本文にもあるようにとの共演がきっかけとなった今回のコンセプトは、伊集院の詞作や楽曲制作の手法にも大きな影響を与えることとなった。ここではそのイメージを共有して共に物語を作り上げたラッパーたちを紹介しておこう。

 【参考動画】RUMIの2009年作『Hell Me NATION』収録曲 “A.K.Y”

 まず、冒頭の“彼女は金曜日”に登場するのは、飾りのないロウな作風で知られるRUMI。強く生きる女性の姿を歌う語り口は日活映画「反逆のメロディー」(70年)のテーマに想を得たトラックにもマッチしている。続く“Midnight Train”はメロウなソウル・ループに乗せ、Meisoが漂泊の旅情を淡々と呟く味わい深い一曲だ。そこから一転、明快にサルソウルを匂わせた“愛の逃亡者”ではB.I.G. JOEがグルーヴィーな語りをバイリンガルで披露。カートム期のステイプルズを思わせる“愛なき世界で”にはウッドベースの語り部タカツキ、そしてオルガンの唸る“ハートエイクのブルース”にはこういうサイケガレージ系の音世界も支配するダースレイダーを招くなど、多様な音に合わせた的確な人選がいちいち抜群だ。

 【参考動画】BASIの2013年作『RAP U』収録曲 “It's All Good”

 さらに、AOR風情もあるメロウな“マリーの24時間だけの恋”にはブラックコーヒーの似合う(?)HAIIRO DE ROSSIがリリカルな存在感を見せる。ビー・ジーズボハノンを意識したというハード・クラップなブギー“パパのブルー・スウェード・シューズ”にはKEN THE 390がスマートに登場。そして、BASI韻シスト)のぶっきらぼうな声が小気味良い歌世界に馴染む“Butterfly Lady”はバーバラ・アクリンノーランズを連想させる甘酸っぱさだ。共演曲を新装した“帰れない二人~遠雷篇~”での鬼も含め、ここに参加した各々の作品にも改めて注目してほしい。

 

▼関連作品

左から、RUMIの2009年作『Hell Me NATION』(POPGROUP)、Meisoの2013年作『イテツクアカツキ』(Mary Joy)、B.I.G. JOEの2013年作『HEART-BEAT』(TRIUMPH)、タカツキの2009年作『旅人のリズム』(nrecords)、ダースレイダーの2011年作『NO拘束~MONOEYE VISION』(Da.Me.Records)、5月14日にリリースされるHAIIRO DE ROSSIのニュー・シングル“Ready To Die”(forte)、KEN THE 390の2014年作『#7』(DREAM BOY)、BASIの2013年作『RAP U』(BASIC MUSIC)
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