インタビュー

ぐるたみん第2章の幕開け! ネット界最重要人物が辿った紆余曲折の日々と、シングル“GIANT KILLING”で見せる新モードを語る

ニュー・シングル“GIANT KILLING”ミュージック・ビデオの場面写真

 

ネット・シーン最重要ヴォーカリストとの呼び声も高いぐるたみんが、このたびレーベルを移籍して初のシングル“GIANT KILLING”をリリースした。2009年にニコニコ動画の〈歌ってみた〉に投稿した動画が話題を呼び、これまでに派生動画の再生回数が1億回を超えているという。2011年のアルバム『ぐ~そんなふいんきで歌ってみた~』でCDデビューし、オリコン・ウィークリー・ランキングで5位を獲得。以降にリリースした3枚のアルバムはすべて同ランキングでトップ10入りを果たした。また、2014 年に全国5大都市を回ったライヴ・ツアーでは、1万人以上を動員するなど、ライヴ・パフォーマンスにも定評がある。

これまでカヴァーにも積極的に挑戦してきたぐるたみんだが、“GIANT KILLING”ではすべての収録曲をみずから作詞・作曲を手掛け、ソングライティングの面でもその才能を発揮している。また、アーティスト・ロゴを一新したり、初めて実写のミュージック・ビデオを制作したりと、〈ぐるたみん第2章が遂に始動〉という謳い文句の通り、新たな試みに意欲を示している印象だ。ぐるたみんの音楽は、例えばV系や電波ソングがそうであるように、邦楽チックな文化として独自の進化と洗練を遂げたものだと思う。もちろん、彼は洋楽も聴いて育ったわけだが、J-PopやJ-Rockの特性を濃縮したようなコード進行、曲展開が楽曲の輪郭を際立たせている。

ぐるたみん GIANT KILLING UNIVERAL-W(2016)

それに加えてニコニコ動画出身ということは、ぐるたみんの活動に大きく反映されているように思う。画面上に流れるリスナーからのコメントを読み、自分に求められているものをリアルタイムで実感できるのがニコ動というカルチャー。反応がダイレクトに返ってくるのである。 だからこそぐるたみんは、そうした反応を敏感に察知して、自分がいまなすべきことを直感的に読み取って次の一手を考えてきた。こうしたサーヴィス精神は、彼の生まれ持ったものでもあったようだが、ニコ動との相性は特に良かったのだろう。そして、そんな彼がいま自分に求められているものを素直に表に出したというのが今回の“GIANT KILLING”。自分の信念や想いをストレートに託した歌詞は、メッセージ性が強くポジティヴ。このポジティヴィティこそ、いまのぐるたみんのモードを映し出すものだろう。インタヴューでは、そういったモードに至る心境にも迫ってみた。

 

〈第2章が遂に始動〉とありますけど、本人的には第3章なんですよね

――ぐるたみんさんの音楽的なルーツとして大きいのはどのあたりなんでしょう?

「たぶん父親ですね。親父がジャズ・ピアニストなんですよ。全然有名じゃなくて、年に1回ライヴやるような、言わば素人なんですけど、家ではずっとジャズが流れてました。子供の頃の映像を観ると俺めっちゃ踊ってるんですよ、ジャズに合わせて(笑)。それで小学校に上がる前に親父に連れられてジャズのライヴに行くんですけど、それがまたつまらなかった(笑)。小さいから良さがわからなかったんでしょうね」

――家庭環境が大きかったと。

「音楽って昔からあたりまえに身近にあるものだったんですよ。好き嫌いの感情がなかったぐらい、自分の中に入り込んでいるものだった。うちは超騒がしい家で、妹は女性アーティスト、自分は男性アーティストの曲を部屋でかけていて、親父の部屋からはジャズやクラシックが鳴っていると。もう爆音でしたね。さらに妹と俺は歌って、親父はピアノを弾いていて(笑)」

――その頃の体験は、いまの音楽に何か反映されていますか?

「どこかしらあるんじゃないかなと思いますね。ジャズはコードが複雑じゃないですか。 だから、いまでも複雑なコードを違和感なく使えるんです。編曲してもらう時に人に投げると、コードを直されたりとかしますからね。〈もうちょっとストレートにいったほうがいいんじゃない?〉と言われたり」

――ほかによく聴いていたのは日本のロックやポップスですか?

「そうですね。ウルフルズゆずコブクロとか」

ウルフルズの2005年作『9』収録曲“暴れだす”

 

――ぐるたみんさんの音楽は、すごく邦楽チックなイメージがあるんです。例えばヴィジュアル系の音楽がそうであるように、J-Popを聴いて育った人が作った音楽というか。海外の人から見るとすごく独自の進化と洗練を遂げている領域だと思うんですが。そのあたりはご自覚ありますか?

「うーん、どうでしょうね……。ただ、コードが複雑でどんどん展開していくタイプの曲が好きなので、そういうところが邦楽っぽいのかもしれませんね。洋楽も聴くんですけど、そういった類の曲が好きですね。ストーリー・オブ・ザ・イヤーフー・ファイターズとか」

フー・ファイターズによる2002年作『One By One』収録曲“Times Like These”のパフォーマンス映像

 

――音楽活動を始めたのはいつ頃ですか?

「昔から曲を作ることが好きで、小学校の頃から親父の持ってたキーボードで曲を作っていたんです。それでいつかシーケンサーを買ってもらって、さらに曲作りが楽しくなった。でもライヴはやったことがなかったから、作曲家になろうと思ったんですね。実は音楽の専門学校に行ってから、一回作曲家事務所に入ってるんです。でも自分の曲が全然受け入れてもらえなくて……残念でしたね。それでもう音楽は諦めようと思った時に、友達がやっていたのを真似してニコニコ動画の〈歌ってみた〉を半分遊びでやってみたんです。そしたらコメントをもらえたんですよね。たった6コメントくらいだったんですが、それがすごく嬉しくて。作曲家として活動していた時は誰からも反応がなかったんですよ。ディレクターの人に曲を渡しても、〈いいですね、じゃあこれでOKです〉ぐらいのコメントしか返ってこなかった。 だから、単純にコメントが嬉しくて放送を続けてたんですよ。それがあったからいまがあると思っていて」

――そうだったんですか。

「だから〈ぐるたみん第2章が遂に始動〉と謳っていますけど、本人的には第3章なんですよね。作家活動があって、〈歌ってみた〉があって、いまはそれらの融合というか、集大成みたいな感じで」

 

ファンの人たちのためにも武道館が目標

――ニコニコ動画はコメントがリアルタイムでダイレクトに返ってくる文化ですよね。だから、ぐるたみんさんもその反応をキャッチしながらリスナーを楽しませていく能力がすごく高いんじゃないかなと思っていたんですけど。

「そうかもしれないです。作ったものをまず出してみて反応を見てすぐ修正するようなことはいまもあるので。反応を敏感に察知して、自分の頭を切り替えて違うものを作るという。それをやってきたからたくさんの人に聴いてもらえたんだと思うし」

――音源をリリースした後に反応を見て、次に活かしたりはしますか?

「それはやりますね。例えば歌に関してだったら、〈ちょっと暑苦しいよね〉とか言われることがあって、じゃあもうちょっとサラッと歌ってみようかと試してみたり、ミックスで〈リヴァーブ強いよね〉と言われたら変えてみたり。いまはMVが出たので、その反応が少しずつ返ってきていて、次はどういった修正を加えていこうかと考えていますね」

――反応はTwitterを見たりですか?

「そうですね。あとはニコ動のコメントとか見たりとか。でもおのずと雰囲気でわかるんですよ。〈ああ、私もそう思う〉みたいな流れが自然と出来上がるから」

――ライヴの時のお客さんからのレスポンスって、ニコ動の時のコメントが返ってくる感じとは違います?

「うーん、全然違うんじゃないですかね。ニコ動を見てる人は良くも悪くも好き放題にコメントしますけど、ライヴに来てる人はまず絶対的に楽しみに来てるじゃないですか。お金を払って来てくれているから、楽しまないと損ぐらいの感じで。でも、いまニコ動で〈歌ってみた〉をやるのはちょっと難しいですね」

――というのは?

「いまはオリジナル曲をメインでやっていくと自分のなかで決め込んでいるから、そこで(〈歌ってみた〉を)やるというのはどうなのかなと……。でも、楽しいから止めるつもりはなくて、遊びというか趣味感覚でやりたいなとは思っています。それもまたファンの方々には待っていてほしいですね」

――放送をする時は事前に告知されるんですか?

「これまであんまり告知しないでやっていたんですけど、最近はしたほうが良いと言われるんですよね。たぶん、自分のなかで予定を決めちゃうのが嫌なんだと思います。やりたいと思った時にふらっとやるのが気楽でいいかなと」

――最近はツイキャスもやられてますよね?

「はい。いまはツイキャスのほうが落ち着くかもしれないですね。ツイキャスはコメントが縦に流れてすぐに見えなくなるんですよ。ゆっくりスクロールしていくのではなくてパッと切り替わるから速すぎて読めないんですが、それが逆にいいんです。ネガティヴなコメントを読んで落ち込むことがないので、精神衛生上はいい(笑)」

※ツイット・キャスティング。iPhoneやAndroid端末、PCなどから手軽にライヴ配信ができるサーヴィス

――今回、“飛行少女と僕”というオリジナル曲を初音ミクに歌わせたものをリリースしていますよね。これを出そうと思ったのは何故?

「あれは自分を育ててくれたニコニコ動画への恩返しというつもりもあって。〈歌ってみた〉をずっとやってきて、ニコ動から離れたくないという気持ちはあるけど、一方で自分のオリジナル曲を聴いてほしいというのがあって。だったらボカロもありかなと」

“飛行少女と僕”アニメーションの場面写真。視聴はこちら

――改めて、今回の作品を通じて新しいフェイズに入ったという気持ちはありますか?

「レコード会社を移籍したというのが一番大きいですが、あります。昔は〈歌ってみた〉というジャンルでカヴァー曲をやってきたけど、先ほども言ったように、いまはオリジナル曲を作詞・作曲していこうという気持ちが強くなっているので。これまでもオリジナルはあったんですけど、今後はそっちをメインにやっていこうと思っているところです」

――移籍は結構大きな区切りになっていると?

「前の会社を辞めて一度フリーランスになったんですよ。プロ野球で言うとFA宣言をした感じ(笑)。自分の目標として武道館でライヴをやるというのがあって、それをめざすためには新しい場所でやっていくのもありかなと思って。本当に周りに迷惑をかけてしまっているんですけど、自分のわがままで辞めさせていただきました。スタッフの皆さんが〈応援している〉と言ってくれたのは本当にありがたかったですね」

――なぜ武道館を目標にしようと思ったんですか?

「2枚目のアルバムが出た時に全国ツアーをやっていて思ったんですよね。ニコ動でぐるたみんを知ってくれたいろいろな地方のファンの人がいるので、東京でライヴをやったら〈大阪に来てくれないんですか〉と言われて、大阪でやると今度は〈岡山に来てくれないんですか〉〈神戸に来てくれないんですか〉となる。それで去年は20か所で21公演やったんですけど、それでもやっぱり〈うちには来てくれないんですか〉と言う人が結構いて。だからそういったファンの人たちのためにも一回、誰もが満足するようなでっかいイヴェントをやろうと思ったんです。そうなったらもう武道館だろうと」

ぐるたみんの2015年のシングル“JOURNEY”

 

――今回、これまでと違う層に刺さってるという実感はありますか?

「MVを公開した時に、中国ですごく盛り上がっていたのは嬉しかったですね。あとは、Twitterで著名人の方が誉めてくれたり。ヤラセじゃないのか?と最初は思いましたけど(笑)。ただ、1曲だけじゃ反応はそこまで来ないんじゃないかと思っていて。ニコ動の時も、〈歌ってみた〉で1曲上げて急に人気が出たわけじゃなくて、ブレイクしたのは10曲目(“【うるおぼえで歌ってみた】only my railgun【ぐるたみん】”)を出した時なんですよ。ちょうど10曲目でカテゴリー・ランキングというもので自分の動画が9曲くらい埋まって。だから経験的に〈1曲だけじゃ無理でしょ〉とは思っていて」

――アーティスト写真を公開しないのは何か理由はあるんですか?

「ニコ動で顔を出さずにやってきて、その流れで出すタイミングを見失ったというか。今回は実写のMVを作ったんですけど、アーティスト写真は撮らなかったですね。でも、そのほうがいろいろと都合がいいんですよ。公共機関とかテーマ・パークに行っても全然バレずに遊べますし(笑)。でも前に、ライヴの次の日にディズニーランドへ行った時、〈昨日のぐるたみんのライヴのグッズがさ……〉という話が後ろから聞こえてきて、〈ヤバいヤバい〉みたいなことはありました。街を歩いていて声を掛けられたことは2、3回くらいはありますけど、でもそれもライヴに来てくれたお客さんのみですね」

――ぐるたみんさんへの評価として、歌が上手いというものがあると思うんですが。

「いや、全然そんなことないですよ。自分で上手いと思ったことは本当になくて。上手いと言うよりは良い音を出そうとずっと思っていて、音の良し悪しや声色についてはずっと考えていますね」

――まあ、歌が上手いと一口に言ってもさまざまな捉え方がありますよね。

「ピッチがちゃんと当たって、みたいなところじゃないですかね。技術的にヴィブラートができてたり、安定して聴こえるとか」

――安定しすぎてエモーションが削がれることはないですか?

「でも、エモーションも技術ですからね」

――ああ。ではヴォーカリストとして、自分のライヴァルだと思う人は誰だと思いますか?

「“GIANT KILLING”の歌詞にも書いているんですけど、ライヴァルは自分自身だと思いますね。〈昨日までの自分を超えろ〉というのがいつもテーマになっていて。それはもうずっと昔から考えています。とにかく毎日どんどんグレードアップしていこうと。まあ挫折することはたくさんあるし、不安や恐怖もあるけど、一歩一歩努力して乗り越えることがやっぱり重要かなと思って」

――今回のシングルは、そういったメッセージ性が強く出た歌詞になってますよね。

「そういうものをいま求められているなと思ったんですよ。それは予想してなかったことなんですけどね。もともと〈歌ってみた〉でほかの人の曲を歌っていたのが、いまは自分の想いを込めた自分の曲を歌うことを求められている。そう思ったから“GIANT KILLING”みたいな歌詞が書けたんです」

――やっぱり、求められているものやリスナーの反応を察知しつつメッセージ性の強いものを出してきたわけですね。

「そういったサーヴィス精神的なものは強くあって、〈やっぱりみんなこういう曲が聴きたいんだよな〉といったことは、どうしても考えちゃいますね。それはもう昔からのことで、小学生の時に曲を作っていた頃からどういう曲が好まれるんだろうというのを常に考えていました。それでいまは自分が伝えたいことをもっと前面に出してもいいのかなと思っていて、そういうものを出してもちゃんと聴いてくれている人がいるんだなという実感もあったので、自然とメッセージ性の強い歌詞になりましたね」

“GIANT KILLING”MVメイキング映像。ぐるたみんのコメントとシルエットを確認することができる

 


〈LIVE-G 2016 GIANT KILLING PRESENTED BY UNIVERSAL-W〉
日時:2016年4月29日(金・祝)
会場:赤坂BLITZ

〈LIVE-G TOUR 2016 -GIANT KILLING〉
6月18日(土)仙台JUNK BOX
6月24日(金)札幌CUBE GARDEN
7月9日(土)熊本B・9 V2
7月10日(日)福岡BEAT STATION
7月23日(土)名古屋RADホール
7月30日(土)大阪MUSE

※詳細はこちら

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