夜の街に似合うダンサブル&ファッショナブルなネオン・ポップが揃った新作。走り続けながら、さらなる自由と解放を求めて彼は叫ぶ――Don't Stop Me Now!
これまでにやったことのない音楽を作りたい――。そんな一心で制作に臨んだという前作『SO GOOD』は、未知への挑戦の連続だったゆえ「精神的にはとても辛くて大変だった」と語るJUNHO。その経験を経て生まれた4枚目のミニ・アルバム『DSMN』は、彼の作品のなかでもっとも音楽的な深化と進化を感じさせる一枚となった。
「前作は自分が本当にやりたい音楽について考えるキッカケを与えてくれたんです。それがあったから、今回はテーマが〈自由〉と〈解放〉になりました」。
「夜の街の華やぎ。暗闇の中で光り輝いているもの。今回はそんなイメージがあって、ネオンサインの独特の色味が思い浮かぶ」という本作。妖しさとギラつき。神秘性と革新性。洗練と異端。本作は現行の海外ヒップホップ/R&Bに目配せしたファッショナブルなサウンドが並ぶのも特徴だ。
「トレンディーなアルバムを作りたいと思ったんです。最近はジャンルレスでハイブリッドな音楽が主流になってきてますよね。もともと僕はいろんな音楽を聴くので、それを活かした曲作りをして、いろんな要素が混ざり合った、ジャンルに捕らわれない音楽を作りたかったんです」。
幕開けは2PMの同胞Jun. Kを迎えた攻撃的なヒップホップ・チューン“HYPER”。この二人だけで1曲やるのは初めてだが、「Jun. Kは何をするにも妥協しない完璧主義者。100%信頼してるし、すべてお任せで、実際レコーディングもあっという間に終わった」そうだ。禁断の恋をテーマにした“毒(On your mind)”は80年代ブギーの影響を感じさせるスムースなミディアム。レトロなジャズから始まる“YES”はハネたビートが抜群に気持ち良いプロポーズ・ソングだが、ファンとしてはイントロの〈もう離さないよ、何があっても永遠に〉という台詞にキュン死だろう。
「そのセリフをレコーディングするときはすごく恥ずかしかったです(笑)。実はその部分は、朝、一緒に二人で目覚めて、ベッドの中で彼女の耳元に囁くっていうシチュエーションをイメージしていて。ファンの方はそういうシチュエーションごと想像してもらってもいいかも(笑)」。
“Run to you”はリアーナやドレイクのヒット・シングルを想起させるトロピカル・ハウス×ダンスホール・レゲエな一曲。また、初回盤Bのみに収録される3曲は耽美エントなオルタナティヴR&Bや軽快なアーバン・エレクトロ・ファンクなど、USサウンド志向をさらに反映させた楽曲群で、JUNHOの遊び心や実験精神が窺える。そうして自身に潜在する多彩かつ多才なソングライティング・スキルを全面開放した今作だが、彼はどんな音楽に影響を受けてきたのか。〈無人島に持っていきたい3枚〉という定番の質問を投げ掛けてみた。
「“Love”が入ってるミュージック・ソウルチャイルドの『Aijuswanaseing』と、“Smooth Criminal”が入ってるマイケル・ジャクソンの『Bad』。あとは、この1曲だけになりますけど、システム・オブ・ア・ダウンの“Chop Suey!”ですね」。
本作のリード曲“DSMN”は、さまざまなフロア・ミュージックの要素を掛け合わせたソリッドなダンス・ナンバー。タイトルは〈Don't Stop Me Now〉の略で、自身の信念をこの言葉に反映させたという。
「デビューしてから休むことなく走り続けてきてるんですけど、やっぱり止まりたくないんです。何か外からの力によってとか、自分自身との戦いのなかで自分の限界を感じて立ち止まるのは絶対に嫌なんです」。
同曲のDメロ部分は幻想的なサウンドに変わるのが印象的。そこは「ステージ上ですごくスロウな曲が流れるなか、全身汗だくなった僕がその音楽に酔っているようなイメージ」で作ったそうで、そのトリップ感、浮遊感は今回のジャケット写真にもリンクしている。しかしながら、水中にいるJUNHOは身動きが取れないだろうし、空中にいるJUNHOは何かから逃げたくて空中に身を投げ出しているようにも思えるのだが。
「そんなふうに汲み取ってもらえて嬉しいです。だって、僕も葛藤を抱えているから。というか、人間なら誰もが葛藤を抱えているし、目の前の現実や自分の限界から逃げ出したいと思う瞬間はあると思うんです。でも、その瞬間にこの音楽を聴くことによって、解放感を得てもらえたら。そんな思いを今回のアルバムには込めているんですよね」。