今年の春に、日本でいまもっとも勢いのある若手ダンス・ミュージック・レーベルとして紹介したTREKKIE TRAX。以降も精力的なイヴェント開催や、国内外問わず多くの作品をリリースするなど、変わらず絶好調ぶりをキープしている彼らが、去る11月に初のUSツアーを行った。これまでにも看板アーティストのCarpainterとMasayoshi Iimoriがそれぞれ海外でツアーを行っているが、レーベルとして海を渡るのはこれが初めて。ツアー中、TREKKIE TRAXのTwitterに幾度となくアップされたエキサイティングな公演の模様の数々に衝撃を受け、実際現場はどうなっていたんだ?と、急遽クルーの中心人物・futatsukiにツアー・ドキュメントを書いてもらうことになった。
★参考記事
TREKKIE TRAXの勢いは止まらない! US侵攻、アジア開拓……規模を拡大して成長続けるレーベルのこれまでとこれから
2017年1月18日にリリースされる三浦大知のニュー・シングル“EXCITE”(放映中の「仮面ライダーエグゼイド」主題歌!)はCarpainterが作曲/編曲を手掛けているなど、来年以降ますます過激に成長していきそうなTREKKIE TRAX。まずはこのツアー日記でそのヤバさを感じてほしい! *Mikiki編集部
こんにちは、はじめまして。TREKKIE TRAXというインディペンデントなダンス・ミュージックのレーベルを主宰しています、futatsukiです。
簡単にTREKKIE TRAXの説明をさせていただくと、2012年に当時未成年だったメンバーが中心となって、もともとはダンス・ミュージックを扱うインターネット・レーベルとして設立されました。いまではスクリレックスやディプロ/メジャー・レイザーなどからもサポートを受けながら、国内外問わず良質なアーティストの音楽をリリースしているといった感じです。
設立の経緯や、詳しいレーベルの事情などはMikikiに掲載されたインタヴューで理解してもらえると思います。
TREKKIE TRAXは、国内のレーベルのなかでも特に海外志向といいますか、これまで日本のレーベルではあまり行っていなかった〈日本の音楽を海外に向けて発信していく〉という大きなスローガンがありまして、これまでにアメリカ、オーストラリア、韓国、中国などで所属しているアーティストがツアーをしているのですが、今年11月にレーベルの運営陣4名から成るTREKKIE TRAX CREWと、レーベルのコア・アーティストであるCarpainterにMasayoshi Iimoriを引き連れて、初のアメリカ・ツアーを行いました。
レーベル主宰の一人であるSeimeiが現在サンフランシスコに留学しているのですが、彼が2017年2月に完全帰国するため、その前に何か一つ結果として残しておきたいという想いも強く、今年の6月頃、これまでにSeihoやmetome、Qrionら日本人アーティストのアメリカ・ツアーのサポートを行っているシアトル在住のDJホージョー(DJ Hojo)にアメリカ・サイドのマネージメントをSeimeiと共にお願いし、大規模なレーベル・ツアーが実現したというわけです。
Masayoshi Iimoriは昨年TREKKIE TRAXの主催で一足先にアメリカ・ツアーを、Carpainterは今年の9月にアナマナグチという〈Ultra Music Festival〉にも出演しているチップ・チューンを中心にしたバンドのNYとワシントン公演に、サポート・アクトとしてツアーを行っています。そのため、僕(futatsuki)とandrewのみが初のアメリカ本土上陸!ということで、LAにシアトル、サンフランシスコの3か所6公演を開催しました!
【LA編】
初の長時間フライトに億しながらも日本を発ったのは、11月18日の夜。andrewは初の海外だったこともあり、相当ビビったりもしていたのですが、飛行機内にはWi-Fiもあってめちゃくちゃ快適でした。ワープをするようにLAへ。
LAと言えば、おそらく現行のメインストリーム音楽の最先端であり、なおかつファッションやストリート・カルチャーも牽引している憧れの街。しかしいざ着いてみたら、街自体は〈八王子〉といった感じで……(決して八王子をDisっているわけではありません)拍子抜けした節はありつつも、LAは東京以上に大きい巨大都市圏でして、さまざまなエリアに分かれている模様。今回僕たちはハリウッドやビバリーヒルズに隣接するフェアファックスというエリアを中心に滞在しました。
1日目は特に予定もなかったので、とりあえず近くにあるSupremeを見てみたり(ラッキーなことに、その日はたまたまTHE NORTH FACEとのコラボ商品の販売日で、それを買えた)、近くのセブンイレブンまで30分かけて歩いてみたりしつつ、夜は僕たちのLA公演が行われるClub Unionのサブ・フロアのイヴェントへ。
平日の夜からUKファンキーなどの隣接ジャンルで活躍するマーロ(Murlo)をゲストに、友人のTドイル(Tdoyle)やGRRL、ビアンカ・オブリヴィオンなどがプレイ。クラブ自体はちょうど僕たちがよくプレイしている渋谷のLOUNGE NEOに似たような大きさで、平日ということで人もそこまで多くなく、TREKKIE TRAXの楽曲はもちろん、HyperJuiceなど日本人アーティストの楽曲もたくさん流れていたりして、ここは本当にLAなのか……と思ったほど。めちゃくちゃ僕たちが普段遊んでいる渋谷界隈のパーティーのヴァイブスで、本当にいい感じでした。
また僕たちがクラブに入ろうと並んでいると、〈TREKKIE TRAX、そっちじゃないよ~!〉と謎の日本語で誘導してもらったり(のちに彼がTREKKIE TRAXからリミックスを発表している@hikeiiだということを知るのですが)、クラブに着いた瞬間、日本でしか売っていないTHE TESTとTREKKIE TRAXのコラボTシャツを着たお兄さんから〈ようこそ!〉という感じでビールを奢ってもらったりと、日本から来たにもかかわらず、アメリカのアットホームなお出迎えに感動するばかりでした! ちなみに、ビールを奢ってくれたお兄さんは、その後のシアトルとサンフランシスコの全公演に遊びに来てくれました……。
翌日にはSeimeiも合流し、いよいよ〈TREKKIE TRAX CREW USA TOUR 2016〉の一発目となるLA公演。この日は、かの地でいま一番勢いがあり、OWSLAとのコラボ・パーティーを行ったり、スクリレックスらがお忍びで結構遊びに来ていたりする〈Browines & Lemonade〉というパーティーで、ハドソン・モホークとのユニット・TNGHTの片割れであるルニス(Lunice)と出演しました。
クラブ自体もめちゃくちゃ大きく、おそらく日本だと恵比寿リキッドルームのメインフロアぐらい(お客さんも2,000人近く入っていたみたい)。初っ端からアメリカ!といった感じでちょっと緊張しましたが、アメリカのTREKKIE TRAXのアーティストや友人たちが駆けつけてくれて、僕たちのDJ中にはTREKKIE TRAXのフラッグを手にステージで一緒に煽ってくれたりしつつ、めちゃくちゃ盛り上がる内容となりました。その感じはまさに東京で僕たちが普段行っているレーベル・ショウケースのようで、同じことがアメリカでもできたことに非常に感動しました。
Seimeiが、TREKKIE TRAXからリリースも控えているイーグル(EGL)が制作したTERIYAKI BOYZ“Tokyo Drift”とフラストラダムス“Mosh Pit”のマッシュアップ曲“Mosh Pit Tokyo”を流すと、イントロから文字通りフロアで大モッシュが起きたり、同じくTREKKIE TRAXから作品を発表しているLA在住のフォクスキー(Foxsky)による“Puppy Parade”をプレイしたときも大盛り上がり。LAのクラウドの音楽に対する反応は本当に凄かったです。
最後に、日本でも毎回プレイしている、TREKKIE TRAXを世界のステージへ導いてくれた楽曲のひとつでもあるジェンバ・ジェンバ(Djemba Djemba)がリミックスしたコーラ・スプラッシュ“Curry Drinker”をプレイしたのですが、なんとプレイ中にジェンバ・ジェンバ本人が登場!! 彼は7月に東京に来てくれて、〈TREKKIE TRAX 4th Anniversary〉にも出演していたのですが、今度は僕たちが彼の住むLAにやってくることができました。この曲がリリースされてからの1年間を思い出すと、すべてが繋がっていくような感覚になり、音楽をやっていて良かったなと感じました。
ジェンバ・ジェンバの他にもミスター・カーマック(Mr.Carmack)やAWE、CRNKN、ホテル・ガルーダ(Hotel Garuda)、ナンセンス(Nonsense)などが僕たちのショウに遊びにきてくれたのですが、普段東京でプレイしている楽曲を作っているアーティストにフラッと会えるLAのヤバさ……みたいなのを改めて実感。
また肝心のルニスのプレイは本当に圧巻で、90分間ずっと見入ってしまうような内容でした。特に、彼と同じくラッキーミーに所属し、TREKKIE TRAXでアジア・ツアーを組ませてもらったジョセフ・マリネッティ(Joseph Marinetti)の“Jumpstyle Is Low Art”から、今年のヒップホップ・トラックでヒットしたビッグ・ベイビー・ドラム“Broccoli”に繋いだのは結構衝撃でした。あとTNGHTの復活が噂されていますが、それっぽいようなアンリリースド・トラックも何曲か流していた気がするので、期待が高まります。
全体的にアメリカのクラウドはアンダーグラウンドな音楽でもめちゃくちゃ盛り上がる。そういった点での日本との差に衝撃を受けながら、無事にLAデビューを果たしたTREKKIE TRAX CREWでした。
【シアトル編】
LAでの3日間の滞在を終え、11月19日の深夜にシアトルに到着。シアトルは緯度的にも北海道より北なので、空港に着いた瞬間から東京の冬で一番寒い時くらいの寒さでした。LAでは日中は半袖でも過ごせたので、この温度差がツアーの移動距離を物語っています……。
シアトルは東京で言うと表参道や青山のような、綺麗で清潔感のある街で、治安は良く人々も落ち着いていて、なおかつご飯がめちゃくちゃ美味しいという素晴らしいところ。非常に東京に似ているなという印象でした。シアトル到着後即、今回のツアーのマネージメントを行ってくれているDJホージョーが主宰するパーティーへ。パーティーといってもクラブ・イヴェントではなく、少し大きめのバーを借りて食事と会話を楽しむという企画で、非常にリラックスしたムードでした。
彼は年に数回日本へ遊びに来ていて、そのたびにレコード・ショップで日本の古い歌謡音楽をDIGったりしていました。このレコードはどこで使われるのだろうと常々思っていたのですが、なんとそのバーでホジョがプレイしていたのはその時に手に入れたレコードで、山下達郎の“RIDE ON TIME”が流れると、少し日本のことを思い出して哀愁に浸ってしまったりも。ツアー中はずっと気を張っていて、ショウの準備や移動でバタバタしていたために意外とリラックスする時間が少なかったので、日本の音楽を聴くことによって少し気分が和らぎました。
その翌日、日本での公演を終わらせてすぐ飛行機に飛び乗ってきたMasayoshi Iimoriや、先日TREKKIE TRAXからEPをリリースした地元のアーティスト、セブンス(7777777)も合流し、TREKKIE TRAXのアーティストのみが出演するレーベル・ショウケースを行いました。レーベルを始めた頃は、まさかアメリカでこういったショウケースができるとは思っていなかったので、この時は本当に嬉しかったです(僕はもともとオーガナイザーとして活動していたので、本当にいろんなイヴェントを企画してきました……)。
シアトルのリスナーはLAとは違い、テクノやハウスといった音楽を好むと聞いていましたし、パーティー自体は非常に良い雰囲気でした。お客さんもしっかりDJプレイや楽曲を楽しみ、ゆったり踊る……みたいな。
特にシアトル公演では、急遽渡米が決まったMasayoshi Iimoriと、アメリカでは初公演となるCarpainterのライヴ・セットがとても印象的でした。Masayoshi Iimoriはこの1年で本当に活動の幅が拡がりましたし、個人的には東京・Sound Museum VISIONやageHaで海外のアーティストと多く共演したのがプラスになっている印象で、アメリカでのプレイは本当に圧巻でした。彼自身もいま非常にDJに力を入れており、自分だけが使うリミックスやエディットをたくさん持っているようで、これまで観てきたなかでも一番と言っていいほどの良いセットでした。
またCarpainterは自身のルーツであるテクノを彼らしいオリジナリティーあるものに昇華した楽曲をガンガン制作&プレイしていて、この日もシアトルのリスナーにマッチした良いパフォーマンスを披露。レーベル・オーナーとして、所属アーティストの成長を喜ぶと共に、彼らの来年の活躍が本当に楽しみだなと思いました。
シアトルでのレーベル・ショウケースを無事に終え、そのまま打ち上げへ。アメリカのイヴェントは日本と違って21時~25時ぐらいまでのものが多く、眠い目をこすることなくイヴェントを終えてゆっくりと食事を楽しめるのは良いなと思いました。またシアトルは本当に食べ物が美味しくて、エッグベネディクトやタコス、ハンバーガーなど全部美味しかったのですが、特にこの打ち上げで食べたフライドカラマリ(イカの唐揚げ)は絶品! 僕たちはこのあと食事のたびにカラマリを食べるほどハマりました。
アメリカは基本的に食べ物の値段が高く、軽くランチのためにファストフード店へ入っても、1人1,500円〜2,000円ぐらいかかるほど。空港などで売っている普通の水も1リットルのペットボトルで400円もするし、お酒もクラブによってはビールが1,000円ほど(といっても量も日本の1.5倍近くあるのですが)と、なかなかに出費がかさんだ覚えがあります。またコンビニも基本的にないのと夜中に出歩くことができないので、日本の食におけるクォリティーの高さを改めて認識しました。