シンガー・ソングライター/ビートメイカー/プロデューサー/DJなど、いくつもの顔を持つG.RINA。彼女にとって実に5年ぶりのカムバック作となった前アルバム『Lotta Love』は、ルーツである80sファンク/ブギーのエッセンスと持ち前のポップセンスが融合した、まぎれもない傑作だった。それから1年3か月、今回新たに届けられたのが、さらにカラフルに進化した新作『LIVE & LEARN』だ。ゲストには鎮座DOPENESS、yoshiro(underslowjams)、田我流、Kick A Showといった個性派たちが並ぶなか、甘酸っぱいディスコ・ポップ曲“All Around The World”では、ほぼ同タイミングで新作『PINK』をリリースした土岐麻子をフィーチャー。G.RINAはこれまでに土岐作品でたびたび作詞・作曲を手掛け、『PINK』でも2曲の作曲を担当しているが、G.RINA作品に土岐がフィーチャーされたのは今回が初めてのこと。同い年であり、お互いを〈同志〉と認め合うG.RINAと土岐麻子。今回は、2人の歌世界の背景にあるものを探る特別対談をお届けしよう。
オマージュに留まらずいまの時代の感覚で昇華したサウンド
――お2人の初めてのコラボレーションは、土岐さんの2007年作『Talkin’』に収録された“WALK ON”(G.RINAが作詞を担当)ですよね?
土岐麻子「そうですね。それ以前は交流がなかったんですけど、前からRINAちゃんの歌は聴いていて、歌いたくなる言葉だなと思っていました。当時は自分の作詞スタイルを模索していた時期で、必ずしも自分で作詞しなくてもいいと思っていたんですね。それよりも、自分が歌いたい言葉を歌おうと。それでRINAちゃんに声をかけたんです」
G.RINA「依頼の話をいただいたとき、過去の自分の作品の歌詞のなかに〈駒沢通り〉という言葉が出てくるんですけど、そこに反応してくれたのが嬉しかったのを憶えています(笑)」
土岐「とはいえ駒沢通りのことは全然詳しくないんですけど(笑)、私なりの駒沢通りが浮かんできたんですよ。小さい頃、ユーミンの“中央フリーウェイ”を聴いて、自分なりの東京の風景が浮かんできたのと同じ感覚だったんです」
――RINAさんは土岐さんの“熱砂の女”(2010年作『乱反射ガール』収録)で作曲もされていますね。
土岐「RINAちゃんの音楽ってすごく女性的だと思うんですよ。女性として歌いたくなる歌というか、聴いていると自分が女性であることにワクワクしてくるんです。それまでは男性の作家と組むことがほとんどだったんですけど、『乱反射ガール』のタイミングでRINAちゃんとやってみようと」
G.RINA「嬉しかったですね。土岐さんのことは歌手としてすごく尊敬しているので、そんな方の曲を書けるということは自分にとってすごく励みになったんです」

――RINAさんは土岐さんの歌についてどう思われますか?
G.RINA「とにかく声が魅力的で、こういう人のことを〈シンガー〉と言うんだなと思いますね。〈シンガーになるために生まれてきた女〉という感じがする(笑)」
土岐「そ、そうですか(笑)?」
G.RINA「私の場合は、(曲を)作っている時間がいちばんワクワクするんです。もちろん、ステージでお客さんとコミュニケーションを取る時間もとても大事なんですが、緊張も大きくて……」
土岐「私も作詞はしますけど、どうも好きな曲を作れないんです。いままで作曲をしたこともあるし、何曲かはリリースもしたけど、自分の中から出てくるものが歌いたいものと一致しているかというと、必ずしもそうでもなくて。作曲についてRINAちゃんからいろいろ習いたい(笑)」
――そういえば、お2人は同い年なんですよね?
土岐「そうなんですよ。同世代だなあと強く意識することはないけど、同時代を同じ感覚で生きている人という感覚はありますよね、やっぱり。〈心の友〉感というか(笑)」
――音楽的なルーツも比較的近い感じがするんですが。
G.RINA「〈回り回って近い〉という感じはしますけどね。私はもともとブラック・ミュージックが好きで、レアグルーヴのレコードを掘っていくなかで改めて山下達郎さん周りの音楽に辿り着いた感じですけど、土岐さんはそれこそ生まれたときからシティー・ポップが身近にあったと思うんですよ」
土岐「そうですね。家の中ではシティー・ポップと同様にブラック・ミュージックのレコードもかかっていたので、ソウルなども耳にはしていたんですけど、青春時代にそういうものを意識的に聴いていたかというと、そんなこともなくて。R&Bも後になってから好きになったんです」
――RINAさんとはまったく逆のルートですね。
土岐「そうなんですよ。ヒップホップも全然聴いてなくて。それが『Bittersweet』(2015年)という前のアルバムを作り終わった後、急激に92年、93年ぐらいのヒップホップを聴きたくなったんです。そういう気分は巡っていくじゃないですか? それが時代に則したものなのか、個人的なものかわからないんですけど」
――どういうアーティストを聴いてたんですか?
土岐「えっと……ノーティ・バイ・ネイチャーとか(笑)。当時は全然引っ掛からなかったんですけど、急にいいなと思うようになったんです。あとはブラザーフッド・クリードのベースの音が単純に格好良いなと思ったり」
――RINAさん、そのあたりは……。
G.RINA「リアルタイムですね(笑)」
――シティー・ポップの話で言えば、土岐さんはシティー・ポップと向き合うときでも、当時のスタイルのままやるのではなく、あくまでも現代のものとして表現してきましたよね。
土岐「オマージュとしてやってしまうと、シティー・ポップをレトロ・ミュージックとして過去に葬り去ってしまうような感じがするんですよ。確かにシティー・ポップにはサウンド的にも歌唱面でもすごく影響を受けているし、そうした自分のルーツが作品の中で出てくるのはとても誇らしいことだと思うんです。でも、シティー・ポップをあくまでいまの時代と結び付けたものとして出したいんです。そもそもシティー・ポップはサウンドのジャンルじゃなくて、いまの時代を切り取って異世界へと連れて行ってくれるものだと思うんですね。私はそういうことをやりたくてずっと音楽をやってきたんです」
G.RINA「私もディスコやファンクのようなブラック・ミュージックをやるにしても、いまの音像でやることが大事だと思っています。ヒップホップを通過した現代の、なおかつ日本人の感覚としてどうやって表現していくか。方法は違えど、土岐さんと試行錯誤している気持ちは一緒なのかなと感じました。シティー・ポップはジャンルとして語られがちですけど、当時シティー・ポップと呼ばれる音楽をやっていた方々は実はすごく反骨心があった人たちだったり。そんなアーティストを尊敬するからこそ、アティテュードというか、オマージュで終わらせたくないっていう熱い気持ちですよね」
土岐「90年代生まれの人たちがサウンド的にシティー・ポップをオマージュするのはすごくおもしろいと思うし、あるべき音楽のサイクルだとは思うんですよ。ただ、私なりのリスペクトを表現したら、こういう形になったということなんですよね」

厳しい音楽業界で活動してきた同い年の女性として〈同志〉という想いがある
――そしてRINAさんの新作『LIVE&LEARN』ですが、土岐さんは全部聴かれました?
土岐「はい、聴きました。音の選び方ひとつひとつなど細かいところに至るまで、本当に最高だと思いました。すごく新鮮に感じるし、聴いているとワクワクしてくるんですよね。挑戦的な音楽だとも思ったし、インスピレーションに満ちている作品だと思いました」
G.RINA「……ありがとうございます(笑)」
――今回のアルバムでRINAさんがやろうとしたものとは、どういうことだったのでしょうか。
G.RINA「前作の延長線上ではあるんですけど、少しプロデューサー的な視点から全体の世界を構築してみたいと思ったんです。そのためには自分が歌わない曲があってもいいだろうと。音楽面でいえば、自分が影響を受けてきたような、ちょっと温度が低めだけど胸がきゅっとなるようなシンセ・ファンク。そしてディスコとヒップホップの共存をめざしました」
――“All Around The World”では土岐さんがフィーチャーされているわけですが、この曲で土岐さんを迎えようと思った理由は?
G.RINA「今回のアルバムでは、どなたか女性ヴォーカルの曲をやりたかったんですね。だったら大好きなヴォーカリストであり、所縁もある土岐さんにやっていただきたいなと思って」
土岐「声をかけてもらえて、すごく嬉しかったですね。ヴォーカリストとしてのRINAちゃんも大好きなんですよ。私にはない節を持っているし、声もすごく好きなんです。絶対に真似のできない声というか」
G.RINA「またそんな……」
土岐「だから、本当に私が歌っていいの?というのもあったんですけど(笑)、以前から〈100パーセントG.RINAの世界に入ってみたい〉という想いもあったので、私としても夢が叶って嬉しかったですね」
――今回は曲・歌詞・アレンジすべてがRINAさんですもんね。土岐さんにオファーした段階で、曲はある程度出来ていたんですか?
G.RINA「いや、お会いしてから書こうと思っていたので、何も出来ていなかったんですよ。一度お話して、その日のうちにある程度の原型が出来ました」
土岐「えっ、あの日のうちに? 早いね(笑)」
――お2人で会ったときには具体的な曲のイメージも話し合ったんですか。
G.RINA「お会いしていない時期も長かったので、その間の出来事であるとか、日々の生活の話であるとか」
土岐「あと、さっき出たシティー・ポップのアティテュードの話もしましたね。自分のルーツとなる音楽に対して、リスペクトを持って向き合うとはどういうことか?とか」
G.RINA「熱く話しましたね(笑)。具体的な曲の構想よりも、お互いの気持ちの確認というか。そうだ、歌詞についてはお会いしたときに感じたインスピレーションが元になってるんですよ」
――どういうインスピレーションだったんですか?
G.RINA「そもそも土岐さんの歌詞はすごく好きなんです。ちょっと自虐的なところがあって、見た目とのギャップというか、それもまた魅力だなぁと思っていて」
土岐「そうだったんだ(笑)。嬉しいですね。確かにRINAちゃんが言うように、こういう〈100パーセント幸せです!〉という歌詞はどうも書けなくて、どこか不完全な人が主人公となる歌詞が多いんですよ。自分自身、不完全な人間であるという意識が強いこともあって。一聴するとすごく幸せそうな曲であっても、深い谷底から見る幸せを描いていたりして(笑)」
――谷底(笑)。
土岐「だから、こういう一面見晴らしのいい景色って、自分で歌っていてすごく新鮮に感じました」

――土岐さんの新作『PINK』にも、RINAさんの曲が2曲入ってますよね。RINAさんの曲以外はすべてトオミヨウさんの作曲ですが、今回RINAさんに声をかけた理由は?
土岐「今回のアルバムはトオミヨウさんのプロデュース作品ではあるけど、トオミさんの曲とは違ったカラーの曲があってもいいかなと思ったんですね。そんなときに“All Around The World”の仮レコーディングをしていたので、RINAちゃんともっとやりたくなったんです」
G.RINA「アルバムを作っていた時期がちょうど同じぐらいだったんですよ」
土岐「あと、“All Around The World”を作る前にいろいろ話していたとき、さっき話したようにすごく共感し合える感覚があったんですね。それこそ同志というか……ようやく自分のルーツに対する向き合い方に関する話をわかってくれる人と会えた!という」
――『PINK』に収録された“脂肪”にもそのあたりの感覚が出ているような感じがしますね。お2人ならではのシティー・ポップ感が出ているというか。
土岐「この曲の歌詞は『Bittersweet』のときにすでにあったんですよ。自分としてはすごく気に入っていたんですけど、スタッフや作曲陣からスルーされていて(笑)。でも、ひょっとしたらRINAちゃんだったらわかってくれるかも!と思ってお願いしました」
――もう1曲の“Fried Noodles”はいかがですか。
G.RINA「これは自分でやろうと思っていた曲なんですけど、ひょっとしたら土岐さんに合うかも?と思って提案してみたんです」
土岐「最初、RINAちゃんの歌詞が入っていたんですよ。それがすごく良かったんですけど、その時点ですでに〈全曲、土岐麻子による作詞〉という文字情報をメディアに出してしまっていたので、自分で書くことにしました(笑)。失恋したての女の子が傷心旅行で海外に行くんだけど、後から思い返すと笑えてくるような、そういう旅のイメージで書きました。仕事で行ったシンガポールがすごくおもしろくて、その要素も入ってますね」
――歌の節回しも少しラップ的で、まさにRINAさんの曲という感じがしました。
土岐「新鮮でした。トオミさんからはこういう曲は出てこないと思うので、はっきりとカラーが違っていて良かったなと」
――さっき92年、93年のヒップホップにハマっていたという話がありましたけど、その話と繋がる感覚がありますよね。
土岐「そうかもしれないですね。確かに〈軽さ〉という意味では通じるものはあるかも。遊び心のあるものをやりやかったんです」
――こうしてお2人のニュー・アルバムが出揃って、コラボ曲が3曲並んだわけですが、今後の共演についてはいかがですか?
土岐「タイミングがあったらぜひやりたいです。厳しい音楽業界のなかで活動してきた同い年の女性として、RINAちゃんに対しては同志という想いもあるし、今後活動していくうえでの重要なパートナーの一人だと思っていますね」
G.RINA「土岐さんはアーティストとして、大人の女性として進み続ける姿を見せてくれている心強い存在というか。もちろん同志という想いもありますし、作品を一緒に作ることでもすごく励まされていますね」
土岐「それは私も一緒。RINAちゃんのアルバムを聴いていると、やる気が出てくるんですよ」
G.RINA「嬉しいですね」
G.RINA & Midnight Sun〈LIVE & LEARN リリースワンマンショウ〉
3月2日(木)東京・渋谷WWW
19:00開場 20:00開演
料金:前売 3,300円(1ドリンク別)
ゲストは近日発表
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TOKI ASAKO LIVE TOUR 2017 “POP UP PINK!”
4月14日(金)仙台・darwin
4月19日(水)新潟・ジョイア・ミーア
4月22日(土)東京・EX THEATER ROPPONGI
4月28日(金)広島CLUB QUATTRO
4月29日(土・祝)福岡・Gate's7
5月7日(日)大阪・梅田CLUB QUATTRO
5月8日(月)名古屋CLUB QUATTRO
5月16日(火)札幌cube garden
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