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フランク・オーシャン“Seigfried”などシュルツ監督が愛するミュージシャンたちの今の時代を映す31曲が物語を鮮やかに彩る!

 アフリカン・アメリカンの主人公タイラー・ウィリアムズが運転する車のカーラジオから流れているのは、アニマル・コレクティヴの“FloriDada”。タイラーと助手席の恋人は、いちゃつきながら、トライバルなビートに合わせて大声で一緒に歌っている。このオープニング・シーンだけで、タイラーの人生がまさしくマイアミに降り注ぐ陽光のように目映いばかりであることが伝わってくる。現に彼は、フロリダの裕福な家庭に生まれ、高校のレスリング部の花形選手で、おまけに美しい恋人がいる。ただし、彼のトレーニングのコーチでもある父親は、ものすごく厳格で、「成功するには他の者の10倍努力しろ」と息子に檄を飛ばす。このプレッシャーが、タイラーの人生の歯車を狂わせていき、ついにはウィリアムズ家に悲劇が訪れる──「WAVES/ウェイブス」の前半は、このような物語だ。対して、後半はタイラーの妹エミリーの物語になる。タイラーと違って、彼女はもともと引っ込み思案。しかも兄が起こした事件が原因で、家族は崩壊寸前であり、家にも学校にも居場所がない。ところが、兄と同じレスリング部にいたルークと出会ったことをきっかけに、険しい現実に立ち向かい、新たな人生を切り拓いていく。

 

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 こうした二部構成の「WAVES/ウェイブス」は、音楽と映像によって描かれていく〈人生の光と影〉、そして〈再生〉の物語だ。登場人物の心理状態は、台詞以上にオリジナル・スコアを含めた音楽と、大胆なカメラワークや画面の比率が変化する映像によって表現されている。トレイ・エドワード・シュルツ監督が自ら選曲した計31曲は、ダイナ・ワシントンの“What A Difference A Day Makes”を除くと、アニマル・コレクティヴやケンドリック・ラマー、レディオヘッド、タイラー・ザ・クリエイターなど、エッジの効いた現代のポップ・ミュージックばかり。その中でも、きわめて印象的なのは、フランク・オーシャンの“Seigfried”だ。短髪のタイラーは、フランク・オーシャンと同じように髪を脱色している。そしてオーシャンの曲は全部で5曲も使われている。だから「WAVES/ウェイブス」はまるでオーシャンのために作られたのではないかと思ってしまうほどだが、ともあれ、美しさともの悲しさの均衡が絶妙に保たれたシーンに流れる“Seigfried”はすごく心に響く。そしてさらなる極め付きの選曲は、エンドロールで流れるアラバマ・シェイクスの“Sound & Color”。歌詞を聴くと、この“Sound & Color”がラストにふさわしい曲であることを実感するが、まさに本作のテーマを収斂している。なぜなら「WAVES/ウェイブス」は、色のない人生に陥った者たちが、〈音〉も〈色〉もある人生を取り戻していく物語なのだから。

 


「WAVES/ウェイブス」
監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
音楽:トレント・レズナー/アッティカス・ロス
出演:ケルヴィン・ハリソン・ジュニア/テイラー・ラッセル/スターリング・K・ブラウン/レネー・エリス・ゴールズベリー/ルーカス・ヘッジズ/アレクサ・デミー 他
配給:ファントム・フィルム(アメリカ 2019年 135分 PG12)
2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
http://www.phantom-film.com/waves-movie/