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白黒からカラーの昭和へ、音の彩りは時代のパレット

 1966年放送開始の空想特撮シリーズ「ウルトラQ』、同年にスタートして、いまも続くウルトラマンシリーズ、さらに初代ゆるキャラである「快獣ブースカ」(これも66年放送開始)、映画「ガス人間㐧1号」などの音楽を、これらの音楽を担当した作曲家の名を冠し『宮内国郎の世界』としてまとめられリリースされることになった。8枚組、全509トラック収録、さらに84ページの別冊解説書という概要である。

宮内国郎 『ウルトラQ ウルトラマン 快獣ブースカ 宮内国郎の世界』 Columbia(2016)

 63年生まれの私は、リアルタイムでこれらの放送を楽しんだが、特に鮮明に覚えているのはウルトラシリーズの冒頭に流れるサウンド・ロゴである。楽器の音やテープに録音された音を逆回転させてつくった音などをコラージュしてつくったミュージック・コンクレート風のわずか18秒の音だが、未だかつてこれほどインパクトのあるサウンドロゴを、私は聞いたことがない。素晴らしい作品だと思う。このサウンドロゴは、ウルトラQ、メインタイトルという題がついている。コレクションには、別ヴァージョンが6つ再録されており、採用されたヴァージョンに比べるとシンバルやピアノのクラスターの音がナマナマしく録音されていて正式採用までにいたる奇跡の中に、このサウンドの組成の秘密が聴こえてくる。

 宮内国郎は、1932年生まれ(2006年没)の作曲家で主にテレビドラマの音楽を手がけ、円谷プロダクションの制作する番組を担当するようになる。以降、映画「ガス人間㐧1号」や、「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」など70年代には「スペクトルマン」などのテレビ作品の音楽を多数手がけ最後に手がけた作品に、ウルトラQの現代版「ウルトラQ dark fantasy」(2004年)がある。ジョージ・ガーシュインに憧れてジャズ、作曲の道を志したとあるが、ドラマの演出効果や時代背景にあわせて、様々な音楽を作曲しサウンドを考案してきた。このコレクションはある意味、宮内の描く音のパレットを見るような気にさせる。