東海随一のDJ/プロデューサーは夢の途中でもっと強い夢を見る。頼もしい仲間と刺激的にチーム・アップして送るニュー・アルバムは、広い視野で昨日と明日を繋ぐ大作となった!
2014年のアルバム『#IDWT』では、AK-69とPUSHIMをフィーチャーした表題曲で〈俺らはいまだ夢の中〉と一つのステイトメントを提示していたDJ RYOW。名古屋を拠点にDJ活動を行う傍ら、全国各地へのDJ出演やアパレル・ブランドの運営なども行う彼だが、前作のリリース後、その夢がまた一つ具現化した。それが、自身のレーベルとなるDREAM TEAM MUSICの設立だ。
「レーベルを設立したのは、俺の地場である名古屋の若手MCたちをもっと自分が先導して世に出していきたいな、という思いが強くなってきたのがきっかけ。しっかり音楽をやっている子たちと一緒にチームとしてがんばっていこう、という意識のうえです」。

そして、そのDREAM TEAM MUSICから初めてのオリジナル・アルバムとなる新作『216』がリリース。ここで明確に打ち出されているのは、DJ RYOW自身のパーソナルな部分。言い方を変えると、いまのDJ RYOWがどのようにヒップホップと向き合っているか?という部分に焦点が当てられている。自身の誕生日を示すというタイトルや、アートワークにも使用されたプライヴェートなポートレートの数々からも、その強い意識は見て取れる。
「こんなふうにパーソナルな感情を作品にしたいなんて、いままではなかなかなかったんですけどね。この年齢になって、考え方もちょっと大人になったかなと思います。そして、自分自身の思いを音源にしたいという気持ちが強くなった」。
もちろんDJが指揮を執るアルバムという性質上、自身がリスナーに直接語ることはなく、ビートを通し、起用するラッパーたちの言葉を通じてしかコンセプトは届けられない。この手法、〈パーソナル〉というキーワードからは真逆のメソッドのようだが、「俺はDJだけど、ラッパーのように明確なコンセプトを構築したうえでアルバムを作りたいと常に思っていて、新作ではその思いが特に強い。今回ビートだけは早い段階から全曲分が出来上がっていて。そのビートごとに自分でテーマを考えながら、起用したいMCの皆さんに声をかけていきました」という行程で制作は進んでいったそうだ。
イントロに続き、まずリスナーを迎え撃つのはMACCHO、"E"qual、そしてMIHIRO~マイロ~という強力な布陣がパワフルに攻めたてる“Born Again”。それはそのまま、新しいレーベルを立ち上げて「新しい自分として打ち出すけれど、根本的なところは何も変わっていない。新しいスタートであると同時に、自分が生まれ変わったという意識もあります」というRYOW自身の内面ともリンクする楽曲だ。また、本作では〈生きること〉と同じように〈人生に幕を降ろすこと〉についても語られている。そこには「今回は自分が死ぬまで聴いていたい、と思うような楽曲を作ることにも重点を置いた」という彼の意図がある。加えて、2004年に26歳の若さで逝去した同郷の名ラッパー、TOKONA-Xの存在も大きい。そんな天国の盟友に語りかけるような “LETTERS”では、TOKONA-Xとは同世代かつ同郷のAK-69と、今回が初コラボとなるSuger Soulを迎え、センティメンタルな一面を見せる。さらに、シーンを見守ってきたヘッズであれば驚嘆するに違いないのが“OUTRO”だ。これはただのアウトロではなく、かつてTOKONA-Xが自身のアルバムに用いたアウトロ音源をDJ RYOWが再編した楽曲。そこに参加するのはTHA BLUE HERBのILL-BOSSTINO(tha BOSS)だ。リリック内で〈俺等はDISから始まった〉と触れられている通り、BOSSとTOKONA-Xはビーフの存在が取り沙汰された経緯もあった間柄。改めて盟友にDJ RYOWから送るレクイエムとしても響く一曲となっている。
「BOSS君にはこの曲の背景を話して、〈ポジティヴな曲にしたい〉と依頼したんです。そうしたらすぐにヴァースを返してくれて。こうやってTOKONA-Xとのストーリーを続けることができて嬉しかったです」。
加えて、TOKONAが所属していたILL MARIACHIをサンプリングして般若と漢をフィーチャーした“ビートモクソモネェカラキキナ 2016”、さらにエピローグとして実際のTOKONA-Xによる2004年のライヴ音源も収録している。
そしてDJ RYOWといえば、そのコネクションの広さを実感させられるようなゲスト陣の多彩さも特色の一つ。今回もM.O.S.A.D.やKOHH、また注目のクルーである¥ENTOWNの面々、Theタイマンチーズといったイキのいいフレッシュな人材から、JinmenusagiやZORNら確固たる支持を得る技巧派、もちろんSOCKSやSTEALERといった名古屋勢、そして海外からは“U Guessed It”のヒットで世界中を沸かせたアトランタのOGマコも参加している。全編のトラックを手掛けるのはDJ RYOW本人と、その右腕となるトラックメイカーのGrowth。MCたちの多様な個性を見事な手腕でまとめ上げており、国内ヒップホップ・シーンの最先端ショウケース的作品としても楽しめる。自身の夢や生き様と、ヒップホップ的アティテュードとを両軸に並べたアルバムとなっているのだ。
「2005年からオリジナル・アルバムを作り続けてきましたが、俺のことを知っている人に対しても、そうでない人に対しても、本当にいろんな人に広く届けたいと思うアルバムが出来ましたね。自分の集大成とも言える作品になっているんじゃないかと思います」。
アルバム作品で振り返るDJ RYOWのジャイアント・ステップ
昨秋にDREAM TEAM MUSICの設立を発表し、キャリアをさらに一歩進めたDJ RYOW。ここではオリジナル・アルバム中心にその歩みを振り返っておこう。岐阜出身で名古屋を拠点とする彼は、M.O.S.A.D.を擁するクルー=BALLERSに所属。MCのWATTと組んだENDLESS FILEのDJ/プロデューサーとしても活動するなかで、その名を一躍広めたのは、2005年に発表したDJ RYOW名義でのシングル“WHO ARE U?”だろう。生前のTOKONA-Xが発する豪放な名古屋弁を支える強靭なループは、威風堂々としたカッコ良さもあって現在も愛されるクラシックとなっている。そして、(同曲は未収録ながら)同月のファースト・アルバム『PROJECT DREAMS』(MS)では、M.O.S.A.D.やまだ新進だったAK-69をはじめとする名古屋勢を中心に、以降の作品にも欠かせない般若(RYOWのソロ作にはすべて参加!)やRYUZO率いる京都のR-RATED勢など全国からラッパーを招待し、その腕前をアピールしてみせた。
同年にはENDLESS FILEでの初作『Beginning of Legend』を発表する一方、2006年からミックステープ『052 LEGENDS』シリーズを開始し、並行してハードコア畑のTOMOKIYOと組んだGRAND BEATZとしてもアルバム『Project Dreams pt.2』(同)をリリース。特に後者は2009年の『Project Dreams pt.5』(同)まで続くこととなった。その2009年には、TOKONA-Xの音源をヒストリカルに満載しつつ“WHO ARE U? 2009”(AK-69と"E"qual、Akiraが参加)も収めた名作ミックスCD『BEST OF TOKONA-X』(同)も投下。SOCKSを含む若手集団のYOUNGEST IN CHARGEなど後進のフックアップやプロデュースにも積極的に取り組み、東海シーンきっての名裏方というポジションを盤石のものとしたのだった。
そんなRYOWがより個を立ててリーダー作を送り出しはじめたのは、2010年の『MORE THAN MUSIC』(同)からだろう。そこまでのキャリアを包括するようなミックスCD(MACCHOにRYUZO、MASTA SIMONを交えた“WHO ARE U? 2011”を収録)も付いた同作は、気心の知れたメンツを主軸に作り上げたそれまでの集大成となった。
そして、Growthとの共同制作にシフトした2012年の傑作『LIFE GOES ON』(同)では、KOJOEやAKLO、USのフレッド・ザ・ゴッドサンといった新鮮な手合わせも実現。なかでもDJ TY-KOHにY'S、SIMON、A-THUGを迎えた“Don't Stop”は、それまで名古屋産品に偏見のあったヘッズ層も振り向かせるクラブ・バンガーに。アルバムのツアーを収録したDVD+ミックスCDのセット『LIFE GOES ON LIVE DVD AND MIX TAPE』(同)には、KOHHとDIZZLE、SOCKSを交えたそのリミックスもエクスクルーシヴ収録されている。
で、そうした成果を踏まえて登場したのが2014年の傑作『#IDWT -IN DREAMS WE TRUST-』(同)ということになるだろう。ここでは冒頭の“Turn Up”でKOHHとSMITH-CNに加えてZeebraを招き、他にもISH-ONEや田我流、紅桜とJ-REXXX、LUNA、CREAMのMinami、RHYMESTERのMummy-Dら刺激的な手合わせだらけの豪華な一枚となった。
先述のように2015年にはDREAM TEAM MUSICを設立、TOKONA-Xの新リミックスも満載したクラシック主体の『THE MIX TAPE VOLUME #1 -BACK TO THE CLASSIC CUTS-』(DREAM TEAM MUSIC)と2015年のヒットを満載した『THE MIX TAPE VOLUME #2 -RAP CITY 2015-』(同)というミックスCDを連続リリース。並行してSOCKSの強力なソロ作『Never Dream This Man』(同)も放っていて、『216』以降のレーベルの動きについても注視せざるを得ないだろう! *轟ひろみ