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【サンフランシスコ編】

ショウを終えた翌日はシアトルをブラブラと観光し、その夜にサンフランシスコへ。到着したのは11月22日の0時を過ぎた頃でした。またこの際、Masayoshi Iimoriだけ飛行機が別だったのですが(フライトの時間はほぼ一緒)、サンフランシスコ国際空港についてからおよそ2時間近く彼と連絡が取れず、TwitterのTL上でも大騒ぎになりました。どうやら、飛行機の点検で空港に着いてから2時間近く降ろしてもらえなかったそうです。このツアーはそれまで順調に進行していたので、本当に冷や汗をかいた出来事でした。

その後、空港からホテルへ。今回僕たちが宿を取ったのは、テンダーロインというサンフランシスコ随一の治安の悪い地域(宿代が他の地域に比べてめちゃくちゃ安かったので……)。いざホテルに着いてみると、周囲に街灯はほとんどなく、道端ですごい声で叫んでいる人(おそらく薬物中毒者)が多数いたり、暗がりにはフードを深く被ったドラッグのバイヤーや、アジア系の集団など……。また、大体のお店に鉄格子が付いていて、泊まったホテルも基本的に扉にロックがかかっており、ロビーの受付も銀行のような透明のガードがあったりと、日本ではとても考えられない光景に、かなり肝を冷やしました。なかなか例えられるものがないのですが、雰囲気は歌舞伎町からすべてのネオンが消えた感じ……でしょうか……。

LAやシアトルにはそういった治安の悪い地域を通らなかったとのもあるのですが、サンフランシスコは狭いがゆえに、繁華街の真横でも道一本逸れるとめちゃくちゃ危険な地域だったりするらしく、とても用心しました。まぁ、明らかに雰囲気が変わるので一発でわかるのですが……。

そんなこんなで翌日は、Seimeiが3年間住んでいるサンフランシスコでのショウケースを開催。僕たちとしてもSeimeiの海外での活躍があったこらこそTREKKIE TRAXが海外で躍進できたと思っていますし、またそんな彼の現在のホームタウンでレーベル・ショウケースを行えることを非常に嬉しく思いつつ、その日を迎えました。

Masayoshi Iimori
 

イヴェント自体はLAやシアトルとはまた違う、僕たちが東京で行っているパーティーの雰囲気を再現したかのようで、遊びにきてくれたリスナーはTREKKIE TRAXの楽曲のイントロが流れると歓声を上げてくれたりと、一体感がすごかったです。 

エレヴェイションとTREKKIE TRAX CREW
 
ダッキーとTREKKIE TRAX CREW
 

またSeimeiのサンフランシスコの友人たちはもちろん、TREKKIE TRAXからリリースしているダッキー(Ducky)やアトランタ在住ながらこのショウケースのために飛んできてくれたエレヴェイション(Elevation)のほか、〈Mad Decent Block Party〉などにも出演しているジラフェージ(Giraffage)、LAからショーン・ワサビ(Shawn Wasabi)や札幌出身で現在はサンフランシスコを拠点に活躍するQrionなどが遊びにきてくれました。これまでインターネットを介してしかコミュニケーションを取れなかった友人やアーティストたちと一緒にパーティーを楽しむことができて、本当に良い思い出になっています。また、彼ら以外にも数時間かけて遊びにきてくれたリスナーもたくさんいて、彼らからの期待感を感じることができたのはもちろん、アメリカでも地に足を着けて自分たちのパーティーができたことが嬉しかったです。

ダッキーの2016年のEP『Hack The Club』
 

ジラフェージの2015年作『No Reason』
 

ショウケースの興奮覚めやらぬなか、その翌日はポーター・ロビンソン&マデオンによる〈Shelter Live Tour〉のサンフランシスコ公演へ。僕たちはそのアフター・パーティーに出演することになっていたのです。会場のBill Graham Civic Auditoriumはスクリレックスとディプロのユニット=ジャックUのライヴも行われたところで、規模的には〈SUMMER SONIC〉の東京会場の〈MOUNTAIN STAGE〉より大きい感じでしょうか……。その広い会場を埋められるDJ/トラックメイカーはアメリカでもなかなかいないそうです。ポーター・ロビンソンンとは日本で一緒にご飯を食べたり、ageHaで開催した僕たちのパーティーに出演してもらったりと、結構フレンドリーに接してもらっているので、彼のアメリカでの凄さを実感すると共に、その後のアフター・パーティーで共演できることに興奮を覚えました。

ポーター・ロビンソンの2014年作『Worlds』収録曲“Flicker”
 

僕たちがプレイしたアフター・パーティーの会場、1015 Folsamは、東京で言うとSound Meseum VISIONのようなハコで、全部で4~5フロアある超巨大クラブ。SeimeiはそれまでにもここでソフィーマシーンドラムDJスリンク(DJ Sliink)などと共演しているということで、彼のサンフランシスコでの凄い活躍ぶりを感じました。公演は2日行われ、いずれの日も僕たちとも超仲が良いQrionも出演。サンフランシスコでポーター・ロビンソンとマデオンの脇を日本人アーティストが固めるというおもしろいラインナップでしたし、僕たちのやる気も最高潮でした。

Qrionの2014年作『sink』収録曲“Crystal”
 

出演初日は水曜日の夜だったこともあって客入りが遅かったのですが、2度目は金曜日だったこともあり、身動きが取れないぐらいのお客さんが僕たちのパフォーマンスで熱狂してくれました。Qrionも同じくバッチリ盛り上げており、日本からアメリカにやってきた僕たちがしっかりアメリカのクラウドの前でカマせたことは、これまで閉鎖的だった日本のダンス・シーンにとっても大きな一歩になったのではないのかなと個人的に思います。

また主役のポーター・ロビンソンとマデオンよるb2bは、まさに殴り合い(という表現が正しいのかわかりませんが)で、お互いが持っているアンセムをBPM関係なくかけ合い、途轍もない盛り上がりを見せていました。もちろんイントロどん!状態で、みんなで合唱~みたいなEDMらしいお約束もありましたし、純粋にクラウドの質の高さに驚くばかり。

ポーター・ロビンソン&マデオンの2016年のシングル“Shelter”
 

僕は2人の来日公演にはすべて行っているほどのファンなので、アメリカで彼らのb2bを観ることができて本当に興奮しました。それに、Masayoshi Iimoriがエディットしたセバスチャン“Motor”やPa's Lam System“I'm Coming”など日本人トラックメイカーの楽曲もプレイされており、これまでインターネットに上がっている動画や人づてで聞いていたことを自分の目で観て、いま日本のダンス・シーンに起きている変革を実感しました。

ポーター・ロビンソン&QrionとTREKKIE TRAX CREW
 

金曜日のアフター・パーティーが終わり、その3時間後にはフライトだったので、急いでホテルに戻って荷物を持ち、飛び出すように空港へ。ホテルの外でタバコを吸っていたSeimeiが、身長2mほどもある魔法のローブをかぶったような片目の黒人ホームレスに絡まれて少し焦ったのですが、ツアーを通して取り立ててトラブルももなく、無事に僕たちのアメリカ・ツアーは幕を閉じたのでした。

ちなみに、帰りの飛行機はトランジット込みで20時間のロング・フライト。かつ僕だけみんなと席が離れており、Wi-Fiもなかったので、孤独と共にテトリスを10時間近くプレイしてなんとか日本に到着しました……。

アメリカ・ツアーを振り返ってみると、日本ではできない体験ばかりでした。特にLA公演をいまだに引きずっており、たぶんあの光景は今後活動していくうえでずっと頭の中に残り続けるのではないのかなというぐらい、僕の人生においても衝撃的なものでした。なかなか文章でお伝えするのが難しいのですが……。

また、この経験を活かして、今後僕たちが日本でどのように活動していくべきなのかをより考えるようになりました。レーベルとして才能のある日本人アーティストをサポートし、日本のシーンを成長させていくだけでなく、次はみんなでアメリカに乗り込んでいけるような新しいフォーマットを作っていくのがTREKKIE TRAXとしての新しい使命ではないのかと。2017年はそれを実現できる意欲的なアーティストと、どんどん新しいプロジェクトを始めていけたらいいなと思っています。