言葉でピアノを奏でる 人気ラジオ番組からのシリーズ最新盤
ピアニストの小原孝がパーソナリティを務めるNHK-FMの『弾き語りフォーユー』。リスナーからのリクエストに応え、小原があらゆるジャンルの曲をピアノにアレンジして演奏する人気ラジオ番組も、今年で18年目に入った。
「生放送ではありませんが、限りなく“生”に近い形で収録しています。ピアノのそばにマイクがあって、毎回オープニング・テーマを弾きながら“こんにちは、小原孝です”って。そしてリスナーからのお便りを読んで、“ではお聴き下さい”と言って弾くという。ですからお便りの内容によって、僕の演奏も毎回変わってくるわけですね。同じ曲でも、二度と同じアレンジにはなりません」
そしてこのたび、番組発となるアルバムのシリーズ最新作が登場した(全曲新録音)。ポップスからクラシックまで幅広い内容だが、初音ミクが歌ってヒットした《千本桜》まで入っているのには驚き。しかも原曲ではあれだけハードなリズムの刻みを、小原はいとも軽やかに、スタイリッシュに弾きこなしている。
「《千本桜》は僕にとって挑戦でしたね。普段あまり弾かない、僕とは結びつかないような曲を、あえて入れてみようかなと思って。レコーディングは大変でしたけど、がんばりましたよ(笑)」
オフコースや竹内まりやといったポップスの名曲では、ピアノが紡ぎ出すメロディに合わせて、歌詞が聞こえてくるように感じられる。
「ラジオではお便りを読んでアレンジのインスピレーションを得ますが、CDの場合は歌詞を読み込んで、そこで歌われている情景や感情をイメージしています。どちらかというと言葉重視のタイプですね、僕は。大学の講義でも“言葉で弾く”ということをよく教えています。たとえば楽譜に“ドレミ”と書いてあるのを、“そうだね”って言いながら、言葉を当てはめて弾くと違うふうに聞こえるんですよ」
とても印象的だったのが、小原自身の作曲による《平和のチャイム~和平のチャイム》。すべて不協和音によって書かれたチャイムの旋律が、なんとも美しい響きを放ち、続くサティの世界への導入となっている。
「サティは今年が生誕150周年ということで4曲入れましたが、学生時代から輸入版の高い楽譜を買ったりして、よく弾いていました。今回はほとんど気付かれないくらいの、さり気ないアレンジを施しているのですが、分かりますかね?」
ボーナス・トラックには尺八奏者藤原道山との共演による、郷愁に満ちた《浜辺の歌》。どこまでも聴く人の心に寄り添ってくれる一枚である。
LIVE INFO
小原孝ピアノコンサート2016
○7/9(土) 14:00開演
会場:そぴあしんぐう大ホール (福岡)
小原孝ピアノリサイタル
○7/15(金)19:00開演
会場:東京文化会館小ホール(東京)
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