夢を追うすべての人に寄り添い、肯定する歌を届けたい――デビュー2年目を迎えたシンガー・ソングライターが、歌い手として成長するべく剥き出しのバラードに挑戦!
メジャー・デビューから1年。コンスタントにシングルをリリースし、ライヴをじっくり重ねながら、「曲というボールを受け取ってくれる存在や場所が明確になった」と瀧川ありさは語る。4枚目のシングルとなる新作“Again”は、いまの瀧川が向き合うべき課題をクリアするために制作された。それは、シンガー・ソングライターとしていかに説得力のあるバラードを歌えるか、ということ。バンド・サウンドがみずからのバックボーンであり、そこに強いこだわりを持っている瀧川はしかし、これからソロのシンガーとして長い音楽人生を過ごしていく決意をしたからこそ、バラードを自分のものにする必要があった。
「私はバンドで多くのことを培ってきた人間だから、それが軸であるのはずっと変わらないと思う一方で、ソロとしてはそれが足かせになってしまうこともあると思うんです。これまでリリースした3枚のシングルはバンド・サウンドにこだわってきたんですけど、デビュー2年目に入ったいまの自分が挑戦すべきことは何かを考えたときに、ミディアム・バラードを作ろうと思った。正直、これまでの私は自分の歌唱力を向上させることはもちろんですが、それ以上に、サウンドメイクに時間をかけてきたんですよね。でも、ソロで活動していく上で、歌唱力をもっと磨かないといけないのは確かだし、だからバラードを作っていい意味で自分を追い込もうと思ったんです」。
デビュー時から彼女を支える渡辺拓也が編曲で関わったこの曲は、生のピアノとストリングスをフィーチャーしたシンプルなアレンジ。瀧川のヴォーカルは、凛としていて、包容力さえ感じさせる。それは、歌詞の内容についても言えることだ。どこか母性さえ窺える筆致で、〈未来は君を守る/君が時代をつくる〉と若者の夢を全肯定する。歌詞のメッセージを曖昧にしないことが、瀧川の信条だ。
「私は自分が小さい頃から、努力してる人に強い憧れを持って生きてきたんですね。学生時代には放課後、マネージャーでもないのにバスケ部の部室にずっといたり(笑)。だから、夢を語り合っていた友達が途中で諦めたりすると、自分のことのように悲しくなる。この曲はそういう自分に対しても歌っているし、〈君〉にも歌っている感覚があって。みんな誰もがもがきながら生きているから、相手を肯定する余裕のない人が多いと思うんです。褒めてくれる人が不足しているなら、私がその役割を担おうと思う。説教臭くない歌で、みんなを肯定したい。そういう意味でも“Again”は、私が音楽をやっている意味を凝縮した曲でもありますね」。
カップリングの“I know”は彼女がバンド時代に制作した曲で、瀧川のエモーショナルなロック感が、バック・ビートを軸にしたドラマティックな展開を見せるサウンドによって形象化されている。「この曲をカップリングにできたのも“Again”がリード曲だから」と瀧川は言う。
もう1曲の“ハナウタ”は、瀧川が「ずっとご一緒したかった方です」という元Cymbalsの矢野博康をアレンジャーに招いている。〈洗練と熟成〉を満たすウェルメイドなサウンドの上で豊かな情感を湛えた歌が映えるナンバーだ。そしておそらく、瀧川は近い将来にファースト・アルバムに向けた制作に入るだろう。
「アルバム制作は未経験なので、曲作りに関してもいろんなことを試したいです。それがいまから楽しみですね」。
やはりこのタイミングで瀧川ありさというシンガー・ソングライターの核心と多面性を提示できた意味は、とても大きい。