
強烈な個性と溢れる才気で想像を超える怒涛の進化を遂げてきた4s4kiが新作を完成! 破壊者として再構築に挑んだ音楽のネヴァーランドにはどんな現実が広がっている?
とにかくゲームに逃げ込んでた
生き辛さをエッジーなビートに転化し、ネオンカラーの音色でコーティング。数多の音楽性をハイセンスに組み上げ、世界的なハイパーポップの流れの先頭を走りながら独自の進化を遂げてきた4s4ki(アサキ)より、アルバムとしてはおよそ1年ぶりとなる新作『Killer in Neverland』が到着した。〈仮想現実と自分らしさ〉がテーマの本作には、さまざまなゲームから得た着想が多く散りばめられている。
「正直なところ音楽はあんまり聴かないんです。意図して聴くっていうよりも、ゲームやアニメ、映画のBGMや挿入歌を通じて自然と耳にしているって感じですね。今作に関しては、好きなゲームを題材にした楽曲が半数ぐらいあって。例えば『トライアングルストラテジー』っていうゲームにアラビア風の国が出てくるんですけど、そのBGMでハンドパンやカリンバを知って、自分のトラックにも取り入れてみたり。ただ、ゲーム音楽に寄りすぎるのも良くないので、ゲーム音楽 × トラップみたいなものとか、自分なりのおもしろさが出るように創作している感じですね。とあるホラゲと『クロノ・クロス』を掛け合わせた“into the darkness”には、そのゲーム音楽 × トラップっていう面がいちばん出ていると思います」。
退廃的な近未来のベルリンを舞台とするインディー・ゲーム「Encodya」から一部着想を得て制作したというミステリアスな冒頭曲“電脳郷”から広がるネヴァーランド。その構築に向けて今回招かれたクリエイターは、maeshima soshi、gu^2、Masayoshi Iimoriの3名だ。まずmaeshimaは、スピーディーにドライヴする先行曲“LOG OUT”、Instagramで募ったファンからの恋愛譚を一癖あるラヴソングに仕立てた“ring ring, you kill me”、「17歳当時の日記の一部みたいな楽曲」を現在の自身に重ねた“Cross out”、これまでの4s4ki曲でもとりわけリラクシン&ポップな“BOUNCE DANCE”という4曲に関与している。
「中学2年の頃、『マビノギ』っていうオンラインRPGに学校へ行けなくなるぐらいハマってたんですけど、“LOG OUT”を作った頃にふと〈あの時間はすごく糧になったな〉って思ったんですよ。私、嫌なことがあったらとにかくゲームに逃げ込んでたんですね。でも、中学生っていう吸収しやすい時期にゲームしてたことが、いまの自分の音楽性に繋がっていて。ゲーム音楽って、コード感がおもしろかったりするんですよ。私が作るジャンルの音楽ってノーコードだったり、少ないコードのものが多いんですけど、本来はノーコードがセオリーのビートに複雑な展開のコードをあえて乗せるって発想は、たぶんそのゲームにのめり込んでいた時期からくるもので。『beatmania』とかもプログレっぽい楽曲が多かったり、音ゲーって、やっていくうちにリズム感も染み付くじゃないですか。そういうのもいまに結び付いてるなって。
“BOUNCE DANCE”は歌詞をアニメーションで可視化するっていうテレビ東京が始めた新プロジェクト〈KASHIKA〉とのコラボ曲で、ダンス・シーンを作りたいってことだったので、まずはドロップ部分から取り掛かって。それと、ぶっ飛んでいるというよりはまともなハッピーさのある楽曲にしたくて、ふわっと揺れることのできるBPMを意識しました。この曲はアルバム本編の最後の曲なんですけど、そういう立ち位置だとむしろ毒だなって思います。暗めだったり不思議だったりする曲がさんざん続いたあと、最後は平和的に跳ねて踊るって逆に不気味だなと。みんなには〈怖っ! 急にどうした!?〉って思ってほしいです(笑)」。
躁と鬱のバランス
さらに、gu^2との“先制の剣”ではコケティッシュなドリルンベースを披露。Iimoriとのアップ“Freedom Kingdom”では韓国からSwervyを迎え、スタイリッシュな掛け合いを見せている。
「“先制の剣”は、“BOUNCE DANCE”とは対照的にぶっ飛んでハッピーな曲を作りたくて。アルバムの制作期間、もう締め切りが過ぎてる状況なのにゲームしてたんですよ、ダラダラと。なので、これはリアルに自分を鼓舞するための曲っていう(笑)。直前までやってたのが『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』で、〈マスターソード〉とか〈先制の剣〉っていうワードはそこからですね。Swervyは彼女のヴィジュアルが好きでInstagramを見てて、そこから楽曲を聴いてみたらめちゃめちゃラップが上手くて。それで今回オファーしました。トラックは90年代のゴアトランスをリクエストして。Swervyもクールに乗ってくれたので、かなりお気に入りの曲になりました。リリックに関しては、当時は音楽をやることを反対されたりとか、身近なところから支配されている感覚が強かったので、そこからの解放っていうテーマで書きたいなと。私の中で、これは意気がってる曲。強い気持ちを持つための曲ですね」。
そうした共作曲がある一方で、重厚なスケール感で迫る“paranoia”、言葉とサウンドが裏腹なダンス・ポップ“傍観者”と、自身のみのクレジット曲もまた個性的だ。
「ダブステップを作ろうってずっと思ってたんですけど、ある日の夜、寝てたら曲を作っている夢を見たんです。それを現実にしたくて、起きてすぐ作ったのが“paranoia”。ライヴを意識した楽曲で、音に包まれている感覚を表現したかったっていうのもありますね。トラックもだいぶ立体感のある仕上がりになったと思います。“傍観者”は〈ハウスっぽいノリの曲も欲しいな〉って軽い気持ちで作ったトラックが先にあったんですけど、メロディーとリリックは〈ああもう嫌だ〉ってなってる鬱状態の時に出来たので、言ってることは暗いのにトラックはめっちゃ躁状態で明るい(笑)。そういうバランス感も私の強みかなって思います」。
現実に向き合う瞬間
アブストラクトな音像が幻想的に揺らぐ“sweet dream”を経て、仮想現実を巡る旅は“BOUNCE DANCE”で大団円……かと思いきや、その先には真の終曲が。ピアノの弾き語りによる“SUCK MY LIFE3”がもたらす結末は、何とも4s4kiらしいものだ。
「“BOUNCE DANCE”で本編は終わりで、その後にくる“SUCK MY LIFE3”はエンドロールってイメージなんです。“電脳郷”から一人称視点の主人公がいて、仮想空間にのめり込んで現実に近いことをいろいろ経験して、最後は“BOUNCE DANCE”で楽しく踊って終わるんですけど、魂だけ仮想空間に行ってる状態で、肉体はその間どうなってるかを考えたとき、私の中ではもう何百年と経過している設定なんですよね。なので、肉体はもう死んでいる。“SUCK MY LIFE3”は仮想空間を現実だと思って楽しんだ人の末路というか……これは自分への戒めでもあるんですけど、仮想空間へ逃げることを良しとしつつ、現実に向き合わなきゃいけない瞬間は必ずある。そこはちゃんと認識しておいてねっていう意味で、バッドなエンドロールにしたんですよね。主人公は仮想空間に行ったまま、死んでることにも気付かないまま死んだんですよ、きっと。だから、本編までは主人公の一人称視点だったものが、最後の曲では、例えばそれが映画だとしたら、スクリーンの前の観客たちから見たような視点に切り替わっている。たぶん、それは私しかわからないストーリーなんですけど(笑)、少なくとも、このアルバムでは仮想現実を完全には肯定していない。それを認識してもらうためにこの隠しトラック的な仕掛けがあるんです」。
期せずしてコンセプチュアルな物語性を備えた『Killer in Neverland』。極彩色ながらセンシティヴな楽曲たちを操る才能は、すでに未来を見据えている。
「アルバムが出来ると毎回、最新作がいちばんかっこいいなって思うんです。なので、現段階ではこの『Killer in Neverland』が自分のなかで最高のアルバムです(笑)。たぶん、次のアルバムが出来たらそっちがいちばんかっこいいってなると思いますけど、そうやって常にスキルアップしていきたい。その成長過程を見ていてほしいです」。
4s4kiの作品を一部紹介。
左から、2020年作『超怒猫仔/Hyper Angry Cat』(SAD15mg)、2021年作『Castle in Madness』(スピードスター)
参加クリエイターの関連作品を紹介。
左から、maeshima soshiが参加したAile The Shotaの2022年作『IMA』(ユニバーサル)、ももいろクローバーZの2022年作『祝典』(EVIL LINE)、gu^2が手掛けた電音部(帝音国際学院)の2022年作『電音部 SHIBUYA New Year REMIX』(ASOBINOTES)、gu^2とMasayoshi Iimoriの楽曲を収めた『TREKKIE TRAX ALL TIME BEST 2012-2021』、Masayoshi Iimoriの2020年作『DECADE4ALL』(共にTREKKIE TRAX)、Masayoshi Iimoriが楽曲提供した2021年のサントラ『beatmania IIDX 28 BISTROVER Original Soundtrack』(コナミデジタルエンタテインメント)
