生演奏の比重を高め、いつも以上にヘヴィーらしいヘヴィーなロックンロールが、重量オーヴァーのグルーヴを伴って耳に突入する! 遠慮など一切なし!!
無慈悲にタックルしてやるぞ
ケルヴィン・スワビー(ヴォーカル)とダニエル・テイラー(ギター)を核とするUKの4人組、ヘヴィーが通算4枚目のニュー・アルバム『Hurt & The Merciless』を完成させた。前作『The Glorious Dead』(2012年)収録曲“Same Ol'”が2014年になってペプシのTVCMで使われ、バンドは〈フジロック〉にも出演。日本でも格段に知名度を上げてのリリースとなる。本稿では、そんな注目盤をケルヴィンの発言も交えながら紹介していこう。まずは〈痛みと無情〉なんていう、何とも痛々しいタイトルについて。

「俺とダニエルは今回のアルバムまでに、いくつもの悲惨な出来事やトラウマを経験してね。俺は『The Glorious Dead』のツアー前に結婚したんだけど、すぐに離婚したんだよ。あれは言うまでもなく、物凄い苦痛を伴う事件だった。で、そうしたエモーションに対して、無情に立ち向かわなければいけないと思ったんだ。少なくとも自分は、この難関に対して思う存分、無慈悲にタックルしてやるぞ、と。そういうノリでタイトルを決めたんだな」。
曲の内容も辛いものが多そう……。もっとも、「西部劇っぽいフィーリング、具体的には『The Good, The Bad And The Ugly(続・夕陽のガンマン)』みたいな響きを持たせたくて、最初は『The Hurt & The Merciless』にするつもりだった」と言うから、そのへんは軽いか。
さて、本作は2014年6月に作りはじめ、昨年8月にすべての作業を終了。約2年をかけている。
「過去の作品と比べても長いプロセスではあったけど、今回は異なるアプローチを取ったからじゃないかな」。
これまでの制作方法は、ケルヴィンやダニエルが自宅で作ったデモをスタジオに持ち寄り、そこに他のメンバーが各自のパートを加え、好きなパートをすべてキープしたうえで、「コンピュータ画面を相手に、テクノロジーを使って曲を形にしていった」というもの。サンプリング、カット&ペースト、ループなども用いて、言わば生のバンドがヒップホップをやっているような感覚だ。
「俺は自分たちについて、〈コンテンポラリーな資材を使って、ヴィンテージな音を鳴らすバンド〉というふうに形容してきたんだ。ヘヴィーはビートを超タイトにすることもできるし、ほとんどループのように演奏することもできるけれど、実はテクノロジーを駆使しているんだな。だけど、『Hurt & The Merciless』について言うと、サンプリングやループを使ったのは……おそらく全体の20%程度」。
一度レコーディングした曲をライヴ向けにリハーサルし、実際にツアーに出て演奏していくと、それらの曲が変化することに改めて気付いたらしく、「今回はまず曲そのものをばっちりモノにすることを最優先させた」とか。その過程で曲/パフォーマンスも自然に練られ、変化していった模様だ。
レッドゾーンに振り切ろうぜ
2007年のデビュー時には〈カーティス・メイフィールドとレッド・ツェッペリンがセッションしているよう〉とも評されていた通り、彼らのサウンドはロックに潜むソウルが大きな要素となっている。本作も冒頭曲“Since You Been Gone”は、まんまじゃないにせよ、テンプテーションズ“Get Ready”風だったりする。いずれにせよ、リード・トラックとして申し分のない派手な始まりだ。それを支えるのはバンドのリフと、そして一丸となったゴージャスなホーンズ+ストリングス+10名を超えるコーラス隊。ヘヴィーは基本的に4人編成のバンドであるが、ライヴにおいても多数のサポート・ミュージシャンを起用してきた。そうしたサポーターが今回はこれまで以上に活躍。とりわけ、“Since You Been Gone”でホーンのアレンジとスコアを書いているキーボード奏者のトビー・マクラレンは、重要なライヴ・メンバーであり、ケルヴィンのアイデアをカタチにしてくれる人物だそうで。
「トビーは素晴らしいセンスの持ち主だからな。俺が何かグレイトなラインを思いついて歌ってみると、それを曲として具体化するために必要なスタックを割り出してくれるんだ。頭に浮かんだメロディーを伝えたら、〈OK! こういう感じにしたいのか!?〉と試しに何か演ってくれて、こっちも〈うんうん! でも、それよりも何というか、エディ・フロイドの“Big Bird”みたいなノリがいいな〉と返す。で、驚いたことに彼はそれらを完璧に翻訳してくるんだよ」。
60年代のスタックスを代表するスター、エディ・フロイドの名前が出たついでに、「俺はもともとかなりのグレイト・ディガーだし、古い7インチ・シングルだの、忘れ去られた音楽を掘り起こすのが本当に好きで、60年代後半から70年代にかけてのメンフィスのハイやスタックス作品、アン・ピーブルズやシル・ジョンソン、アル・グリーンといった人々と、彼らのホーン・アレンジメントのファンだ」ともケルヴィンは語っている。
一方で、90年代から2000年初頭にかけてのヒップホップを愛し、また一方で「ソニックスだとか、ファビュラス・ウェイラーズみたいなガレージ・ロック・バンドが大好き。要するに俺は、メーターをレッドゾーンに振り切るような激しいものも好きなんだよ」とのこと。もちろん、新作もそうした嗜好が全開だ。ノーザン・ソウル風味が出た“Turn Up”、サザン・ソウル・バラード調の“Goodbye Baby”、マリアッチっぽいアレンジが効いた“Nobody's Hero”、怪奇リズム&ブルース/ジャイヴ趣味の“A Ghost You Can't Forget”から、キンクス“You Really Got Me”のリフを使った直球ガレージ“What Happened To The Love?”などなど、ミクスチャーぶりを見せながら、ヘヴィーという名のひとつの世界に落とし込んでいく。
スタジオ内で生演奏を練っていくという作業により、メンバー全員がよりダイナミクスを込めたパフォーマンスを行えたのではないだろうか。なお、今年も〈フジロック〉に登場することが決定した彼ら。ひと回り大きくなった姿が観られる日を、ファンは期待して待つべし。
『Hurt & The Merciless』が情け容赦なく喰らいつき、共鳴してみせたサウンド・フレイヴァーを勝手に分析!

ヘヴィーの良きライヴァル、アラバマ・シェイクスが今年のグラミーを席巻した事実は、ヴィンテージな鳴りのロックがメインストリームで支持されている大きな証拠と言えるだろう。そのアラバマでフロントを張るブリタニーの覆面バンドが放った本作も、期待通りファットなロックンロールの大洪水。

本文にもある通り、活動初期からたびたびツェッペリンと比較されてきたため、ヘヴィーのメンバーはウンザリしているかもしれないが……。英国人らしい距離感と憧憬を抱きながらUS南部音楽を咀嚼し、それを激グルーヴィー&ハードなロックに落とし込む手法は、やはりこの大先輩と物凄くよく似ている。

棺桶から出てくるパフォーマンスで人気を博したリズム&ブルース歌手。ジム・ジャームッシュ映画の大ファンだと公言するケルヴィンとダニエルは、当然ここを通っているはずだ。ほら、新作収録曲“A Ghost You Can't Forget”の効果音で確認できる古臭いホラー風情なんてモロだし。

タランティーノ最新映画の予告編でヘヴィーの曲が流れていたのも記憶に新しいが、本作はそのタラ作品を機に再評価された一枚。新作での“Miss California”や“Nobody's Hero”におけるいかがわしいマリアッチ感覚が、モリコーネ製の同テーマ曲などマカロニ・ウェスタンのサントラに由来していることはまず間違いない。

『Hurt & The Merciless』の随所で顔を出すブルース志向に共感した方は、シカゴのエレクトリック・ブルース界を背負って立つこのギタリスト/シンガーをぜひチェックしてみてほしい。ジミヘン的なゴリゴリのサイケ感と70sソウルのテイストが無理なく同居した彼の新作もまた、先日リリースされたばかり。

新作全体に漂うささくれ立った雰囲気というか、リズム&ブルースを下敷きにしたワイルドなガレージ感は、やはりソニックス譲りか。良い意味でガサツな演奏、荒っぽいシャウト、生々しい音質――本作はすべてにおいてレヴェル・オーヴァーな、一家に一枚の大名盤。ケルヴィンが好物と語るのも聴けば納得。

自動車とソウルの街、デトロイトの空気を思いっきり吸い込んだミッチ・ライダーの迫力満点な黒いロックンロールは、後進に多大な影響を与えてきた。そして、代表曲〈悪魔とモリー〉を収録した猥雑極まりない本2作目の誕生から50年、ヘヴィーも“What Happened To The Love?”あたりでそのスタイルを継承。

ジェイムズ・ブラウンと並ぶファンキー・ソウルの代表格。ヘヴィーは2009年に“How You Like Me Now?”でこのグループの曲を大胆にサンプリングしていたけど、今回はネタとして使うのではなく、跳ねるリズム、パーカッシヴなホーン隊、張りのある歌声など、生演奏で彼らに敬意を表している!?

地下シーンでカルト的な人気を誇るインド系カナダ人のキング・カーン率いるこのバンドは、ガレージ・ロックにJB的なファンク・マナーを採り入れたソウルフルなサウンドが身上。めざす方向はヘヴィーと同じか。似たテイストのグループとして、デトロイトのダートボムズもここでオススメしておきたい。
洋楽アーティストのブレイクの糸口はTVCMにあり!?
リリースから1年半が過ぎていたにもかかわらず、〈桃太郎〉を実写化したペプシコーラのCMが流れるやいなや、ヘヴィーの『The Glorious Dead』が爆発的にヒットしたのを目の当たりにして、〈いまだにTVの影響力は大きいんだな~〉と実感させられた2014年。
同様に、カーリー・レイ・ジェプセンやファン、ロンドン・グラマーが日本でブレイクしたきっかけはTVCMでしたし、今年に入っても、深キョン主演ドラマ「ダメな私に恋してください」の挿入歌=ジェス・グリンの“Hold My Hand”が、aikoの主題歌を差し置いて同番組のCMに使われた際、〈お問い合わせが殺到したんですよ!〉と、タワレコの店舗スタッフが教えてくれました。
いま挙げた例は、各々が注目のニューカマーとして世界的に注目されていた時期に重なる起用ですが、〈Google検索 夏のお出かけ篇〉に曲を書き下ろしたクリストファー・チュウ(ポップ・エトセトラ)、2月末に解禁されたキユーピーの新ヴァージョンCMも好評のコンピューター・マジック、アルバム・デビューの1年前にスズキ ワゴンRのバックで華麗な走りを見せていたマデオンなど、本国に先駆けて日本のお茶の間に名前を広めたアーティストもチラホラ存在。また、キシ・バシやマイア・ヒラサワの才能をいち早く拾った花王エッセンシャルのCMには、〈次は誰の曲をフィーチャーするの!?〉と、それこそ一時のApple社みたいに、早耳リスナーから熱視線が注がれていましたっけ。
しかし、こうしたケースはわが国の広告業界全体から見ると少ないのもまた事実。いつまで経ってもT・レックス“20th Century Boy”やデレク&ザ・ドミノス“Layla”、ローリング・ストーンズにティアーズ・フォー・フィアーズのあれこれを使い回し、はたまた高い使用料を払って(!?)テイラー・スウィフトなど大スターの曲を……といった状況が続いています。CMクリエイターや代理店の皆さん、若手にもどんどん光を当てて、一緒に洋楽市場を盛り上げていきましょうよ!