稀代のシンセサイザー作曲家が去って、はや5年の月日が過ぎた。亡くなる前日まで全く作曲意欲が衰えなかった氏が最晩年手掛けたのが、最新のVOCALOIDと古典オーケストラという一見相反するシステムの橋渡しであった。それは常に最先端を走り続けていたTOMITAにとって最後に訪れた〈宿命〉だったのだろう。日本人の原風景〈イーハトーヴ〉を題材に機械と人力が空想の世界を現実の音として紡ぎ出す様は、正に桃源郷を思わせる。今回アナログでの発売に至り、幻想性に深みをもたらすことができたのは、僥倖と言うほかない。イラストレーター〈Rella〉による初音ミクのイラストも好きな方にはたまらないものだろう。