寺田農が死去した。

寺田農は、2024年3月14日に肺がんのため81歳で死去。寺田が亡くなったことは、所属事務所のCESエンタテインメントのオフィシャルサイトで発表された。

CESエンタテインメントの声明は次のとおり。

弊社所属 寺田農が2024年3月14日未明、肺がんのため81歳で永眠いたしました。 最後まで仕事を続けながら、諦めることなく希望を持って、治療に励んでまいりましたが、桜の開花を待たずして帰らぬ人となりました。 これまで応援して下さったファンの皆様、多くの作品でお世話になりました関係者の皆様の生前のご厚誼に深謝いたしますとともに謹んでお知らせ申し上げます。 なお、故人ならびにご遺族の意向により近親者のみにて家族葬を執り行いましたことを併せてご報告いたします。 誠に勝手ながら、ご弔問・ご香典・ご供物・ご献花の儀は辞退させて頂きたく存じます。 何卒ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。 株式会社CESエンタテインメント

寺田は1942年、東京生まれの俳優。父は、洋画家の寺田政明だった。

61年に文学座付属演劇研究所に入り、65年に「恐山の女」で映画デビューを果たした。同年に出演したテレビドラマ「青春とはなんだ」で注目を集め、68年、岡本喜八監督の映画「肉弾」で主演、毎日映画コンクール男優主演賞を受賞した。

寺田は相米慎二監督作の常連俳優としても知られており、81年のヒット作「セーラー服と機関銃」に始まり、85年の「ラブホテル」「台風クラブ」、相米の遺作になった2001年の「風花」まで8作に出演、「ラブホテル」でヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞している。また「座頭市と用心棒」(70年)などの岡本作品、「帝都物語」(88年)などの実相寺昭雄作品にも多数出演した。

そのほか「里見八犬伝」(83年)、「透光の樹」(2004年)、「ぐるりのこと。」(2008年)、「ミスミソウ」(2018年)、「犬鳴村」(2020年)など、60年代から現在に至るまで多くの話題作に出演しており、2021年には映画「信虎」で36年ぶりに主役を務めたばかりだった。

一方テレビドラマでは「ウルトラマン」シリーズ、「澪つくし」(85年)などのNHK連続テレビ小説、「独眼竜政宗」(87年)などのNHK大河ドラマ、土曜ワイド劇場・火曜サスペンス劇場・月曜名作劇場の各作、「水戸黄門」シリーズ、「ドラゴン桜」(2005年)、「仮面ライダーW」(2009年)といった数々の作品に出演。お茶の間でも長く親しまれた存在だった。

ナレーターや声優としても活躍した寺田は、声優として「天空の城ラピュタ」(86年)の悪役ムスカを務めたことも広く知られる。

見る者、聴く者に印象を残す姿と声の持ち主がこの世を去ったことは、残念でならない。今夜は寺田の出演映画やドラマを見返して、日本の人々に親しまれた渋い名優を偲びたい。