JUST ONE THING I NEED
季節物としての機能を超越したマライア・キャリー屈指の人気曲〈恋人たちのクリスマス〉と、クリスマスの定番曲が満載された『Merry Christmas』は、なんと今年でリリースから30周年! 時代を超えるハッピーな魔法を浴びてこの冬は明るく過ごそう!

 94年に生まれた数々の歴史的名盤が30周年の節目を祝っている2024年、その締め括りとして忘れちゃいけないのが、マライア・キャリーにとって初のクリスマス・アルバムとなった『Merry Christmas』だ。そうでなくても今年のマライア関連では、2月に『Music Box』(93年)の30周年記念盤が登場したし、10月には『Rainbow』(99年)の25周年記念ヴァイナルも届いたばかり。このたび登場する『Merry Christmas』の30周年記念盤と、そこから生まれた最強のクリスマス・ヒット“All I Want For Christmas Is You”の30周年記念シングルは、そんなアニヴァーサリー・イヤーの暮れに相応しいリリースだとも言える。

 いわゆるロックンロール以降のアーティストによるオリジナルのホリデイ・ソングがスタンダード化した例としては、ダニー・ハサウェイの“This Christmas”(70年)やポール・マッカートニーの“Wonderful Christmastime”(79年)、ワム!の“Last Christmas”(84年)などが思い出されるところだが、その流れにおいても“All I Want For Christmas Is You”は傑出している。ウォルター・アファナシエフとマライア自身が共作したこの曲は、60年代風の明るいハーモニーとリズミックなテンポを備えた親しみやすくもゴージャスな出来映えで、94年当時も世界各国でヒットを記録。〈恋人たちのクリスマス〉という邦題でも知られる日本では当時ドラマ「29歳のクリスマス」主題歌としてミリオン・ヒットを記録し、日本でのマライア人気を決定づける一曲となった(『Merry Christmas』は初のオリコン1位を獲得して日本だけで250万枚のセールスを記録している)。なお、シングルが出なかった本国USでは当時の規定によって総合チャート入りはなかったものの、リリースから25年を経た2019年12月についに全米1位を獲得。そこから毎年ホリデイ・シーズンにチャートを制し、現時点では通算14週にわたって全米1位を記録するという、マライアにとっても最大規模のヒット・ナンバーとして完全にスタンダード化している。

MARIAH CAREY 『恋人たちのクリスマス ~30th Anniversary Edition~』 ソニー(2024)

 そんな名曲を改めてパッケージしたのが今回の日本独自企画盤『恋人たちのクリスマス ~30th Anniversary Edition~』である。こちらは7インチ紙ジャケ仕様にクリスマスカードも封入された全7曲入り。表題曲はオリジナルに加えて、ジャーメイン・デュプリがアトランタ・ベース調で仕立てた2000年の〈So So Def Remix〉、そして96年の東京ドームにおける初来日公演ライヴ音源でも収録。他にも『Mariah Carey’s Magical Christmas Special』(2020年)で披露した“Christmas Time Is In The Air Again (Magical Christmas Mix)”、愛娘とステージ共演した“Christmas Wrapping”のMSGでのライヴ音源、さらにピアノを従えたクラッシーなバラード“Miss You Most (At Christmas Time)”、デヴィッド・モラレスによるゴスペル・ハウス調の“Joy To The World (Celebration Mix)”(94年)も収録されている。

 なお、このタイミングでは同シングルが初めてカセットでリリースされるほか、アルバム『Merry Christmas』の豪華ピクチャーLP、さらには同じく『Merry Christmas』の特殊ピクチャー・レコードとなる〈Zoetrope〉仕様でのアナログ盤も届き、それらもファンには欠かせないプレゼントとなるだろう。あとはそろそろオリジナルの新作を……と思わなくもないが、そちらは新年の願いとして叶えてほしいものだ。

マライア・キャリーの94年作の30周年記念LP盤『Merry Christmas(30th Anniversary Edition)』(Columbia /Legacy/ソニー)。左から、〈Picture Vinyl〉仕様、〈Zoetrope Vinyl〉仕様