久々の単独作品『THE BEAST EP』をドロップし、レコ発ツアーもソールドアウト続出。年末には中国最大の音楽フェス〈MIDI FEST〉に出演するなど、大充実の2013年を過ごしたメタルコア・バンド、HER NAME IN BLOOD。今回届いた約4年ぶりのフル・アルバム『HER NAME IN BLOOD』は、アンドリュー・ウェイドがミックス/マスタリングを担当しており、さらに獰猛さを増したサウンドからは、彼らが積み上げてきた自信が伝わってくる。
「『THE BEAST EP』を作ったことでバンドの方向性を固めることができたから、制作はスムースでしたね。基本的にバンドに曲を持ってくるのはDaiki(ギター)と俺だけど、メンバー同士で良いリレーションも取れていたし、ワンマンな感じは全然なかった。5人で作ったアルバムだと思いますね」(Makoto、ベース)。
本作の起点となったのは、昨年の初夏にDaikiが持ってきたという“ALL THAT LIVING INSIDE OUR HEAD”。重厚なグルーヴで攻めるこの曲は、彼らにとっては珍しいメロディー・パートが印象的だ。
「前までは演奏重視だったんですけど、Ikepyもヴォーカルとしてパワーアップしてきたし、やってみようと思って」(Daiki)。
その結果、ライヴではシンガロング必至であろうキャッチーさを獲得し、翻ってバンドが持つ凶暴性をより強調することにも成功。また、“HALO”や“THIS IS RETRIBUTION”でのシンプルかつ強烈なギター・リフなど、バンド・アンサンブルでも耳を惹くフックが光っている。
「昔のメタルとかハード・ロックの名曲って、リフひとつとってもインパクトがあるし、1回聴くと覚えるじゃないですか。そういう作品にしたいと思っていたんですよ。それで、モトリー・クルーみたいなノリと、今風のサウンドを合体させたら新しいんじゃないか?って。そのへんは制作中によく聴いてましたね」(Daiki)。
「あとは、パラモアの新しいやつ(2013年作『Paramore』)ね。俺とDaikiはすごい聴いてました」(Makoto)。
もちろん、彼ららしいブルータルさを深化させた楽曲も多数収録。アルバムの冒頭を飾る“HERE WE COME”の、曲がストップする限界ギリギリのブレイクダウンは、とにかく壮絶でエゲツない。
「作品とか関係なく、ふざけて曲を作ることがあるんですよ。例えば、お笑い(番組)の音声だけを抜き出して、それをヴォーカルにして曲を作ったりとか。お笑いってリズムが良いから結構フックが出るんですよね。そうやって遊びで作ったものが、この曲の元になってます」(Makoto)。
そんな遊び心は他の曲にも。“CITY OF DESPERATION”の仮タイトルは〈RACCOON CITY〉だったそうだが、これはTVゲーム〈バイオハザード〉の舞台とされた街の名前である。
「最初に聴いたときに〈ゾンビっぽい曲だな〉って話してたんですよ。それでこの曲にサイレンを入れたんですけど、あれは、アメリカで生物災害が起きたときに、実際に鳴らすサイレンの音なんです。ちょっとしたこだわりですね、そこは(笑)」(Makoto)。
取材中、終始楽しそうに話していた2人からは、とにかく良いオーラが出っぱなしで、そこからも今回の新作に対する確信が窺えた。本作を引っ提げて行なわれるツアー〈RETURN OF THE BEAST TOUR 2014〉では間違いなく、これまで以上に凄まじい熱狂を巻き起こしてくれるだろう。
▼文中に登場したアーティストの作品
左から、モトリー・クルーの89年作『Dr.Feelgood』(Elektra)、パラモアの2013年作『Paramore』(Fueled By Ramen)
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ここではHER NAME IN BLOODの関連作を紹介! 激しいグロウルの応酬で圧倒する2010年のシングル“Confusion”(KEEP AND WALK)が初の単独音源。その1か月後には筋肉質のデスコア〜スクリーモに叙情性も忍ばせたフル作『DECADENCE』(KEEP AND WALK)を発表します。2012年には若手ポップ・パンク/エモ勢によるカヴァー集『Punk Goes Pop Vol.4』(Fearless/TRIPLE VISION)の日本盤で、強烈なビートダウンをかますレディ・ガガ“Poker Face”を披露。そして2013年には約3年ぶりのオリジナル作『THE BEAST EP』(TRIPLE VISION)が登場し、自身の獰猛さをアピール。同年にはコンピ『Punk Goes Pop Vol.5』(Fearless/TRIPLE VISION)にもマルーン5“This Love”のカヴァーを提供し、新作への弾みをつけました。 *bounce編集部
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