落語と日本文学 この国ならではのユーモア
昨年末と新春にテレビ放送された二宮和也主演のドラマ「赤めだか」と「坊っちゃん」が早くもパッケージ化される。
まずは「赤めだか」。落語家・立川談春によるエッセイのドラマ化であり、立川談志への入門から二つ目になるまでをメインに描いている。談志をビートたけしが演じたほか、談志や談春に実際に深く関わった人物や、落語を知るひとにはお馴染みの面々が本人役や脇役でさりげなく登場する。知っている人は思わずニンマリな、まるで落語を聴いているような“くすぐり”が笑いを誘う。80年代の空気感を描いた演出も満載。そしてドラマから見えてくるのは、立川談志を愛した人たちのそれぞれの愛のかたちである。落語を愛し、自分を愛し、人を愛し、弟子を心底愛した人間・立川談志。ドラマで発せられる談志の言葉の数々が心にグッとくる。特典映像として二宮和也「文七元結」未公開映像追加版ほかを収録。こちらも見逃せない。
夏目漱石の小説「坊っちゃん」。過去にも映画やドラマ化されてきたが、今作ではまず軽快なテンポが心地よく小説の世界に誘ってくれる。いま望みうる最高のキャストで、個性豊かな登場人物にもぴったりの配役。原作の舞台となった愛媛県松山の道後温泉でもロケを行うなど、その映像でも「坊っちゃん」の世界をリアルに演出している。話題の芥川賞作家も登場!などなど、新しい「坊っちゃん」の世界を楽しませてくれる。
いずれもやはり二宮和也の俳優としての凄さを感じずにはいられない。談春のもがき苦しむ姿にも、正直でまっすぐ過ぎる坊っちゃんの姿にも、二宮和也という役者の底知れなさに感心するばかりである。そして、見終えたあとにやってくる爽快感がたまらない。ありきたりだが、また明日から〈がんばろう〉と思うのだ。