My Wish For Christmas...
街がざわめくこの季節。家族と、恋人と、友達と、いろんな場面で楽しみたい色とりどりのホリデイ・ギフトが届くなか、R・ケリーも初めてのクリスマス・アルバムを発表! もしも願いが叶うのなら、彼は、そして私たちは何を望むのだろう……?

 R・ケリーが初のクリスマス・アルバムを出すと聞いた際はどっちに転ぶのか期待が膨らんだものだ。性癖に剥き出しで向き合った〈プレゼントはキミorオレの○○○だよ〉的なR指定アルバムになるのか、あるいはゴスペル作法に根差した敬虔なメッセージ主体の『U Save Me』みたいになるのか……。結果的に届いた『12 Nights Of Christmas』は、ここ数作の流れを汲んで先達のマナーをソウルフルに憑依させたストレートな楽曲性を備え、いかにもな〈企画盤らしさ〉でアレンジが制約されているわけでもない。資料によると、もともと『Black Panties』(2013年)の後にリリースが予定されていたそうだが、本人が中身にこだわった結果、『The Buffet』(2015年)よりも後ろに回されていたものらしい。

R. KELLY 12 Nights Of Christmas RCA/ソニー(2016)

 メイク・ラヴ系のリリックも廃してはいないがプレイの内容までは描かず通常(?)のR&B程度の描写に抑え、(リリックを除けば)マイルドな冬仕様のR&B作品として普通に楽しめるバランスの良さは流石。『12 Play』を匂わせる表題も、素直にキリスト教における〈十二夜〉に準えた12曲ということのようだ(日本盤のみボーナス・トラックを2曲追加)。賛美歌やジャズのスタンダードを取り上げずオリジナルで固めているのも彼らしいところで、直近で仕上げたのであろうニュアンスは、厳かなピアノ演奏で導入を飾る穏やかな小品“My Wish For Christmas”からもうっすらと伝わってくる。ここでのRは家族の健康と世界の平穏を願い、〈愛が憎しみに打ち勝つこと〉を切実に祈っているが、その背景にあるムードは言うまでもないだろう。

 もっとも、2曲目の“Snowman”以降は程良い濃さを帯びたメロディアスなヴォーカリゼーションで、スムースにRの世界が紡がれていく。演奏陣に相棒ドニー・ライル(ギター)やロドニー・イースト(キーボード)といった馴染みの顔ぶれを従え、昨今の〈構造的ネオ・ソウル気分〉や安直なレトロ系とは異なるオーガニックなソウル・ムードを余裕で披露。その“Snowman”など数曲では重鎮ラリー・ゴールドがストリングスを担当していて、とりわけステッパーズの“The Greatest Gift”は流麗な意匠とジャクソンズを意識したような歌い口のフィリーな好相性にニヤリとさせられたりもする。

 そこでのジャクソンズのみならず、マーヴィン・ゲイ“Distant Lover”を下敷きにしたような入口から次第に昂っていく“Mrs. Santa Claus”、ビル・ウィザーズ“Use Me”を借景した“Christmas Lovin'”、スモーキー・ロビンソンの繊細な歌い口そのまんまで押し通す“Flyin' On My Sleigh”、そして本編ラストの表題曲では改めてマイケルへの美しいオマージュを聴かせるなど、芸能の本道たるサーヴィス精神は今回も実に芸術的な着地。トラディショナルな音楽から本質を取り出してモダンな自己流に仕立てる術は唯一無二だ。

 トラディショナルという意味だと、中盤で披露されるミュージカル調の“Once Upon A Time”は異色の仕上がりだ。貧しくとも幸せだった少年時代を、クリスマスをその象徴として回顧するような言葉が淡々と綴られているのだ。その点では大人も子どもも素直になる、年に一度のクリスマスに相応しい作品だと言えるのかもしれない。

R・ケリーのクリスマス・ソングが聴ける作品。

 

2016年の聖夜を彩るクリスマス盤を紹介!

KENNY LATTIMORE A Kenny Lattimore Christmas Motown Gospel(2016)

キャリア初のクリスマス盤は、初のインスピレーショナル作品という意味合いも兼ね備えた一枚に。ケニー・ラティモアのクリスマス・ソングといえば“This Time Of Year”(98年)というアーバンな隠れ名曲も思い出されるが、ここでは敬愛するダニー・ハサウェイの“This Christmas”を下敷きにしたソウルフルな“Real Love This Christmas”で温かくスタート。生来の優等生っぽさをいつも以上に出した雰囲気もありつつ、ビッグバンド調からアカペラ、アコースティックな清唱までを紳士的に聴かせる。クワイアを従えて昂揚する“Reason To Celebrate”が圧巻! *ルヴァン

 

KACEY MUSGRAVES A Very Kacey Christmas Mercury Nashville(2016)

ミゲル“Waves”のリミックス・ヴァージョンに招かれるなど活躍の場を広げ、今年は私服スナップもたびたびキャッチされてイット・ガールの仲間入り。その成功の証として吹き込んだ本作は、〈品行方正な次期テイラー・スウィフト〉といった彼女のイメージに合う、爽やかな一枚となりました。ウィリー・ネルソン客演のハワイアンや引き語りでのワルツ、ウェスタン・スウィングにリオン・ブリッジズとのレトロ・ソウルなどなど、ノスタルジックだけどセンティメンタルにはならず、明るく振る舞いつつも弾けすぎないのがケイシー流。親御さんウケも良さそうです。 *ローストビーフ

 

SHE & HIM Christmas Party Columbia(2016)

女優のズーイー・デシャネルとシンガー・ソングライターのM・ウォードから成る男女デュオ。そのヴィンテージなポップ・サウンドとホリデイ・ソングとの相性の良さは2011年の『A Very She & Him Christmas』で証明済みだが、このたびその第2弾が登場した。パーティーのオープニングは、マライア・キャリー“All I Want For Christmas Is You”のカヴァー。クリスマス時期の華やぎを演出しつつ、“Let It Snow”“Winter Wonderland”といったスタンダードも並ぶ本作は、全体的にジャズやカントリーなどをベースにした落ち着いたムード。大人の憩いの時間に似合いそう。 *ひいらぎ

 

FRANKIE VALLI Tis The Seasons Rhino/ワーナー(2016)

フォー・シーズンズとの世界ツアーで大忙しなヴァリから届いた9年ぶりの便り。しかもソロ名義では初のクリスマス・ソング集で、プロデューサーは盟友のボブ・ゴーディオだ。声量の衰えは否めないものの、そこを貫禄の歌い崩しで乗り切る感じが素敵だし、何より高音パートから醸される甘酸っぱさはこの人にしか出せない味。エレポップ風やジェフ・ベックのギターが効いたブルース・ロックをはじめ、アレンジも多彩で飽きさせない。同時リリースされた「ジャージー・ボーイズ」のミュージカル・キャストによるドゥワップな冬盤も合わせてぜひ! *シャンパン

 

ARIANA GRANDE Christmas & Chill Republic/ユニバーサル(2016)

昨年の配信EPを日本でのみパッケージ化した本作は、近作と同じトミー・ブラウンのプロデュースによるソウル味たっぷりな小悪魔チル作品。そのなかで異色と言えるのがジェイソン・ムラーズっぽいフォーキーな“True Love”で、彼女の新たな表情にまたしても翻弄され……。 *ロウソク

 

RASCAL FLATTS The Greatest Gift Of All Big Machine(2016)

やっと登場したキャリア初のクリスマス盤。ロッキンにカッ飛ばしたり、甘々のオールディーズ調で蕩けさせたり、激烈ファンクでワイルドにキメたり、ジェイのセルフ・プロデュースのもと定番曲をあの手この手で調理し、3人の魅力を多角的にアピール。タイトル通り最高の贈り物だね! *暖炉

 

CHIHIRO Christmas Love インペリアル(2016)

胸を打つ恋愛ソングで女性支持の高い彼女だけに、このミニ・アルバムでも多様なシチュエーションを用意。モータウン仕掛けの“Dear Santa”で幸せな日を祝し、曲名まんまな“シングルジングルベル”を過ごし、“Champagne Love”で友情に乾杯……独自の詞で歌う“Last Christmas”もいい! *リッツ

 

ANDRA DAY Merry Christmas From Andra Day Warner Bros./ワーナー(2016)

今年のグラミー候補でもあった彼女が日本でも話題になったのは、昨年のAppleのクリスマスCM(今後も定番化していきそう)でスティーヴィー・ワンダーとデュエットした“Someday At Christmas”でした。これはアルバムを出す前の2013年に無料公開していたEPに同曲を加えたもの。 *キャビア

 

LORETTA LYNN White Christmas Blue Legacy(2016)

今年は12年ぶりのアルバムでも沸かせた女王の、自身2枚目の聖夜盤。エルヴィス・プレスリー“Blue Christmas”へのアンサーとも取れる冒頭曲ほか、酸いも甘いも噛み分けた艶っぽい歌唱と古き良きカントリー&ウェスタンの演奏が、独り身の寂しい心にそっと光を灯してくれます。 *手酌酒

 

VARIOUS ARTISTS Disney Magical Pop Christmas Walt Disney(2016)

ディズニー映画を彩る名曲群が、ベルの音なども交えながらハウスやR&B風の冬仕様に衣替えだよ! しかもマイクを任されたのはBeverlyやこんどうようぢ、Miracle Vell Magicらいまが旬のヤングばかりということで、イルミネーションも嫉妬しそうなほどの物凄いキラキラ感! *あたりめ

 

PENTATONIX A Pentatonix Christmas RCA/ソニー(2016)

全米チャート3位を記録済みの話題作。伝統的なアカペラを厳かに披露した2014年のホリデイ盤と比べ、こちらはイン・シンクのカヴァーなどペンタトニックスの十八番である溌剌としたアップが多め。とりわけメンバーの書き下ろしによるドゥワップ曲には抗えないウキウキ感がある。 *となかい

 

EDM×CHRISTMAS EDM×CHRISTMAS ATLAS/Village Again(2016)

猫がEDMスタイルで聴かせるクリスマス・スタンダード……って文字にすると冗談企画のようですが、レーベル名から仕掛人がわかる人なら想像がつくように、中身はド派手なハウス~ベース・サウンドでアップリフティングに盛り上げてくれます。しかも終盤ではお正月まで先取り! *さけるチーズ

 

星野みちる 素敵にX'mas Night HIGH CONTRAST/ヴィヴィド(2016)

星のみちる季節に、7インチ+CD形式のクリスマス・シングル! 本人作曲の表題曲はアレンジャーにゲイリー芦屋(ヒゲの未亡人)を迎え、マライアmeetsウォール・オブ・サウンド的な麗しさで曇りのない歌世界を聴かせます。初ヴァイナル化のラヴァーズ“星に、メリークリスマス”も最高! *いくら