角刈り、サングラス、ヒゲ……体育会系の出で立ちで印象的。筋肉少女帯初期のライヴでは、シンセサイザーを振り回して観客席に投げ入れるという逸話も残っている威圧系ピアニスト。にもかかわらずピアノの前に座った途端、技巧的でメロウなピアノ・サウンドを紡ぎ出すというアンビヴァレンスが最大の魅力の三柴理。この相反するキャラクターが見事に凝縮された、デビュー30周年のベスト・アルバムがとうとう発表である。

1曲目は“黎明第二稿”。筋肉少女帯の記念すべきデビュー・アルバム『仏陀L』のオープニング曲“モーレツア太郎”の前奏曲として配されたピアノ・ソロの拡張版だ。同タイトルの楽曲はザ ・蟹のアルバム『サウンドギャラリー』にも収録されている(なお“黎明”は筋肉少女帯『新人』、“黎明 初稿”は『80年代の筋肉少女帯』にもそれぞれ収録されている)が、今作に収録されているのは初出のライヴ・バージョンだ。大仰な和音展開は、ヨーロッパにある王宮の庭園を彷彿とさせる構築美。筋肉少女帯のヴァージョンに比べ起伏が強調され、SF映画のメイン・テーマのような品位をも感じる。

続く“サンフランシスコ”も、もちろん『仏陀L』収録の名曲のTHE金鶴ヴァージョン。特筆すべきは、元・筋肉少女帯のサポート・ギタリスト横関敦の参加だ。〈ジェットフィンガー〉の異名を持つ横関のギター・ソロと三柴のピアノによるバトルは圧巻。そして“夜歩く”とくる。演奏はザ・蟹名義でピアノは新録音。塩野道玄によるフレットレス・ベースの唸りが心地よい。他にも今作には筋少がらみでは“孤島の鬼”のピアノ・ソロ・ヴァージョンも収録されており、初期筋少ファンなら卒倒しそうな曲の目白押しだ。

しかし、喜ばせるのは筋少ファンだけではない。三柴と高橋竜(特撮のサポート・ベーシスト)と長谷川浩二(筋少のサポート・ドラマー)によるユニット〈竜理長〉のライヴも収録されているし、特撮『アジテーター』収録曲でもある“NIGHT LIGHT”を聴けば、あの頃の特撮の思いをすぐ追憶できるはずだ。

きわめつきは、クイーンの〈ボヘミアン・ラプソディ〉〈フラッシュのテーマ〉や、エマーソン・レイク&パーマーの〈タルカス〜噴火〉のカヴァー。技巧的かつメロウなプレイが惜しみなく発揮されているのが、これらのロック名曲のピアノ・ソロ・アレンジである。圧巻はやはり〈タルカス〉。あたかもバルトークの埋もれた楽譜を発掘したかのような錯覚に陥るほどの新鮮感。これこそ〈威圧系ピアニスト〉の真骨頂と言っていいのではないか。 三柴理のなせるアンビヴァレントな業と真髄がここに凝縮されている。