャミールっていうのを聴いていて」

【参考動画】シャミールの2015年作『Ratchet』収録曲“Call It Off”

 

Anan「そういう音楽聴いてさ、EDM的な方法論を結構学んでるよね」

Kanabishi「そうそう、完全にアゲアゲな要素を、まっとんが言ったような80s風のスタイルに落とし込めたらおもしろいなと思う。でも、俺はそこまで全体を考えてるわけじゃなく、その時その時で〈これ入れてみよう〉みたいな感じで、全体見るのは(Matsumotoに)任せてるんです。全体を見るとなると、やれることが限られてきちゃって、逆におもしろくなくなっちゃうから」

――曲の仕掛けというか、スパイス的なものを効果的に採り入れるみたいな感じですかね。

Kanabishi「そうですね。俺はパソコンに張り付いて、どのリズムを入れるかとかそういうことを。アナンくんは構成とか見てくれる」

――何となくの役割分担が。

Matsumoto「最近はアナンとビッシーで作業してたりするから、俺はそれがいちばん嬉しい。あと、ヘンにアッパーな曲を作ろうとしなくなった。無理にアッパーにしようと思って作って、ボツになった曲がいっぱいあるから」

【参考音源】PAELLASの2015年の楽曲“Hold On Tight”

 

Kanabishi「普通にロックな速い曲もあるけど」

Matsumoto「そういうのも出来たら……という感じで」

――肩の力を抜いて、自然に出来たものを採用すると。

Matsumoto「前まではライヴでアガる曲を作ろう、みたいにしていたけど、そういうのってあんまり自分たちに合ってないし、それだけが気持ち良さではないから。然るべきものを提示できれば、観てる人も気持ち良いと思うので」

――最近のライヴは、単純にサウンドでアゲるという感じよりは、バンドのグルーヴで高められている印象を受けるので、ああいうスタイルがPAELLASらしいと言えるのかもしれませんね。

Matsumoto「演奏のレヴェルだけで聴かせられるレヴェルになったら何やってもいいやろなって思うけど、まだ自分たちは個人のレヴェルでも集合体のレヴェルでもそこまでいってないと思う。だから曲を作る時に考えることも多いけど、演奏だけで人を動かせられるようになったら……とは思いますね」

――なるほど。

Kanabishi「やっぱり本当に〈プロ〉の人の演奏を観ると……」

Matsumoto「説得力が全然違う」

――今年の4月にNiw! Recordsのイヴェント〈Niw! Collection〉に先輩アーティストと並んで出演されましたが、あぁいった現場だと実感しますか?

Kanabishi「本当に先輩ばっかりのイヴェントに出るのはあの時が初めてで。めちゃくちゃ勉強になった」

MatsumotoKONCOSが超カッコ良かった」

Kanabishi「KONCOSはヤバかったね。他にも自分が昔聴いていたバンドと同じイヴェントに出るというのがまずびっくり。そういう先輩を観に来たお客さんをどう奪えるかっていうのを考えると、俺らはまだ全然下手だった」

【参考動画】KONCOSの2015年のライヴ映像

 

――とはいえ、何はともあれとても前向きな話ばかりで安心しました(笑)。最後に一人ずつ今後の展望について教えてください。

Matsumoto「今年中には何かしらリリースをしたいなと」

――おっ! 期待しております。

Kanabishi「俺ができることは曲を作って、いま自分が思っている音楽面での〈こうしたい〉っていうのを実行していくだけ。とりあえず曲を作らなきゃって。作ろうと思っている時に作らないと何も残らなくなっちゃうから」

Anan「たぶん、いまPAELLASがいちばん好きだっていうお客さんはあんまりいない、ゼロに等しいと思う。だから、これから〈いちばん好き〉って言ってくれる人をどれだけ増やすか、そうするにはどうしたらいいかっていうのを考えたい。もちろん曲もバンバン作りたいし。やっぱり1曲でもキラー・チューンと言えるものが出来ると全然変わると思うので、そういう曲を作りたいです」

――バンドの看板になるような曲は大切ですよね。ではKomatsuさんは?

Komatsu「PAELLASが表現したい音楽を実現するのは難しいことも多いから、いろんなやり方を試さなくちゃという時に、マサダくんがおってくれるのはすごくありがたい。僕とマサダくんとでもっとPAELLASの曲に影響を与えられる存在になりたいというか、ならないといけないと思っています。(PAELLASを)やってる意味を見い出すためにも、いろいろ工夫していきたいですね」

マサダ「僕はまだよくわかんないんですけど……リアルをぶち込んで」

――リアルってなに(笑)?

マサダ「まだわからないことが多いので、とりあえず目の前にいる人と一緒に楽しめたらそれでいい。その先に何かが待ってるんじゃないかって思います。やっぱりリアルを……(笑)」

Matsumoto「うるさい(笑)。マサダくんは〈マサダ〉っていうキャラクターをもっと確立したほうが……」

マサダ「そうだな。それで!  あと僕が働いている高円寺の古着屋もいい店なんでみんな来てもらえたら」

――あ、そうか。どうぞ宣伝してください。

マサダ「高円寺の黒BENZというお店で働いてます。東京のなかでもおもしろいものがたくさん詰め込まれてるお店なので、ぜひ来ていただけたらと。PAELLASの話じゃなくても、音楽の話だったりくだらない話もできるし。目線的には僕はメンバーというよりもお客さんに近いので、そういう意味でも新しい立ち位置になれたらいいなと。下剋上です!」

――ん? ちょっと話が変わりましたね。

マサダ「先輩の話がさっき出ましたけど、やっぱり僕らがね、ボカーン!といかないと何も始まらないんで。時代を創ります!」

――ではその言葉で締めましょうか(笑)。

Matsumoto「ちょっと待ってください……(笑)。さっきアナンが言ってたのがほんまにそうで、PAELLASがいちばん好きっていう人を少しでもいいから増やしたい。ライヴによく来てくれる人とか、好きだと思ってくれてる人はいますけど、〈いちばん好き〉と言ってくれる人を増やしたい。そういう人たちが増えたなって実感を得られた時に、またひとつ進める気がするので」