INTERVIEW

マイケル・ブーブレが贈る希望やロマンス―1Dのハリー&メーガン・トレイナー共作曲など収めた新作『Nobody But Me』を語る

マイケル・ブーブレが贈る希望やロマンス―1Dのハリー&メーガン・トレイナー共作曲など収めた新作『Nobody But Me』を語る

甘くロマンティックなバリトン・ヴォイスが、粉雪に混じってキラキラと地上に降り注ぐ。 その瞬間、あなたは思い出すだろう。愛することの喜びや夢みることの美しさを……

 

僕以外にはいない

 昨年2月、カナダ出身の国際的なスターであるマイケル・ブーブレが、武道館で初の日本公演を行った。前作『To Be Loved』(2013年)のツアーの一環として実現したこのステージは、ようやく日本でもアルバムがヒットし、ついに我の国で彼がブレイクしたことを象徴する意義深いものとなった。ブーブレ本人も「僕にとって大きな出来事だった」と振り返る。

 「ショウを成功させたかったから、正直とても緊張していた。でも、観客のエネルギーと盛り上がりに圧倒されたんだ。本当に興奮したな。終わった後、すぐマネージャーに電話して〈もっと日本で公演をやりたい!〉と伝えたよ」。

MICHAEL BUBLE Nobody But Me 143/Reprise/ワーナー(2016)

 こうして、いつも以上に大きな注目のなか登場した3年ぶりのニュー・アルバム『Nobody But Me』は、ブーブレ自身が初めてプロデュースを手掛け、過去最多となる4つのオリジナル曲を収録した意欲作だ。全米と全英のアルバム・チャートで初登場2位につけるなど、すでに海外では好成績を収めている。

 「アルバムのプロデュースは初めてだったから、自信がなかったし、プレッシャーも凄く感じていた。でも、素晴らしい経験になったよ。共同プロデューサーを僕が選び、長年の友人であるアラン・チャンジェイソン・ゴールドマン、それからヨハン・カールソンと組んで完成させたんだ。3人とも楽器が弾けるから、僕のヴィジョンを具体化してくれたと思っているよ」。

 アランはブーブレのバンドのディレクター兼ピアニストで、代表曲“Haven't Met You Yet”(2009年)の共作者でもある。サックス奏者のジェイソンは同じくブーブレのバンド・メンバーで、もともと曲のアレンジも担当していた。この2人と組んでブーブレが最初に書いたのは、アルバム・タイトルにもなった先行シングル“Nobody But Me”と“I Believe In You”。彼は曲をさらにブラッシュアップするため、マックス・マーティンの紹介でヨハンもチームに招き入れたという。果たして、ブーブレは気心の知れた仲間たちと共に、彼自身が歌いたいと思っていた新しいレヴェルの音楽を作り上げることに成功したのだ。

 「“Nobody But Me”は、〈恋に落ちて、その女性を僕以外の誰にも渡したくない〉っていう気持ちを歌った曲だよ。でも、アルバムをこのタイトルにしたのは、〈僕たち全員がとても特別な存在だ〉というメッセージを込めたかったからなんだ。僕たちはひとりひとり違っていて、誰もがユニーク。だから、それぞれに違うものを生み出すことができる。そして僕は、〈こういうアルバムを作れるのは僕以外にいない〉って感じたんだ」。

 

ロマンスを届けたい

 ビッグバンドのサウンドにブラック・ソートルーツ)のラップが挿入された“Nobody But Me”は、今作のなかでも特にユニークな仕上がり。両者の魅力が見事にブレンドされたフレッシュなポップソングだ。また、もうひとつのゲスト参加曲――メーガン・トレイナーハリー・スタイルズワン・ダイレクション)の共作によるナンバーで、メーガンがデュエット役も務めた“Someday”――も聴き逃せない。

 「メーガンは本当に素晴らしいミュージシャンで、素晴らしいソングライターだよ。僕はメーガンのファンだったんだ。それでFaceTimeを使って話したんだけど、〈僕のアルバムで君の曲を一緒にやってもいい?〉って尋ねたら、乗り気になってくれた。本当に素晴らしい曲だね」。

 今回ハリーとの直接的なやり取りはなかったようだが、「ワン・ダイレクションのメンバーは前から知っていて、みんな友人」だとか。そんな顔の広いセレブなブーブレが、“Take You Away”では日本贔屓な面を覗かせている。日本のファンにとって、これはたまらない贈り物となるだろう。

 「ジェイソンの親友が日本人でさ、〈日本語のアナウンスでマイケル・ブーブレを迎えるようにして、この曲を始めようよ〉ってジェイソンに提案されたんだ。凄く良いアイデアだと思ったよ」。

 オリジナル曲はいずれもヒット・ポテンシャルの高いキャッチーな出来映えだし、ジャズ・スタンダードもこれまで通り息を呑むほどの美しさ。何より、すべての曲に希望や喜びや愛が詰まっていて、そこが本作のもっとも素晴らしい点だと思う。

 「まさにいま、たくさんの苦難が多くの人の身に降り掛かっていて、この世界は暗い場所になっている。そこで僕にできる仕事を考えた時、人々に光や希望や幸せやロマンスを届けることだって感じたんだ。そういう音楽を作りたかった。人々に辛い現実から逃れる時間を持ってほしいと思ったんだよ。楽しい休暇へ出ているような気分になれるアルバムにしたかったんだ」。

 しかし先日、驚きのニュースが報じられた。3歳になる長男のノア君がガンと診断されたため、ブーブレは活動を休止するとのこと。「僕は自分よりも子供たちを愛している。こんなレヴェルの愛が存在するなんて知らなかった。いまの僕を何よりも幸せにしてくれるのは、父親でいることなんだ」とインタヴュー時に笑顔で語っていたブーブレ。人々に希望を分け与えられるようなアルバムを作り上げた彼はいま、人生最大の苦難と向き合っているのだろう。一日も早くノア君が治癒し、ブーブレもカムバックできるよう、『Nobody But Me』を聴きながら祈りたい。

 

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