LOUDER JAPAN
[ 特集 ]日本の重音 2015
不敵に刻まれるリフ、野獣の如き咆哮、急転直下のブレイクダウン、地鳴りのようなツーバス……滾らずにはいられない要素が満載の重音マップ、2015年度版!
HER NAME IN BLOOD『BEAST MODE』に通じる世界の獣音盤!
イン・フレイムスにディセンデンツ、カテドラルにモーターヘッド。bounce本誌の表紙における写真のなかで彼ら自身が着用しているTシャツが、そのままこのバンドの狭そうで広いジャンル感と、時代的な奥行きの深さを物語っている。
ただ、今作『BEAST MODE』からより直接的に感じられるのは、90年代から2000年代にかけての〈スラッシュ以降、メタルコア定着以前〉の音楽に通ずる感触だ。例えばパンテラのいくつかのシングル曲に繋がるような〈強力なフックで押し切るコンパクトな曲〉は彼らの武器と言えるはず。しかも強烈な咆哮ばかりが持ち味ではなく、ちゃんと歌心のあるIkepyの歌唱には、そのパンテラのフィリップ・アンセルモや、ロブ・フリン(マシーン・ヘッド)、コリィ・テイラー(スリップノット)などを連想させるところがあるし、楽曲によっては、そのコリィ率いるストーン・サワーと通底するような〈メタルの領域を踏み外さないキャッチーさ〉もある。
それは最近になって再始動を表明したディスターブドの往年の楽曲にも重なる要素だし、ツイン・ギターに情念たっぷりの歌声が絡むあたりにはキルスウィッチ・エンゲイジ的な印象も。さらにはグルーヴ・メタルと評されるラム・オブ・ゴッドを思わせる強靭なうねりや、ハードコア側から〈メタルに欠けているもの〉の数々を体現してみせていたとも言えるヘイトブリードのような鋭利さも感じられる。
HNIBのサウンドの背景には、ブラック・サバスからAC/DC、メタリカをはじめとするクラシック・メタルも脈打っているわけだが、そうしたものを血肉としながら洗練されていった90年代以降の音楽からの直接的影響が顕著なのは世代的にも当然だろうし、彼ら自身が良い意味で雑食性だからこそ、〈俯瞰で見た時のメタルのカッコ良さ〉といったものを持ち込めているのだろう。つまり、ここに名前が登場したようなバンド群について細かく分類することなく〈カッコイイから全部好き〉と言えるような人たちにとっては、間違いなくグッとくる音。それが『BEAST MODE』には詰まっている。